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結局、おばあちゃんは戻ってこなかったんだにゃー。
あの変な日のあと、知らない人が来ることはあっても、おばあちゃんは全然見かけないんだにゃー。
よそに行ってしまったのかにゃー? どうしてネコもいっしょに連れてってくれないにゃー。ちゃんとネズミを獲らないのがいけなかったのかにゃー? でもおばあちゃんちはあんまりネズミはいないにゃー。それに餌も毎日食べられるから獲る必要なかったにゃー。
ネコはおばあちゃんとこの猫にゃー。ネコを置いていくのは合点がいかないにゃー。
とにもかくにも、おばあちゃんはいないし家の中にも入れないから外で暮らすしかないにゃー。
暖かい季節ならいざしらず、こうも寒いと餌が獲れないんだにゃー。
風の噂によれば、街に行けばいろいろと餌にありつけるらしいにゃー。けど、こんな田んぼや畑が普通にあるようなところでは厳しいにゃー。
雀や鳩なら寒くてもいるから狙い目にゃー。同じ鳥でもカラスやトンビは逆にこちらがやられるおそれがあるから気をつけるにゃー。
餌を見つけるには足で稼ぐしかないにゃー。待ち伏せ型のハンターとはいえ、いろんな場所へ移動しないといけないのは犬と同じにゃー。餌取りは大変なんだにゃー。
おや? ほかの猫がいるにゃー。
これからはこの辺りで共存することになるにゃー。しっかりあいさつをしておくにゃー。
「こんにちはだにゃー。ネコは先日、室内飼い落ちしてきたんだにゃー」
「あぁん?」
「野良暮らしは不慣れだからよろしくお願いするにゃー」
「なんだ、おまえ。ここはオレの縄張りだ。出ていけ」
「怒らないでほしいにゃー。ネコはあいさつをしてるだけにゃー」
「出てけと言ってるのが聞こえないのか」
「どうして怒ってるにゃー。ネコはいたずらしないにゃー。仲よくしてほしいんだにゃー」
「言ってもわからないようだな……」
「やめてにゃー。そんな怖い顔するとネコは怖いんだにゃー。ネコの尻尾も『怖いにゃー』って隠れてるにゃー」
「やかましい!」
「にゃあーっ!!」
怖い顔した猫は怖い声でネコに向かってきたにゃ。ネコはびっくりして逃げたにゃ。怖い猫は追いかけてくるにゃ。怖いにゃ〜〜!
はあはあ、にゃ〜。
いっぱい走ったにゃ〜。
ネコは室内飼いだから普段走ってないにゃー。すごく疲れたんだにゃー。
あの怖い猫はなんで怒ったにゃー? ネコはなにもしてないんだにゃー。きちんとあいさつしてまわろうとしたんだにゃー。怒られるいわれはないんだにゃー。
ところでここはどこにゃー。でたらめに走ってきたからどこにいるのかわからなくなったにゃー。
どの家も道も畑も見慣れないにゃー。おばあちゃんの家はどこにゃー。これでは帰れないにゃー。
あっ。あそこに別の猫がいるにゃー。道を尋ねてみるにゃー。
「すみませんにゃー。少しお尋ねしたいんだにゃー」
「なに、あんた?」
「ネコはおばあちゃんの家を探してるんだにゃー」
「だから?」
「2階建ての青い屋根のうちにゃー。ネコたち猫でもわかりやすい色にゃー」
「で?」
「知ってたら教えてほしいにゃー。知らないかにゃー」
「あんたこそ知らないの?」
「にゃ?」
「ここ、あたしの縄張りなんだけど?」
「にゃー、ネコは
「ごちゃごちゃ言ってる
「にゃ、にゃ〜……、あの……だから、おばあちゃんの家を……知ってー……」
「いつまでふざけてんのよっ!」
「にゃっ、にゃあ〜〜っ!?」
道を聞いた猫は急に怒りだしてネコに襲いかかってきたにゃ。ネコはあわてふためいて逃げだしたにゃ。怖い声が怖いにゃあ〜!
はあはあはあ、にゃ〜。
また怖い猫に追いかけられたにゃ〜。なにも悪いことをしてないのにどうして怒られるにゃー。
ネコはケンカをしたことがないにゃー。ネコは平和主義者なんだにゃー。ケンカは怖いにゃー。猫社会がこうも理不尽きわまりないディストピアとは聞いてないにゃー。
にゃー、ますます知らない土地に来てしまったにゃー。同じ町内のような気もするけれど、ネコは右も左もわからない異邦人なんだにゃー。
これはもう、異郷の地で新たなる
思いたったが吉日にゃー。第二の安住の地を探してまわるにゃー。図らずも出てしまった放浪の旅は波乱万丈なんだにゃー。
そんなこんなでほっつき歩いてたら、早くも玄関のあいてる家を発見したんだにゃー。これはきっと猫の神様のおぼしめしなんだにゃー。
ごめんくださいにゃー。今日からよろしくお願いしますにゃ〜。
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猫にほだされる短編集 みさわみかさ @primenumber
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