第10話 「リテラシー」の使われ方

このところ、リテラシーという言葉を聞く機会が増えた。「ITリテラシー」「情報リテラシー」「科学リテラシー」「金融リテラシー」あたりから始まり、少し変わったものだと「SNSリテラシー」「「医療リテラシー」「地図リテラシー」「防災リテラシー」なんて言葉も聞いたことがある。きちんとした意味がわからないまま広まったせいか、「(芸能グループの名前)リテラシー」という言葉まで見たことがある。どうも一部では、「〇〇に関する常識・マナー」というような意味で広まっているようだ。

ちなみに、「親子リテラシー講座」という言葉を見た時には「親子で受講する(おそらくITやSNSに関する)リテラシー講座」と理解し、「情報リテラシー講座」という言葉を見た時には「情報に関するリテラシーの講座」と理解するって、日本語の難しさを感じてみた。人によっては、「よりよい親子関係のために心がけなければいけないこと講座」みたいに捉える場合もあるんだろうか。


私の理解では、リテラシーは「マナー」とは置き換えられず、「に関する能力」とざっくりだけど置き換えられるものだ。

だから、マナーっぽい話で「手紙リテラシー」「茶道リテラシー」「就活リテラシー」みたいな使い方には違和感がある。

また、学問そのものの知識とも違うと思っている。「に関する理解力」と置き換えて基礎的知識というような使い方をしている場合もあるようだが、それよりももう少し応用力に近いイメージなので、「数学リテラシー」「国語リテラシー」というのも違うと思う。


リテラシーは「読み書き能力」と訳されることもある。読み書き計算と言われるような基本的な能力、というイメージはわかるが、言葉通りに捉えるとこれも伝わりにくい表現なのではないかと感じる。シンプルに日本語にするとしたら「活用力」としておいて、そのための知識を得る過程とか情報を取捨選択する部分とかを前提にする、という感じかなぁ。

そう置き換えてみると、「〇〇リテラシー」の形の中でも、そのまま「〇〇活用力」といけそうなものと「〇〇に関する情報活用力」としたくなるものがある。もしかすると、英語だとそのあたりも違う形に表現されるのだろうか。

いろいろ考えると、「情報リテラシー」という言葉と、それ以外の「リテラシー」は少し組み立ての違う言葉のような気がする。一番はじめの「リテラシー」は単に文字通りの「読み書き」のことを指していた。そこに、計算や計算機利用などの能力が加わった。新しい技術へ対応する上で必要な能力として、「コンピューターリテラシー」「メディアリテラシー」「情報リテラシー」という言葉が出てきた。さらに、さまざまな面で高度化する世の中を生き抜くために必要な物を、金融に関する基本的な知識とそれを活用する能力、という代わりに「金融リテラシー」などいうようになっているのだろう。そしてそれが、さらに矮小化されて使われ始めている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る