(03)ない袖は世知辛い


 海上都市が欲しい。

 海を冷やしたい。

 などと高説をホザイタところで、金がなきゃ実現しない。

 金が全ての資本主義、世知辛い。


 大企業サマが出資して下されば有り難いが、施設として黒字経営でなければ存続は難しい。せっかくの海上という新天地、活用していきたい。

 まずは、やっぱ漁業ですかね。水深20mくらいの人工浅瀬をつくって海藻や珊瑚を栽培してみたり、腐葉土と鉄鋼スラブで栄養を撒きつつ海中牧場を目指してみたり。

 定置網も好きなんですよ。外洋に設置できるのかなぁ?

 浜辺を作ってリゾートを整備してみたり。

 完全妄想だけど、豪華客船の洋上寄港地ナンカに成れればいいな。まぁ客船に限らず、洋上船の補給中継港、もしくは天候悪化時に避難できる港、陸地に近ければハブ港とかにも憧れる。


 都市部では何させるべきか。

 日本らしい工業は、資材の受け取りが容易という観点では発展する要素も強いが、廃棄物の処理や汚染を考えると、システムとインフラの整備をかなり考えないと。

 そも、ある程度の人数が暮らし、自給自足を目指すなら、やはり農業。

 清水建設株式会社が構想している「環境アイランドGreenFloat」では植物工場と平地部での酪農を考えているらしい。

 しかし、熱帯地域の安定した海を想定した「GreenFloat」と、千早丸の目指す日本近海の海上都市では条件が異なる。浮島周辺の海を冷やしたり日本へ行きつく前の首水蒸気を雨として落とそうとか考えているから、長期的な天候不順が考えられる。つまり農業も酪農も屋内を想定せねばならず、ここで大問題が発生する。

 酪農はともかく、農業で屋内タイプの植物工場では、葉物野菜しか生産実績がない。

 日本人の主食は米、穀物。そして味噌醤油の大豆、豆類も。それに大根やゴボウなどの根菜類も恋しくなる。

 穀類、豆類、根菜類。これらを植物工場で生産した実績は(世界でも)ほとんど無い。

 大問題である。


 まぁ後回すとして(←無責任)


 次に問題となるのは、やっぱ発電。

 現代社会は電気がないと何事も動かない。

 発電方法は幾つかあるが、海上都市の方針として「発電の為の物資を外部に頼らない」と「都市より廃棄されるのは浄水以外にない」という目的がある。

 それを踏まえ、ゴミ(廃棄物)を「水プラズマ」で処理したい。

 プラズマ……の説明メンドイのでググってもらうとして、簡単にいえば雷のこと。

 工業的には放電加工とか、ガスを媒体に局地的な雷で製品を加工するなど、それほど奇抜な技術ではない。

「水プラズマ」とは、媒体にガスではなく水を使う。

 九州大学の大学院工学研究院・化学工学部門、渡邉隆行教授の研究で、共同開発研究機関として株式会社Helixというのもある。

 ものすごく大雑把にいうと「水プラズマで廃棄物を処理」というのは、よくある「ゴミの焼却」ではなく「ゴミの(電子分解による)消失」というもの。処理に二酸化炭素は発生せず、媒体に水を使う副産物として水素が発生するので、これをつかって燃料電池(できれば個体酸化物形燃料電池(SOFC))で発電したい。

 あと洋上ですから、できれば波力発電したいですねぇ。

 個人的オススメはイギリスの波力発電装置「Pelamis」。日本もいくつかで研究開発してますが、まだ研究段階で実践的ではない。

 日本、海に囲まれた島国のくせに、波力発電の後進国です。ちと残念。

 他にも熊本大学が開発したKUMADAIマグネシウム合金使っての発電とか、ともかく現地調達できる物資で発電する方法は幾つかある。

 ここら辺も、細かい話は後回しで(←居直った)


 儲ける手段。漁業、農業、発電手段は現地調達。

 ただし、製品を加工するのはともかく、輸送はどうするか。

 船舶? いや、迅速に大量の物資を運べるこれからの輸送方法の主流は、垂直離着陸できる航空機、分類としてはティルトローター機。分かり易い例としては米軍のV-22、通称「オスプレイ」が有名。

 ヘリコプターと輸送機を合わせたような航空機で、同系タイプは各国が出し始めているし、AIの自動操縦の補助が発達すれば飛躍的に普及すると思う。

 この辺の日本の食いつき悪いよなぁ。ホンダあたりが開発始めてるといいけど。

 ともかく。

 国内・近海なら、長距離の滑走路を必要とせず、船舶より大量の物資を早く輸送し、将来的にはオール電化できる可能性もある。



 漁業、農業(酪農)、発電、そして輸送。

 これらの問題をクリアできれば、海上都市の夢は前進する。

 方法も、解決法もいくつかある。


 しかし、実践実績がない。


 実験・検証するための資金は……ない袖である。

 世知辛い。




[備考]


九大 化学工学部門 渡辺研究室(水プラズマ・その他)

http://www.chem-eng.kyushu-u.ac.jp/lab5/


株式会社Helix(九州大学との共同開発研究機関)

水プラズマによる廃棄物処理と、発生する水素での発電

https://www.helix-pls.com




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