わたくしとわたくしの侍女とナゾの人
サミュエル様とアヤカ様を取り持つ…
力いっぱい返事をしてしまいましたが、思ったよりハードルが高い事に気付きました。
私、いずれ断罪されて婚約破棄されるのだからとどうしてもサミュエル様と会わないといけない時以外精一杯避けておりました。
何故って…もともと大好きな『花愛』のヒーローなのです。そばにいたら好きになってしまうに違いないじゃありませんか!
サミュエル様はノベルの記述通りの容姿で、月の雫のような銀髪に深い海の底のような…あぁ、プルシャンブルーってこんな色だったのですね…と…
だから私は極力会わずに済ませて来たのです。昨日の生徒会室以外で一番最近お会いしたのは確かサミュエル様のお誕生日のパーティー?それとも王妃教育で王宮に伺った時に廊下でお会いしたかしら?とにかく2ヶ月以上前です。年間行事で5回、学校行事で4回程?あら意外と接点がありますわ。
「ねぇ、アンナ、私がサミュエル様とお出かけしたのって…」
「7年前の観劇の時ですかね?」
「……そう」
やっぱりハードルが高そうですね。
「…私がサミュエル様とお会いしたいと言うのは失礼かしら?」
「!いえ、いえいえいえ‼︎全く‼︎」
「⁉︎ち、違いますわ!会いたいと言うのは会いたい訳じゃなく…」
「婚約者にそんな事を言わせる男が悪いのです!」
「そ、そう?いえ、違うのよ?よ、用事がありまして…」
なんだか私、とても会いたいみたい扱われています!おかしいわ…
「私のお友達…」
“お友達とサミュエル様の仲を取り持ちたいの!”
…ダメだわ。ダメダメなやつだわ…さすがの私でもそれくらい分かるわ。
“婚約者と自然に会う”事すら私には出来ないなんて…
あまりのポンコツさに愕然とする私なのです。
◆◆◆
最近わたしのエトワール様が『悪役令嬢』と言わなくなりました!
失礼しました。わたしはエトワール様の侍女をしておりますアンナと申します。
わたしの主人あるじはダメダメポンコツ令嬢なのですが、外面は完璧令嬢を演じております。
わたしがエトワール様付きの侍女になったのはエトワール様が第一王子のサミュエル様の婚約者になる前。
甘えん坊の子猫みたいな、クルクルとよく変わる表情のとてもお可愛らしい女の子でした。
たまに大人みたいな表情をされる時があり、心配したのですが、とても賢い方でしたので、そのような方は普通の子供とはどこか違うのだろうかとも思ったのです。
サミュエル様との婚約が決まった時、本来なら一流の侍女に変えられても仕方が無かったのに、エトワール様は『アンナをわたくしからはなす位ならわたくしサミュエル様とのおはなしを無かったことにしても構いません。』とおっしゃって下さいました。あれからわたしの優先はエトワール様になったのです。
ですが、サミュエル様の婚約者に決まってから、エトワール様の『悪役令嬢』への憧れが始まりました。幼いながらの王太子妃教育は完璧な一方、わたしの前ではひたすら『悪役令嬢』になる道を模索するという謎の行動…いづれ王太子妃になるというプレッシャーからの行動だったのかもしれません。
また、王子様の婚約者と望まれながら、全くフォローしようとしない王子様へのささやかな反抗だったのかも知れません。
そんなエトワール様が突然あの行ききった髪型を辞められると言われた時のわたしの喜び。ついでに王子の婚約者も辞めれたらいいのにと思いましたけど、エトワール様が望まれるのでしたら泣く泣くクッソ王子にでも渡すしかありません…
あぁ…ジレンマです…
◆◆◆
体に絡みつくような空気を振り
(…からだ?くうき?)
なんだそれは?
手を伸ばす。
(ああ、これを作らないと**に会えないのか…)
じゃあしかたがない
足を形作る。
体に、頭に、目、鼻、口、耳…
ちいさい…ここまでか…
「!っはぁ、はぁ、はぁ……」
夢か…あれは、なんだったのだろう…
何か、忘れている気がする…大事な、モノ?
体が泥のように重い。ズルリとベットから起き、端にそのまま座ると、ガシガシと両手で頭を掻き回す。
あたまが、いたい…
思い出せない。思い出す?何を?
イライラする。
何かが足りない。
探さないと。そうだ、探さないと。
勢いよくベッドから立ち上がる。
私は何を探していた?あれは…わたしか?
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