新しいわたくし
朝です!爽やかな朝!ドリル作成から解放されてご機嫌な私…の侍女…。
「エトワール様、すごい変な顔してますけどどうにかします。」
「ん。」
そこは『どうかしましたか?』とか『大丈夫ですか?』ではないかと思うのですが、勝てないのでスルーします。
結局考えてみたものの、新たな武装方法は考え付かず、丸腰で登校しなくてはならないのです。おめめも気分もショボショボです。
「縦ロールが無いとちょっと邪魔ですかね?ハーフアップにして後ろは流しましょう。」
「ん。」
もうお任せします。
「エトワール様、今日もカンペキな悪役令嬢です。」
いつものルーティーンですがちょっと元気が出ました!さすが私の侍女!私の事をよく分かっています。
私は力強く頷いて、家を後にするのでした。
◆◆◆
私がお昼にアヤカ様の教室に行くと、アヤカ様は律儀に私を待っていて下さいました。
私を目を見開いて見た後、ぎこちなく笑って手を振ってくださいます。私がニヤリと笑って見せるとアヤカ様の教室内がザワッとしました。
ムムム、期せずしてヒロインを呼び出す悪役令嬢の図に見えたのでしょうか?
「誰かと思ったわ。」
と、言われたとたんに不安になります。
「やっぱり私家に帰って…」
「いい!いい‼︎それでいいから!超悪役っぽい!クール系悪役令嬢ね⁉︎大人っぽくていいわぁ〜」
力いっぱい止められます。悪役令嬢=縦ロールと思っていましたが、そんな事はないのですね?私、浅はかでした。
私は胸を張って姿勢を正します。さぁ、一刻も早くアヤカ様にサミュエル様を落としていただきませんと‼︎
「サミュエル様は食堂にいらっしゃるはずです。アヤカ様、参りましょう!」
私はアヤカ様の手を取って、足早に食堂に向かうのでした≡┏( `Д´)┛
◆◆◆
「どなたかサミュエル様がどこにいらっしゃるかご存知無いかしら?」
今日に限って人が多いように思うのですが…そしていつもの席にもいらっしゃらないみたいです。仕方がないので周りの学生に聞くものの、どなたも赤くなってアワアワするだけで返事を返してくれません。
…あまりにも私が怖いのかしら?
しかたなくウロウロしていると前方からサミュエル様のお友達のヴィクトー様がいらして、珍しく笑顔で声をかけて来られました。
いつもはスルーです。もちろん私もですが。
「誰かと思ったらエトワール嬢じゃないですか。ずいぶんいつもとイメージが違うので分かりませんでした。サミュエル様をお探しなんですか?珍しいですね」
「ヴィクトー様、ご無沙汰しております」
すっとアヤカ様がヴィクトー様に頭を下げると、
「アヤカ嬢、お変わりありませんか?」
「…!そういえば、アヤカ様の庇護者は宰相様でしたわね!」
ヴィクトー様は宰相閣下の甥っ子で、将来は子供の無い宰相閣下の家督を継ぐ優秀な方なのです。短く揃えたダークブロンドのイケメンなのですが、『花愛』には『宰相の息子』としてしか出てきません。
「ええ、エトワール嬢もご存知でしたか。ですが、現在伯父の家には僕がいるので妙齢の女性をお預かりする訳にはいかないと。」
「私も自分の事は自分で出来るからって寮の方に行かせて貰ったの。」
「アヤカ嬢、何かご不自由はありませんか?」
「特にはありませんわ。」
…ずいぶん物語と違う展開なような気がしますが、私もすべて覚えている訳ではないですから…それか、
「不躾で申し訳ございませんが、ヴィクトー様はサミュエル様がどこにおられるのかご存知ではありませんか?」
「不躾などとんでもない!僕がエトワール嬢の言葉を遮ってしまったばかりに…申し訳ない」
ヴィクトー様は一房私の髪を手に取りチュッと…
「な、な、ななななな…‼︎」
「サミュエル様ですね?サミュエル様は今日は執務室におられます。なぁに、野暮用が残ってましてね。そこで食事をとりながら終わらせてしまおうと…何か見繕ってくると部屋を出て来たんですけど、いいタイミングでしたね。」
破壊力抜群の笑顔で軽く答えるヴィクトー様。
乙女ゲームキャラ設定⁉︎小説ではほとんど記述のない癖に、この軽さはなんなんですの⁉︎私、きっと真っ赤になってしまってますわ!
「わわわわわたくしこれでもサミュエル様のこん、婚約者なんですのよ⁉︎」
「美しい花を愛でてもサミュエル様は怒りませんよ。それより、エトワール嬢がサミュエル様にわざわざ会いに来るなんてなにかあったんですか?」
「う、美しい…は、はな…は…」
逃げたい!なんなんですの⁉︎
「揶揄うの、辞めてあげなよ…この子、免疫0だよ」
ヴィクトー様にアヤカ様が何かおっしゃっていたようなのですが、私には聞こえていませんでした…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます