ブラン家お茶会(混乱)


 「ヴィクトー、撹乱役頼むわよ。失敗しようものならヤスミンとカーラの…」

 「!分かりました‼︎アヤカ様!くうぅ…なんでカーラの事まで…」


 甘いわね、ボウヤ。


 「お行きなさい。ヴィクトー!」

 「イエス!マアム!」


 馬車のドアが開かれると、頬を上気させたエトワールが、小走りにこちらに向かって来るのが見えた。その後ろには何故だか両手を前に出してハグの形で固まっているサミュエル王子。


 エトワールが私を馬車から下ろしたばかりのヴィクトーに抱きついて、映画でよく見るチュッチュッってやつを両頬にする。さすがのヴィクトーもこの不意打ちに固まった!エトワールは続けて私にもハグをしてチュッチュッ!ふ〜ん、音だけだったのか。

 正式な返し方が分からないからこれ見よがしにギューっとすると、こっちを見ていたサミュエル王子の顔色が白くなる。


 ククク、精霊王(仮)現在お前さんが執着しているのはエトちゃんである事はお姉さんは分かっているのだ!


 「お招きありが…」

 「はじめまして!美しい人!」


 ………なんだ、コイツ?


 サミュエル王子を少しだけあどけなくした様な…って第二王子か。


 「こんにちは。」

 「あぁ、声まで美しい。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」


 うーんと考えて


 「彩花・白石よ。私遠くから来たので正式な挨拶がわからないから失礼したらごめんなさい。」


 その銀髪王子の目がふせられ、再び上げられるとキラキラの笑顔で聞き捨てのならない事を言った。


 「私のつがいの乙女!」



   ◆◆◆


 こちらお茶会となった現場です。ん?現場となったお茶会かしら?わたくし頭が混乱しています。


 「んんん、もう一度説明して貰えないだろうか?」

 「んもぅ。だから私は精霊王の生まれ変わりでこの、乙女の伴侶なんだ。」

 「私結婚してないわよ!つかしないわよ!」

 「??お前エリオットだよな?」

 「エリオット様は…」

 「黙れ、色魔男!私の乙女に近寄るな!」


 なんだか収集が付かなくなっております。こんな状況なのでサーラには席を外して貰いました。

 中庭にお茶会の用意をしていたのですが、混乱の状況ですので談話室に移動致しました。会場にはお父様とお母様、サーラがいると思います。


 「あ、あの…状況を整理しても宜しいかしら?」


 多分私がこの場で一番いろいろ知っているだろうと思われますのでおずおずと挙手してみます。


 「「「「「どうぞ。」」」」」


 …ハイ…


 「えっと…まず、アヤカは異世界から王家の管理する泉に現れた」

 「ええ。迷惑な話よ」

 「サミュエル様とヴィクトー様はその辺りはご存知なのですね?」

 「あ、ああ。」

 「はい。義父上ちちうえから学園内でのアヤカ嬢・のサ・ポ・ー・ト・をしろと!」


 これ見よがしに嬢とサポートに力を入れるヴィクトー様。そして、私に何か聞きたそうなサミュエル様を尻目に私は話を続けます。ううう…、ごめんなさい…


 「エリオット様は…精霊王ですのね?」

 「そうだよ、姉様。よく知ってるね」


 あぁ、って言う事は、作品名『花咲き乱れるあの幻の花園にいつの日か…


 「エトワール、駄々漏れてるわよ!」

 「あぁ申し訳ございません」

 「作品名は覚えて無いけど、アヤカの世界に渡った時に大きな人間に捕獲されて、最後の力でアヤカの世界で流行っているツールで記録を残したね。」


 それが、


 「それが、『花愛』…」

 「ちょ、エトワール…エトワール嬢、何言ってるのかよくわからないんだけど…」

 「エトワール嬢はいつからアヤカ嬢の話を知ってたんだ?」


 サミュエル様とヴィクトー様に言われて、わたくし、深呼吸して答えます…


 「…私、アヤカと同じ世界で生きていた転生者なのです。」

 「なるほど!だから私のつがいとどこか似たような感じがしたんだね!」

 「つがいじゃ無い…」

 「サミュエル様、エリオット様は精霊王の生まれ変わりです。陛下と宰相様とご相談ください。私は…必要であればいくらでもご説明に上がります。エリオット様、あなたは私達側なのでしょうか?」

 「…精霊王の記憶もあるけど、意識として強いのはエリオットだよ。」


 私は頷きます。


 「アヤカは精霊王が異世界から呼んだつがいの乙女と言われる者です。番の乙女を見つける事が出来なければいずれは…狂って世界を破滅に…」

 「破滅に導きたい気持ちになったりするけど…そんなことしないよ。私の番がどこに生まれ変わるか分からないから。」 


 なんだか不穏な事を聞いた気がしますが、とりあえず安心の様だと私は胸をなでおろしました。


 「ちょっと、僕だけ置いてけぼりなんだけどー‼︎」


 あ、マティアスは何も知らなかったですわ。

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