第9話 血液型と偏見とリテラシー
私は血液型と性格には、ある程度の関係があると思っている。
もちろん、血液型と性格が関係あるというのは思い込みで、「血液型ステレオタイプ」という名前がついていることや、血液型占いは日本くらいにしかなくて科学的根拠はない、なんてことは知っている。それでも、大きな声では言わないが、この血液型はこういう性格に育つ傾向がある、とか、この性格はこの血液型に多く見られる、とかそういうデータはあるんじゃないかと思っている。
血液型によって病気へのかかりやすさが異なる、という研究があるのを聞いたことがある。これは大きく捉えれば、人の人生に血液型が影響を与えている例だろう。これがもしも、A型は胃潰瘍になりやすくO型はなりにくい、という例だとして、A型は気にしやすく胃酸の分泌が多いがO型はおおらかで胃を痛めにくい、と言ったら、血液型と性格がつながることも今後あるんじゃないだろうか。
問題はたくさんある。
XとYが関係がありそうだとして、XがYにどのように影響しているのかを測るのは難しいことだろう。実はZという要素がXにもYにも影響を与えている疑似相関の関係ではないのか、とか、影響するのはXだけではないから、Xが寄与する割合がどれくらいなのか、とか、X1とX2からYが複数出てくるとして、Yのパターンはどれくらいはっきりと分離できるのか、とか。A型しか胃潰瘍にならない、とかであればわかりやすいけど、そういうわけではないだろうから。
でもきっと将来、すごく医学が発達した未来には、この遺伝子がこの病気の可能性を高める、この遺伝子にこういうパーツがあるとこの事実にこういう反応をしがちである、こういう行動や性格はこの遺伝子から当然なのでそれをカバーするようなこういう機器が必要である、なんてことがわかるようになるんじゃないだろうか。
もっというと、今発達障害と言われている事柄なんかも、同じ土俵の上で解決されるのではないかと期待している。血液型で済むのか、もう少し細かい遺伝子タイプみたいなものになるのか、もっともっと詳しい遺伝子検査になるのかわからないけれど、この要素がある人は脳のこういう反応が平均より大きいからこういう行動をとりがちですが、こういう方法でカバーできますよ、活用するにはこういう仕事が有利ですよ、とかってなったら、みんなが無理して「優等生」みたいなタイプを目指さなくていいわけだし。
私が血液型に基づく性格を信じるようになったのは、実は大学生になってからだ。どうしても苦手なタイプの人が、自分はある血液型でこの行動パターンは自分にとっては正義なのだ、ということを語っていた。私はそこで、むしろ楽になった。
自分にとって理解ができない行動をとる人の後ろに、そういう行動原理があると知れたら、腹が立たなくなったのだ。
その後に出会った人でも同じだった。すべての血液型のステレオタイプが当たっていると思っているわけではないのだが、ある血液型について、こういう考えをする人が多い傾向になる、と思っている。そして、それが自分の優先したい物事の進め方と異なることが多い。でも、その人たちの進め方が間違っているわけではないのだ。だから、あ、この人はこういうパターンなのね、ということがわかったら、戦わず譲ることにしている。結果、自分にとってもメリットがある。
これは血液型に関する「リテラシー」がないということなのだろうか。偏見を自覚し、物事を批判的に見た上で、知識を活用しているつもりはある。
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