第131話 び、美少女コンテスト⁉


「あ~おいしかった!」


 カフェ、カフェ、串焼き屋の3軒連続飲食店巡り。

 これでは僕の思い描いていた女学院の『学院祭』というイメージが『食い倒れ』という何だか別のチープなものへと塗り替えれていく気がした…。(僕の憧れを返して…)


「さーて次はどこの飲食店に行こうかみんな?」

【また食べ物屋行くんですか? 食べ物以外にも似顔絵書いてくれたり、楽器演奏が聴けたりとか色々とやってるみたいですし、そろそろそういった方面の出し物も攻めてみませんか?】


 僕はルル様へ必死の思いで提言するとそれに激しく同意するようにルリィさんとエスティさんが首を何度も縦に振った。(ただソニアちゃんとアイちゃんはまんざらではなさそうだったけど…)


「チャコの言う通りですわ。そんなに食べてばかりいては着れていたドレスが着られなくなり、恥ずかしい思いをすることになりますわよ」

「………は、はははは、もうエスティは大げさなんだから。はははは…」


 意気揚々と先頭を歩いていたルル様の足がピタリと止まり焦り笑いを浮かべる。

 どうやら本気で胃袋に行動を支配されてしまっていたようだ。


 そんなことを話していると、



   「あー! 皆さん! 探したッスよー!」



 後ろから声をかけられ、僕らが一斉に振り向くとそこには額に汗をにじませ、手には大量のチラシを抱えながらこちらに向かってくる一人の女生徒の姿が。


 もちろん近づく人物に警戒心を抱き、カレンさんは腰に下げていた剣に手を置いたが僕が慌ててその子に近づき、出迎えたことでカレンさんは添えた手を離してくれた。(ふ~)


【どうしたのさノルちゃん? そんなに慌てて】

「実は先輩方を探していまして。 わ~! 噂通り超絶きれいッスね、師匠!」

【せ・ん・ぱ・い。今ちゃんと言えてたじゃない】


 もうここまでくるともしかしてツッコんでもらいたくてわざとやっているんじゃないかとさえ思う。

 まぁそれはともかく、もう噂になるくらいに僕らの衣装が話題になっているのか…。(さすがセレーナさんの衣装)


【それで? 探してたって私たちを? 何で?】

「実はこの後、校庭の特設ステージで生徒会主催のイベントがあるんスけど…」


 そう言ってノルちゃんは自分の腕に付けていた腕章を見せる。そこにはアテラ語で『生徒会』と表記してあった。


 って、いやいや! そこは手に持っているチラシを見せてくれないと一体どんなイベントなのか伝わってこないよノルちゃん!(もうおっちょこちょいなんだからぁ)


「実は全然参加人数が足りていないんスよ! せっかく盛り上げようって頑張ってきたのにこのままじゃイベントは大失敗ッスぅ。生徒会の沽券にも関わってきますし、どうか先輩方にそのイベントに参加して頂き、イベントを盛り上げてもらいたいッス! この通りッス!」


 そう言って深々と頭を下げるノルちゃん。


「お! いいね! やろうやろう!」


 で、例にもなく猪突猛進の姫はなんの相談もなしに即決しちゃうし。


「ちょっとルル! 私たちもこれからお芝居がありますでしょ? 人様のイベント事に参加している暇なんてありませんわよ!」


 もう鉄板の域とも言えるエスティさんのツッコミも入る。


「大丈夫ッス! イベントはほんとこの後すぐですし時間も30分くらいで済むはず…いえ、必ず私が済ませてみせるッス! 絶対に先輩方の『サントロス』には影響を与えないように努めるッスから何卒、何卒!皆様方のお力をぉぉぉ~~~」


 今にも泣きそうな表情で僕にすがりつくノルちゃんの姿と熱意にほだされ僕はつい【まぁそういうことなら…】と口を滑らせてしまった。

 

 けど…それが間違いだった。


 だってまさかこの後、あんな事態に陥ることになるなんて思いも寄らなかったから。


「ほんとッスか⁉ 師匠ぉぉぉ~~~~!!! 一生ついて行くッスぅぅぅぅ!!!」



――――――――――


 で。


「えー、それではこれより生徒会主催の『第一回ファビーリャ女学院美少女コンテスト』を開催するッスーーーー!!!」


 そ、そんなバカな…。 (OTL)


 校庭に設営された舞台の舞台袖からでも感じられるおびただしい数の観客の熱気に当てられ、僕は膝から崩れ落ちた。

 まさか男の僕が美少女コンテストに参加する日が来ようとは…。(迂闊だった。せめてノルちゃんからちゃんとイベントの内容を聞いてから参加の有無を返事しておけば!)


「ではエントリーナンバー①番の方、ステージにどうぞッス!」


 そして僕の想いなどまるで路傍ろぼうの石のように気にもされないまま、いつになく張り切った様子の司会ノルちゃんによって最初の出場者を壇上へと招かれたのだった。



 

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