#12 童貞は家を買った



「なるほど、お話は分かりましたわ。本当に、不甲斐ない我らをお許し下さい」


「お前が謝るこっちゃねぇわな。こんな国の……いては世界の存亡の危機に瀕しても下らないプライドを優先させる、そんな輩にこそ謝ってもらいたいもんだ」


「仰る通りですわ。貴族諸侯の意識改革にも、早急に取り組みますわね」



 アンリエッタの執務室で、傍らには騎士であるフローラを控えさせて、俺はこの部屋の主である彼女と今後の話をする。


 とりあえずの俺の要望としては、このいつ何時、俺を気に入らない輩から狙われるか知れない城を出て、一軒家でも買って落ち着いて生活することだ。

 防犯設備を整えて、俺もフローラもそれぞれの個室を手に入れられれば、俺は誰に遠慮することもなくメガパン――女神のおパンツを堪能できるって寸法だな。


 そんな俺に対して、この国の王女であり対魔王軍の全権を掌握する彼女――未来の俺のの相手となるアンリエッタは、真剣な顔をして口を開いた。



「ハクヤ様のご要望ももっともなものですし、問題となるのは迅速な情報伝達ですわね。ですがそれも、軍に支給している通信用の魔導具をお持ち下されば問題ありませんわ。まさか、王都からもお出になる訳ではございませんわよね?」


「他所の街も知らねぇしな。暫くの間はこの王都を拠点にするつもりだ」


「でしたら問題ございませんわ。物件はこちらで選定いたしましょうか?」


「いや、自分で探してみたい。貴族街やらに豪邸を貰っても持て余しちまうし、よく考えたらまだ王都の観光すらしてないんだしな。観光がてらココって家が見付かりゃいいんだけど」


「それでしたら……」



 そう言って執務机の引き出しを漁り始めるアンリエッタ。少しの間を置いて俺に見せてきたのは……小ぶりのアクセサリーケース?

 俺に手渡して開けるよう促す彼女に従い、ケースを開けてみると。



「……ペンダント?」


「はい。我がグリフィオーネ王家の家紋が入ったメダルです。騎士であるフローラとそのメダルがあれば、ハクヤ様の国内での身分は完全に保証されますわ」


「そりゃまた、大層なモンを……」


「いいえ、もっと早くにお渡しすべき物でしたわ。どうぞ、紛失にはくれぐれもご注意くださいませね?」


「ああ。至れり尽くせりで悪いな。ありがとうアンリエッタ」


「い、いえ、そんな……!」



 おいおい、そんな頬を赤らめて照れるんじゃねぇよ可愛いなぁ!


 聞けばアンリエッタは現在16歳だとのこと。日本でいえば既に結婚もできる年齢だし、このグリフィオーネ王国の法律でも16歳で成人だとのことだ。

 対して俺も中身こそ29歳のアラサーだが、肉体は転生に際して18歳に若返っている。


 つまりお似合いってことだな! これもう早くセッ〇スするしかねぇよな!? くっそ早く魔王だかをぶちのめして救済ボーナス貰いてぇ!!

 しかしそれまではメガパンと妄想でオ〇ニーするしかねぇこの現実よ……! 早いとこ家買ってマイルームに閉じこもって、思う存分俺の〝聖剣〟をやりてぇ……!


 あ、ちなみにフローラたんは御歳19歳とのこと。

 一個上の美人なお姉様とこれからひとつ屋根の下で暮らすとか、俺得過ぎて泣けてくるな!! 転生して良かった!!


 そんなこんなで俺は、アンリエッタに城を出る手続きやらこの前の報奨金やら、あとは通信用の魔導具や不動産屋への紹介状等々を手配してもらって、期待に胸を膨らませながら、翌日の朝に城から出立したのだった。





 ◇





「こちらの物件など如何でしょうか?」


「ほうほう、庭もあって木造二階建てか。風呂もあるのか?」


「もちろんですとも。台所も最新の魔導具を導入しておりますし、水道も通っております。さらに裏庭には使用人を住まわせるための離れもございますよ」


「これで平民街なんだろ? よっぽどの成功した奴が建てたんだろうな」


「その通りです。こちらの物件はさる豪商が王都の滞在用に建てた物なのですが、今年初めに会長の男が世を去りまして。子が跡を継いだは良いものの父親のようにはいかず経営は傾き……といった流れで売却されたのですよ」


「なるほどなぁ。まあどこの世界でも親が優秀だからって子供も優秀なワケじゃないからな。逆も然りだが、まあ世の常ってヤツだな」


「左様でございますなぁ」



 不動産屋の案内で物件を観て回ること五軒ほど。その五軒目で、中々良い家だと思える物件に巡り会えた。他の四軒も悪くはなかったのだが、水道が通ってなかったり風呂が無かったりと、どれももう一つといった物だった。

 しかしこの家は、俺が最低限求める物は全て揃っていたので、俺はこの家を買うことに決めた。



「そういえば、家政婦や警備員を斡旋はしてないか? 別に家事くらい自分でやってもいいんだが、何しろ今までの生活と勝手が違うもんでな」


「家政婦でしたら、住み込みか通いかで何名かずつご紹介できますね。後日面接の予定を立てましょうか?」


「そりゃ助かる。そちらの商会に行けばいいのか?」


「ええ、そのように。それと警備員ですが、……もしお嫌でなければですが、奴隷を購入された方が経済的には安く上がるかと」


「ふぅん? この国は奴隷制度があるのか?」


「ええ、ほとんどの国で奴隷制度はありますね。国によって奴隷の扱いは様々ですが。この国は奴隷の生活を保障する法律を布いていますので、人として扱わなければ主人が罰せられます」



 ほぉ〜。よく聞く虐げられている奴隷は居ない、もしくは居ないということか。それならそっちも検討してもいいかもな。

 奴隷なら基本的には主人には逆らえないはずだから、見張りをサボったりなんだりもしないだろうしな。


 この家を気に入った俺はその後、不動産屋の商会に戻り契約や支払いを済ませた。

 それから家政婦や警備員、そして奴隷についてもより詳しく教えてもらったのだった。


 うん? フローラ? ちゃんとついて来てるぞ?

 それこそ護衛騎士やSPよろしく、黙ーって俺の傍らに付きっきりだ。


 真面目で職務に忠実なのは大変結構なんだが、別に俺は本気で護衛させる気はなかったんだがな……。

 せっかくお近付きになれたのだから、用事が済んだら王都の観光デートにでも繰り出すか。朝早くから出たおかげで、まだ今日という日はたっぷり残ってるんだしな。


 あ、ついでにフローラに服でも買ってやろう。

 せっかく美人でスタイルも抜群なんだから、それを強調するようなエッチぃ服とか、カワイイ系もドレス系も色々揃えてやろう!


 うん、それがいいな!

 そして当然下着もだな! 俺が選んだ下着を恥ずかしがりながら着けるフローラたん……!


 やべぇ、妄想が捗るぅううううううッ!!




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