ⅩⅣ Another Universe 太陽系の侵略者③ 月面の攻防
一 〈ザルド〉の移動
二〇三四年三月二十二日、水曜、一九〇〇時。
レプリカの〈ザルド〉は静止軌道上にいて、壊滅したレプリカのフェルミ艦隊がいた位置から地球の自転方向に距離36000キロメート先行した位置にいる。レプリカの〈ザルド〉は位相反転シールドでステルスだ。
一方ISS-BS1は多重位相反転シールドしているがステルス解除し、レプリカのフェルミ艦隊がいた静止軌道位置から1000キロメートル外側の空間に留まっている。静止軌道上のレプリカの〈ザルド〉との距離は36510キロメートルだ。
レプリカの〈ザルド〉にいる、レプリカンのレプティリア女帝リズと、レプリカンのマコンダのアーサー・ブリット大佐は、ISS-BS1の我々に気づかれていないと思っている。
このままISS-BS1を月へ移動させて、静止軌道上のレプリカの〈ザルド〉と、月の裏側へ移動しているオリジナルのフェルミ艦隊を壊滅すれば、オリジナルの〈ザルド〉が月に現れる。その機会を逃さずに〈ザルド〉を攻撃する・・・。
C(カムト・ヘクトスター、吉永CSC指揮官)はそう考えた。Cの考えは精神波(心の思考である精神思考による意志疎通)となってコントロールデッキにいる皆に伝わった。
「PeJ。我々を見張っている情報収集衛星を見つけたか?」
G(ガル・ヘクトスター前田班長)はコントロールポッドからPeJがいるコントロールポッドを見た。
「見つけたよ。十四機あるよ。全部破壊するんだね」
PeJがコントロールデッキに、レプティリアに情報を流している情報収集衛星の4D映像を投映した。4D探査によれば全機が国籍も種類も異なっている。ハッキングされてISS-BS1が成す事をオリジナルとレプリカの〈ザルド〉と、フェルミ艦隊に伝えている。
「もうちょっと待て!全部まとめて破壊する。
ただし、破壊の順番がある」
J(精神生命体ニオブのニューロイドJ、鮫島京香)が精神波で説明した。
「わかったよ!
情報収集衛星、レプリカの〈ザルド〉、オリジナルのフェルミ艦隊、この順番に攻撃して、一瞬に破壊だね!」
「そうだ。スキップ(時空間転送)攻撃だ」
「イヤッホーなんて喜んでいられないね・・・」
PeJは興奮を鎮めた。
「ISS-BS1は急げは八分で月へ行ける・・・」
C(吉永)が説明した。
ISS-BS1の最大速度は秒速800キロメートルだ。地球から月まで 384,400キロメートル。スキップせずともISS-BS1は480.5秒、約八分で月へ移動できる。
「PD。フェルミ艦隊はどこにいる?」とJ。
「月を周回する楕円軌道を取りました。もうすぐ月の裏側から離れます」
コントロールデッキに4D探査映像が現れた。フェルミ艦隊は月を焦点とする楕円軌道上を移動してまもなく月から遠ざかろうしている。
「J!レプリカの〈ザルド〉が静止軌道から遠ざかってるよ」
PeJがステルス解除処理した、レプリカの〈ザルド〉の4D探査映像をコントロールデッキに投映した。
「まずいな・・・」
遠ざかるレプリカの〈ザルド〉の4D映像を見て、C(吉永)が呟いている。
「どうして?」
班員山本が精神共棲しているM(マックス・オオスミ)の意識を押えて訊いた。
班員倉科も、精神共棲しているZ(ザック・オオスミ)の意識を抑えこんでいる。
前田班長がG(ガル・ヘクトスター)の意識を乗り越えて言う。
二人とも、精神共棲しているトムソ(精神生命体ニオブの精神共棲体・ニューロイド)のM(マックス・オオスミ)とZ(ザック・オオスミ)に、記憶を教えてもらえ」
「了解した・・・」
班員山本と倉科が自分たち精神共棲しているトムソたちに納得した。
ニオブのヘリオス艦隊は母艦である大司令艦〈ガヴィオン〉を中心に、回収攻撃艦〈スゥープナ〉一隻、攻撃艦〈ニフト〉一隻、突撃攻撃艦〈フォークナ〉四隻の計六隻の副艦と、搬送艦百六十隻、小型偵察艦二十隻、各艦体規模に応じた数の小型攻撃艇から構成され、全艦がプロミドンコントロールシステムによるプロミドン推進システムを搭載している。
それらのうち、クラリックがヘリオス艦隊から奪った副艦の〈フォークナ〉三隻と搬送艦十六隻は火星にあったが、回収されてへリオス艦隊とともに月の北極の地下深くに格納されている。
AIとしてのプロミドンは、へリオス艦隊の大司令艦〈ガヴィオン〉と六隻の副艦にそれぞれ一基ずつ搭載されている。その他に、精神生命体ニオブの母星、アマラス恒星系惑星ロシモントから一基ずつが直接、地球と火星に転送されたままになっている。
班員山本と倉科が自分たちに精神共棲しているトムソたちの記憶を確認すると、JとC(カムト・ヘクトスター吉永CSC指揮官)とG(ガル・ヘクトスター前田班長)も記憶を再確認した。これら精神生命体ニオブの遺産をレプティリアなどに奪われてはならない。
「PeJ。レプリカの〈ザルド〉がどれくらいで月に到着するか調べてくれ!」
「了解!・・・。
我々に気づかれていないと思ってステルスのまま、静止軌道速度の秒速3.07キロメートルで静止軌道から遠ざかってるよ。このままなら35時間で月に到達するよ」
「わかった・・・」
Jに笑みが浮かんだ。一回で仕留めてやる・・・。
Jの思考は精神波でコントロールデッキにいる皆に伝わった。
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