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 彼が話す言葉が聞こえてきました。

 「このカフェは僕のお気に入りなんですよ。あまり長くいても誰も怒らないので、散歩なんかすると、いつも決まってここを訪れるんです。それで、早速ですが、あなたの悩みというのは、一体何があったんですか」

 私は散らかった頭のままで、いよいよこんな事態になってしまったのだから、今までのことを話そうと思いました。ウィジャ盤のことは全くの虚構と思われるかもしれませんが、それでもきっと私のことはわかってもらえるかもしれません。私がそう決心しているうちに、彼は口を開きました。

 「すみません、お話ししていただく前にとても肝心なことをすっかり聞き忘れていました、あなたのお名前はなんというのですか、私の名前はマユズミユキオと言います」

 ああ、なんと運命的なんだろう。何度も頭のなかで想像したマユズミユキオという人にこんなところで出会うとは思ってもいませんでした。あの忌々しいウィジャ盤によって招かれた不安を、あの魅力的なウィジャ盤によって招かれた人に話す。なんとも不思議なことですが、既に予感していたことが見事的中したとも感じました。

 窓を見ると、ウィジャ盤と初めて対面した日と、そっくりな透き通った美しい夕日が見え、やはりこの人が運命の人なのだと直感しました。

 私は自分自身の名前をマユズミさんに伝え、それから時子さんのこと、千恵子さんのこと、ウィジャ盤のことを伝えました。ですが、もちろんマユズミさんがウィジャ盤によって予言されたことは伝えませんでした。

 「はは、それは面白い話ですね。ウィジャ盤が予言するという噂は僕も聞いたことがありましたが、あなたの話を聞くまでは、物的証拠がないただの薄っぺらいデタラメのようなものだと思っていましたよ、しかし、あなたの悩みはウィジャ盤が見せる悪夢のようなものですね。ですが、それは何でもない夢に過ぎません。ウィジャ盤のことはすっかり忘れて、今まで通り二人とお話をすると、きっと三人で仲良くすることができるでしょう。なぜって、お話を聞いた通りだと、ウィジャ盤なんかが、あなたたち三人の友情にかなうはずはずがないからです。僕は日本にいる間なら、きっとあの本屋か、このカフェにいるだろうから、もし何かあればいつでも話は聞きますよ」

 私はマユズミさんの話に頷き、感謝を告げました。そうして、私たちは別れの挨拶をしました。

 やはりマユズミさんは運命の人に間違いないのです。私が思ったことを全てわかってくれて、あの穏やかな声のまま、私のために話をしてくれる。あの大きい手。こうして書き出すと、なんとも恥ずかしいことですが、あの大きな手に包まれたい。そんなことを考えていると、私はいつでも優しい気持ちになり、今までにない幸福感に満たされるのです。

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