警備隊のマルクス

第3話中央山岳地帯ジュノ、01貧しい村の出来事

「またか・・・今月で何人目だ・・・」



「もう16人っす」



「この一帯の畑は・・・トーマスのとこだったか?」



「はい・・・俺も何度か裏山のゴブリン退治でここを通ってるっす」



「じゃあ、エミリアさんは息子3人も亡くしたってことか・・・」



「そうなるっす・・・」



「それにしても・・・喰うなら残さず喰ってやれば良いものを・・・」



「そうっすね・・・何も腰から下を残さなくても・・・惨すぎるっす」



ここは中央山岳地帯ジュノ地方。



王都から東へ山をふたつ越えた小さな村で、今までにない殺人事件が起こっている。



犯人はもうわかっている。



山に生息する大蛇だ。



理由は簡単で、いつも山から死体現場まで巨体をうねらせた形跡を残しているからだ。



「とにかくトーマスの遺体を村まで運ばねぇとな」



俺と隊長さんは、担架でトーマスさんと思われる遺体をエミリアさんの家まで運んだ。



道中、無言だった隊長さんが口を開いたのは、エミリアさんに大蛇討伐の依頼を王都に出すと決心した時だった。



「エミリアさん、トーマスも犠牲になってからですまねぇと思ってる。でも村の蓄えた金での討伐依頼は被害が大きくなってからでないと出せねぇんだ」



泣き崩れている老婆に、この話しが聞こえていたかはわからない。



ただ隊長さんのジレンマは今日で終わる。



「俺は村長の息子として、このまま王都の窓口に討伐依頼を出してくる」



エミリアさんの家を出てすぐ、隊長さんは振り返らずこう言うと、日暮れまでそう時間はないのに王都へ出掛けていった。



本当は警備隊の俺達に大蛇を討伐できる力があればいいんだが、討伐できるのはせいぜいゴブリン程度だ。



噂に聞くチートの能力があれば、村の越冬時に使う大事な金を使わなくて済むのに。



「マルクス、また誰かやられたんだって?」



警備小屋に帰ってくるや否や、村長が訪ねてきた。



大蛇がうろつくこの村で、警備隊の隊長としての息子が心配なのだろう。



「隊長が王都に討伐依頼出しに行ったからもう安心っす」



それから年寄りの繰り返す話を聞いて今日が終わった。










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