第11話 愛
今日で、彼女が亡くなってから3年が経つ。
1日も彼女の事を忘れた事はない。
「やあ霄くん。」
「お義父さん。お久しぶりです。」
「行こうか。」
彼女のお義父さんの車に乗せてもらい、
彼女に花を届けに向かう。
手には、彼女との結婚指輪を、
首には、彼女からの最初で最後の贈り物となった、
ネックレスをぶら下げ、
彼女が好きだったかすみ草を持ち、
お墓の前に立った。
「紫夕。久しぶり。
元気だったか?
今日はかすみ草持ってきたよ。
綺麗だろ?」
そう言ってお線香をあげた。
「今年は忙しくてお盆来れなかったんだ。
寂しかったよなごめんな。」
次の瞬間、風が吹いた。
彼女が、いいよと微笑んでくれたように思えた。
「先輩。今日合コン来ません?」
と、後輩が言った。
「ごめん。パス。」
「えー。いっつもじゃないですか。
恋人でもいるんですか?」
「いるよ。」
「どんな人ですか?」
「美人で優しくて黒髪が綺麗で、とても強い人。」
「へー。結婚しちゃえばいいじゃないですか!」
「そうだなー。
俺が彼女と同じ世界に行ったら、
もう1度プロポーズしようと思ってるよ。」
「なんかよくわかんないですけど…
ほんとに来ないんですね?!」
「行かないよ。怒られちゃう。」
そう言うと後輩は悲しそうに、
オフィスを出ていった。
屋上で俺は、空を見上げる。
なぁ、紫夕。
最後のお願い聞けそうにないや。ごめん。
だって…
紫夕以上の人なんて、
どこを探しても見つからないんだ
だから、待っててよ。
そっちに行くまで、
まだだいぶ時間かかるけど笑。
きっとこの先、何年、何十年経とうと、
彼女を好きな気持ちは変わらない。
そう胸を張って言える。
俺が生涯愛した女性は、
久我山紫夕、たった1人だ。
今日も朝日が昇る。
眩しい光が街を包み込む。
ねえ。
君は今日も、幸せですか?
彼女はなぜ 樟那 @kusuna
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