わたくしのお母様とわたくしの侍女とまたまた謎の人
「お母様、ちょっとよろしいでしょうか?」
「まぁ、なぁに?エトワール。」
今日はお母様にお茶会のお願いをするつもりです。お呼びするのが第一、第二王子様ですので、お母様にご相談しないわけにはまいりません。私としてはアヤカさ…アヤカだけ呼べたらいいのですけど…
!だめだわ!それは本末転倒!計画通りになりません。私、ちょっと浮かれています?
コ、コホン。
「お母様、ブラン家で私のお友達をお招きしてお茶会をしたいと思っているのですが…」
お母様のお顔に花が咲いたような笑顔が浮かびます。
「まぁ、まぁまぁ、エトワールがお友達をお招きしてお茶会だなんて、何で素敵なの。」
両手を胸の前で組んでお母様の瞳がなんだかキラキラしています。私、とても恥ずかしいのですが…
「それで…お友達と…サミュエル様と、マティアスもエリオット様をお誘いしたいと言うお話になりまして、私が思っていたより本格的なものをご用意しないといけないかしらと思うのですが、私、お母様がご存知の通りお茶会のホスト役をした事がありませんので…」
「まぁ、サミュエル殿下をお誘いするなんて…お友達も!まあ、大変だわ!お母様、張り切ってお手伝いしますわ!もちろん、エトワール、あなたもホスト役、頑張ってね。大丈夫。お母様のお茶会のお手伝いをしてくれる時と一緒よ。」
お母様の『お手伝い』は今後私が一人でお客様をお招きする時に、ホストとして振る舞えるようにと思って言って下さっているのだと思いますが…
私とサミュエル様は、このお茶会が元でお別れになる予定なのです。
婚約破棄された令嬢は婚期が遠のいてしまいます。でも…断罪されなければまだ親孝行が出来るので許してね?
なんだか胸がチクンとします…
「はい。よろしくお願いします。」
お母様にそれを気付かれ無いようににっこりと笑いかけると、それを見ていたサーラが口を尖らせて私にぎゅっと抱きつきます。
「お姉さま、マティアス兄さまだけズルい!」
大きな瞳を少し潤ませて、プンッと唇を尖らせた仕草が赤ちゃんみたいで可愛くて私はクスクス笑ってしまいます。
「もちろん、サーラも一緒よ。私のお友達にかわいいサーラを紹介したいもの。」
「まあまあ。うちのお姉さまは妹に甘いこと。サーラ、お客様の前でそんな赤ちゃんみたいな事をしてはダメよ。」
「はぁ〜い。お姉さまごめんなさい」
ニコッと笑って淑女の礼をする。サーラはやれば出来る子なんです。
「そうしたら、お客様はどれくらいお呼びするつもりなの?」
お母様と少しお話をしたのですが、マティアス様のお知り合いばかりと言っても王族をお招きするとなると中々用意が大変みたいです。
普段そんな事をしない私はそんな事も知らないと落ち込み気味です。
王太子妃教育は完璧と言われて調子に乗っていたのかもしれません…
◆◆◆
「お母様にお願いしてお茶会をしたいと思っているの。私、今まで準備からのお手伝いってしたことか無いから…アンナも私に色々教えてくれるかしら?」
「!はい!喜んでお手伝い致しますわ!それでエトワール様、どなたをお呼びになるおつもりなのですか?」
エトワール様が柔らかく笑う。あぁ、こんな穏やかなお顔をされるなんて…
「サミュエル様とエリオット様と、宰相様のご子息と…私のお友達。」
はにかんで『お友達』とおっしゃるエトワール様。
「お茶会の話はね、私のお友達が勧めてくれたの。」
…むむ?
「彼女は私より色々な事を知っていて、私の考えが足りない時も優しくアドバイスしてくださる方なのよ。」
…むむむ?
聖女を崇めるようにウットリ頬を染めてわたしのまだお会いした事の無い『お友達』の事を話すエトワール様。
「まぁ、恥ずかしがりなエトワール様の為に、お友達が王子様とのお茶会を勧めて下さったのですか?」
エトワール様が違和感を覚えないように慎重に、慎重に…
「ええ。私いつも誘われるばかりで自分で何かするなんて考えもつかなかったの。けれども、私がお誘いしても良いのよね。」
「エトワール様にきっかけを作って下さったんですね…」
それとも、お優しいエトワール様を騙して自分が王子様に近付きたいのか?
エトワールさまを蔑ろにする王子様がどうなろうと知ったこっちゃないですが。
培った侍女スキルを総動員して、最高の笑顔を作るけれど、気を抜いたら最恐の悪鬼の顔にでもなりそうですわ。
クソ王子は持っていかれても一向に構いませんが、エトワール様が悲しむような事だけは絶対に阻止したい!
あぁ、ジレンマです。
◆◆◆
またか。
かのひとはいつも覚えていない。
鳥に生まれても、狼に生まれても、人間に生まれても…
必ず会う。探す。探さなければ形が保てない。
…正気が…保てない…
なのに、またまっさらな魂になって生まれる…
ただひたすらに探すだけだ。探してかならず…
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