エピローグ・本当の世界
目が覚めると見たこともない天井だった。今まで嗅いだことのない乾いた空気が染みわたっている。
「お目覚めかな?補習コース終了ご苦労様だ。異論は認めない」
俺を見下ろす50代ぐらいのおっさん。身体を起こすと軽い頭痛に襲われる。
『ぉ、俺はバル・ナーズ・・・エーゼスキル学園の1年生…そうか!』
ようやく思い出した。俺はここエーゼスキル学園に入学したものの、弱体化スキルしか使えなかった。
なので補習授業を受けようと特別室に向かったのだが、このおっさんに問答無用でこのベッドに寝かされた。何でも機械文明が無くなった中で少ないながら残っていた遺物レベルのモノだそうだ。
ちなみに目の前のおっさんは学園の教授だ。
「今君が体験した事は過去の技術たる仮想現実U_4の世界だ。そしてスキルの戦闘力が平均レベルになると自動的に開放される仕組みになっている。異論は認めない」
俺の寝ていたベッドには見たこともない機械や線がくっついている。よくもまあこんなヘンなトコで寝ていたものだ。
「つーことはアレは偽物の記憶か、だったら俺のやってきた事は…」
「然り、しかし君が体験して得た力は間違いなくその身に備わっている。異論は認めない」
確かに以前とは比べ物にならないほど増大した
「じゃあ俺が最後にアイツらにやった事は…」
「残念ながらプライバシー保護法により君の仮想現実での行動を監視する事は認められていないので、君が何をやってきたのかは私にも知る由はない。しかし所詮は作り物の世界の出来事なので禁忌に触れる事をしたとしても処罰の対象にはならない。異論は認めない」
「……………」
「一言忠告しておくと、人間は様々な衝動を抱えて生きているものだ。特にこの仮想現実ではそれが顕著に現れやすい。願わくは現実世界では自分自身を制御できるようにしてもらいたい。異論は認めない」
「…分かったわかりましたよ!
「さて、君の気持ちも落ち着いた事と見える。異論は認めないがどうする?学園に残留するかそれとも」
「教授ともあろう方が愚問だな。このまま修行を積んで世の中に貢献してやるよ!」
この現実世界は前世紀までの機械文明のほとんどを失い、異常気象から起こる天変地異や大気圏外からの飛来物による災害に見舞われている。しかし先ほどまで体験していた仮想現実の世界―モンスターの闊歩する弱肉強食―とほぼ変わりはない。
エーゼスキル学園…常に厄災に脅かされているこの世界を
バル・ナーズは不器用ながらも愚直に成長していく事となる。
-完-
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