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 なぜこの話をしたのか。その前後はあまり覚えていないのですが、子どもの頃、私たちはシンデレラに憧れた話をしました。時間を守るために、ガラスの靴を残してしまい、その靴をたよりに探してくれる王子様。見つけてくれる王子様。救ってくれる王子様。そんなことに憧れた話をしていたので、その次の日のウィジャ盤には、三人それぞれ「いつか私には運命の人がきますか」という質問をすることになりました。なんとも御伽噺おとぎばなしのような質問ですが、とても楽しそうで、とても面白くて、素敵な質問だなと思っていました。ウィジャ盤の答えは三人ともイエスでした。夢のような質問に、夢のような答えがかえってきたので、私たちはただただ笑うばかりでした。その日の夕焼けもとても綺麗で、ああ、ずっとこんなふうに笑って過ごしていたいなと思いました。

 さらにその次の週のウィジャ盤をしたときのことです。私は不意に予定にない質問をしてしまいました。

 「私の運命の人の名前を教えてください」

 予定では、次の週に行われる試験は簡単でしょうかと聞くはずでした。ですが、運命の人がいると知ってしまった私は、ふと、この質問をしてしまったのです。

 ウィジャ盤は答えます。マユズミユキオ。

 私が予定になかった質問をしてしまったからか、二人も同じ質問をしました。それぞれ違う名前が答えられました。その後、千恵子さんと時子さんから、まさか私がそんな質問をすると思わなかったと言われ、二人にはそのような意図がないことはわかっていましたが、少しだけ責められたような気持ちになりました。みんな違う名前でよかった、もし同じ名前の人が答えられたらどんな気持ちだったろうと千恵子さんが話をし、私たちは笑い合いました。今思い返すと、この時の千恵子さんが仰った通り、同じ名前だったら、どれだけ苦しい思いをしただろうかと思いました。

 彼との出会いは、次の週の雨の日の本屋の帰りでした。

 その日は朝から一日中雨が降っていたというのに、彼は傘を持っておらず、少し雨宿りをしたいという理由で本屋にいたのでした。彼が私に声をかけてきました。

 「すみません、こんな天気だというのに傘をもっていなくて。もしよければ、少しだけ傘を貸してくれませんか」

 私は名前も知らない人に、話しかけられるのがはじめてだったので、とても不安でしたが、整えられた髪や服。穏やかな声から、ふと気を緩めてしまい、とても近くの駅まで一緒に歩くことになりました。傘は彼が持ってくれました。ゆったりとした歩調で歩いたためか、手が私たちよりも大きく、厚いことに気がつきました。彼はこう言いました。

 「本当にありがとうございます、このあたりに住んでいらっしゃるのですか」

 私はこのあたりの学校に通っていることを伝えました。

 「あの学校ですか、それでは僕なんかが話しかけてはいけない方だったかもしれませんね」

 「とんでもありません、あの、あなたもこのあたりに住んでいらっしゃるのですか」

 「僕は世界のいろいろなところを旅しているのです。最近はこのあたりに住んでいるのですが、つい二月程前まではフランスにいたんですよ、あれはとても綺麗な国でした」

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