わたくしと結託したヒロイン

 「…と言うのが、私わたくしの知っている『花愛』の内容なんです」


 私とアヤカ様は昨日の中庭に来ています。今日は(私の人生で初めて)授業を抜け出して、作戦会議をしています。

 アヤカ様に知っている事を洗いざらい話すようにとちょっと怖いお顔で迫られましたが、知らないと今後の対策を立てる事ができないとご説明をされました。

 なるほどです!


 「ふ〜ん…そうねえ、あなたの知ってる物語と今とで随分な違いがあるわね。まず、ヒロインになっているって言う私はその小説の内容全く知らない。幼児は通報して直接話してないし、年齢も物語からは8…9歳ほど違うわ。」

 「つ、通報…」


 精霊王様、通報されて多分保護されたんですよね…

 改めて聞くとちょっとお気の毒に思ってしまうのは私だけでしょうか…?


 「サミュエル様は18歳ですから…大丈夫ですわ!姉さん女房は金の草鞋わらじですから!」

 「…あなた本当はいくつよ…」

 「わ、わたくし以前の生活の事は実はほとんど覚えていないのです。ですが、『花愛』だけはとっても好きだったみたいで、すっごく良く覚えています!発行部数…」

 「ま、そこはいいわ。原作(?)では『悪役令嬢』と『王子』と『ヒロイン』に年齢差はほぼないのよね⁉︎」


 …アヤカ様、クールです(涙)


 「…はい」

 「つまり既に原作とここまで違いが出てるのに原作を辿る必要があるのかしら?」

 「?」

 「いえ、原作通りにお話を進める事が出来るのかしら⁉︎原作から外れた行動をしているヒロイン、原作を知っている悪役令嬢…年齢の誤差もあるし」

 「はい…」

 「むしろ、あなたは悪役令嬢をやる必要があるのかしら?王子が記憶を取り戻すきっかけは?」


 きっかけ…きっかけ?きっかけ………


 「私が私の取り巻きとアヤカ様を罵倒していましたら、それを見かけたサミュエル様が胸を押さえて…『そのとき、サミュエルの頭の中に全ての事が思い出された。あの乙女はワタシが世界を渡り手に入れた乙女だと!』って…」

 「ノベルはそこまで覚えてるのになんで前世を覚えて無いんだか…どんだけ好きだったのよ…」

 「わたくしなんてまだまだですぅ」

 「誉めてないわよね。まぁ、王子が記憶を取り戻しさえすればあなたが悪役令嬢である必要はあるのかって話よ。普通なら理由のない婚約破棄は慰謝料ぶんどれる事案よ。この世界では知らないけど、少なくともベースが日本人の作者の常識なら理由なく心変わりした方が悪いと思うんだけど。」

 「で、ですが、様様ようような世界を渡ってやっと見つけた乙女が…」

 「それは精霊王の話。あなたは物語の登場人物?同じように行動しないといけないの?」

 「で、ですが、私が悪役令嬢として…」

 「私を虐めれるの?」


 ドーン‼︎と胸を張るアヤカ様…


 「しゅ、しゅみましぇん…」

 「い、虐めるつもりは無かったのよ。だから、あなたの役を別の人がすれば良いのよ」

 「はぁ…」

 「…この学園で遠巻きにされてる私に王子様との接点はないの。虐めるネタすらないのよ?」

 「…なるほどです。」


 やっとわかって来ました。でも、悪役令嬢になる為に生きてきた私はどうすればいいのでしょうか…


 「あなたには現在王子様と接点の無い私と王子様をそれとなく取り持つ役をして貰いたいの。それで…起爆剤はあの宰相の跡取り…」

 「ヴィクトー様ですか?」

 「そうそう。ヴィクトー。あれで良いわ。軽そうだしそれとなく声を掛けて来るでしょう」


 ………いいのかしら?


 「私、断罪されて10年ほど牢に入れられて、恩赦で牢から出されて国外追放されなくて良いのでしょうか?」

 「(…思ったよりえぐいな…)良いのよ!」

 「私、頑張りますわ!アヤカ様と仲良くしてサミュエル様との接点を作れるように、頑張ります!」


 まるで聖女の様なアヤカ様を見つめて私は誓いました。


   ◆◆◆


 チョロい、チョロすぎるわよ、エトワール…


 あの宰相跡取りが私に色目なんか使うか!あれは完全に金髪ドリル芳香剤をやめたエトワールに粉かけてたわよ。

 そして、あのクソ王子=精霊王、あいつと結婚する気なんか勿論さらさら無い。ま、今のところあいつも私をガン無視かましてるけどね。


 とりあえず、精霊王とやらには巻き込んだ私の復讐と巻き込まれた事に気付いてないエトワールの分の仕返しをしっかり返してやらないと!

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