ファングブライトへの加入

 こんなマイナススキルしか使えない俺もようやくパーティー「ファングブライト」に入ることになった!

 何でも俺のマイナススキルたる弱体化を知った上で誘ってくれたらしい。ギルドに加入手続きを済ませるとさっそくクエストに向かう事に。


 南の町の外れの森にて20体ほどのゴブリンの群れを発見、今回の討伐クエストの対象だ。能力的には脅威とならないモンスターだが、連携をとり集団戦法をしてくるので油断は禁物だ。


 ファングブライトの全員がモンスターの群れに向かって総攻撃を仕掛ける。仕留めるまではいかないが突然の攻撃にゴブリンも陣形を崩す。

 次に崩れた陣形の中へ俺が侵入し弱体化スキルを発動。俺に襲い掛かろうとしていたゴブリン達は倒れるとまではいかなくとも力が抜けてひざをついてしまう。

 そこへ群れの周囲を取り囲んだ仲間たちが弱体化したモンスター達を各個撃破する。


 リーダーが考えた戦術だそうだが、よくもまあ俺のスキルを十分に検討してくれたものである。

 そしてゴブリンの群れをこの作戦で全滅させる事に成功した。


「あははは!いやはや痛快痛快!討伐数稼ぎまくりでレベル上がりまくりだ!!」

「ホント、あなたがウチに来てくれて大助かりよ!」

「前はあんだけ手こずったモンスターが弱いのなんの…どんなクエストでもイケそうだよ!」

「バルさんには本当に感謝してます。ずっとウチにいて下さいね?」


 ゴブリン討伐の後の飲み会、信頼できる仲間達との酒がこんなに美味いなんて。捨てる神あらば拾う神あり、とはよく言ったモンだ。


 気になるところがあるとすれば、俺自身のレベルは全く上がってないという事ぐらいか。それも当然、所詮弱体化は補助スキルであって攻撃ではないからな。メンバーがどんどんレベルを上げていく中、俺もこのままだといつ追放されるか分からん…どうしたものだろう?



 翌日、南の森の廃墟に向かう。ここにゴブリン達が住みつき根城にしているようだ。俺たちが到着するのを待っていたかのようにゴブリンの精鋭・ゴブリンナイトにゴブリンロードといった上位種が出撃してくる。全員で10体か。

 例の作戦通りメンバーによる一斉攻撃が始まる。昨日と違ってなかなか陣形が崩れないが無理強いして突撃する。弱体化スキルを使用。しかし俺のスキルが効かないのかゴブリン達は倒れない。


「くそ!どうなってんだこりぁ…こっちの攻撃をガードされちまう!」

「わ、私の攻撃スキルが効かないなんて!」

「ぐ…なんてカタさなんだ!ゴブリンのクセに…」

「ちょっとバルさん!真面目に弱体化掛けてください!!」


 メンバー達が必死に周囲から攻撃してくれるが一向に倒される様子はない。もしや上位種だから耐久力が段違いなのか。このままでは全滅だ!


 そこで俺は弱体化を更に掛けなおす。一瞬ゴブリン達がよろめいた気がしたが全く意に介さず外からのメンバーの攻撃を受け返している。迷わずもう一度スキル発動、これでもダメか!


 やけくそになってスキルをかけ続けて5回目、とうとうゴブリン達が痙攣を起こし煙をあげて倒れ始めた!はたから見ても全員死んでいる?とどめを刺す必要がないほどに。


 要するに同じ相手に弱体化スキルを重ね掛け、すなわち連続使用していたらいつの間にか弱体化が範囲攻撃になっていたようだ。

 回りはモンスターだらけなので一気に仕留める事が出来る。何より俺の方にも今まで入らなかった経験値がどっさり入ってくるようになった。もうこれで足手まといにはならんぞ。



「バル、悪いけどこのパーティーから出ていってくれないか」

「あ、あなたの攻撃は素晴らしいのだけれど」

「アタシたちの経験値が…じゃなくてチームワークが乱れるんだよ」

「今までお世話になりました。さようならです。」


 気がついたらファングブライトから追い出され追放されていた。弱体化じゃなくてやっと攻撃ができるようになったのになんで追放されるんだ?誰か説明を。



 ~戦果報告~

[範囲攻撃]

 使用者の周囲5mの範囲内の対象に対して電属性にて攻撃する。弱体化スキルを重ね掛けする内に鬼力きりょくのコントロールが可能になり攻撃に昇華。空中放電が行われる事から鬼力きりょくの消耗は激しい。(弱体化の5倍)


 使用可能スキル:弱体化・範囲攻撃new!!


◇◇◇

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