第146話 帰ってきた魔女
教室に入るといつも以上に賑やかだった。
「ルル様、お体の方は大丈夫でしたか?」
「もうこの通りピンピンしてるよ! 何せ端からケガらしいケガなんてしてないんだから。ちょっと腕を擦ったくらいなのに周りが大げさでさ」
「いいえ。痛みというのは後から来るものです。大事をとって正解でしたよルル様」
「それもう何人も言われたよ。でもありがとう。おかげでまたここに戻って来れた」
どうやらルル様が無事に退院されたみたいだ。
人だかりの中から聞こえてくる話しを聞く限りエスティさんが以前言っていたようにルル様は大したケガではなかったみたいだ。 (それにしても皆さん、ルル様に良い印象を持ってもらうために大げさなまでに心配してるけど…いかんいかん。クラスメイトをこんなうがった見方しちゃぁ!)
「お! サントロスじゃん! 元気してた!」
するとクラスメイト達の間から僕の姿が見えたらしく、「ごめん。話はまた後でね」と少し強引に話を切り上げてはクラスメイト達をかき分けながらルル様が僕らのもとにやってきてくれた。
【お久しぶりです魔女さん。もうお体の方は大丈夫なんですか?】
「こりゃこりゃ今の会話を聞いていなかったのかね? この通り私はピンピンしてるんだってば! そちらのオトモさんのおかげでね!」
そう言うとルル様は制服のスカートを指でつまみ上げてカーテシーのポーズをとって深々とルリィさんに対してお辞儀をしてみせた。
突然のことに動揺するルリィさん。それはクラスメイト達も同様で一体何が起きているんだとばかりに視線が集まる。
けれどそんなみんなの視線などまったく気にしないとばかりにルル様はなおもお辞儀をしたまま言葉をつづけた。
「オト…いえ、ルリィさん」
「は、はい!」
改めてルル様に名指しされ、一気に背筋を伸ばして声を裏返しながらも返事をしたルリィさん。
「あなたも私の命の恩人です。自分の身をかえりみず、私のために危険を冒して私のことを守ってくれたあなた…いえ、あなたたちには本当に感謝しております。こんな時ばかりで申し訳ないですが”クラスメイトのルル”ではなく”ラマリカスの王女のルルカーシェ”として感謝いたします。本当にありがとうございました」
【あー! やめてくださいルル様!】
「そうです! 私なんかのために頭を下げるなど!」
僕ら二人の本気の抗議を聞き入れ、ルル様はようやく顔をあげてくれた、と思われたのだが、ルル様は顔をあげるなりお淑やかな姫様スマイルを浮かべながら…、
「それで今度休日、お礼がてらお二人の家に遊びに行こうと思うのだけどどうかしら?」
【………へ?】
そんなルル様の提案に僕やルリィさんのみならず、クラス中の人々の目が一瞬にして点となってしまった。
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