第9話中央山岳地帯ジュノ、07貧しい村の裏手の山に住む大蛇

目の前にいる大蛇は思った通り、胴回りの直径が3メートル、全長20メートル、緑と茶色の鈍く光る鱗で覆われ、頭部の大きさから口を開ければ人間など頭から丸飲みできそうだ。



大蛇は俺達を囲む炎のバリケードに、どこか入れる隙間はないかと探っているように何回も行ったり来たりしている。



頭を持ち上げる度にシュルシュルと口からでる二枚舌が不気味だ。



ただ不思議と炎のバリケードの外にいる旅の格闘家には目もくれていない。



大蛇はずっと俺達ばかりを気にしている。



そうこうしているうちに、バウルが息を切らしドタドタと山道を下ってくる。



「ハアハア・・・手はず通りに・・・」



「任せとけ!」



俺達に気を取られていた大蛇は後頭部に格闘家の飛び蹴りをくらう。



大蛇はよろめき体勢を直そうと、すぐに頭部を持ち上げ、初めて格闘家の方を向いた。



その瞬間を待ってましたと、格闘家がペイントボールを大蛇の頭部に当てた。



発光するピンクの塗料が大蛇の頭部全体に広がり、塗料が目に入った大蛇は巨体を狂わせのたうち回る。



「でかした!」



大声で誉めたバウルはぐっとかがむと、信じられない跳躍力で上空に消えて行った。



「ほー!チートは本物で、あれがドラゴンドライブか」



格闘家が感心しながら上空を見上げる。



ドラゴンドライブ・・・バウルが宴会の席で酔っぱらい、自慢げに話していた竜騎士必殺の秘技。



鍛えに鍛え上げた脚力が、チートの域に近付いた時、そのジャンプ力は軽く20メートルを越え、そこから落下速度を加えた大槍の攻撃は着弾時に地形を変える程だとか。



上機嫌のバウルは村の娘を両脇に抱え、「直撃したモンスターは肉片が飛び散り、原型を留めておりませんぞ!ガハハハハ!」と、自慢げだった。



盛りに盛ったクソ話だと、横で聞いてて呆れていたが、まさかあの見苦しい体型でこれ程までに跳躍するとは・・・



「隊長・・・」



「あぁ、これで村は救われる」



格闘家の投げたペイントボールには、唐辛子やハバネロといった激辛の香辛料が入っており、当てられたモンスターは数秒間、のたうち回る。



そして香辛料と一緒に入っている蛍光塗料は、遥か上空に上がった竜騎士が落下の目印にするためらしい。



見覇らしいの良い場所なら目印は要らないが、山道や森林では一旦木々に隠れてしまうので、自然界にない蛍光色は良い目印になるそうだ。



感動に浸っていると、銀色の一閃が目前に落下してきた。



考える間も無く、飛び散る山の土と衝撃波が俺達を吹き飛ばす。



山の下り道だったのも手伝って、俺達はとんでもなく下へ吹き飛ばされた。



いったいどれ程飛ばされたのだろうか、周りを見るとすぐ近くにカールがいて、遠くに隊長の姿が見えた。



「隊長!」と叫ぶと「大丈夫だ!」と、返事が来たので3人揃ったところで恐る恐る着弾地点まで山を登った。



そこには驚く光景が待っていた。



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