第8話 純白

「霄くん。」

「お久しぶりです。石川先生。」

「紫夕ちゃんの外出許可の件なんだがね、

正式に許可が降りたよ。」

「ほんとですか?!

ありがとうございますッッ!!」

俺は先生に深くお辞儀をした。

「ただ、ひとつだけ条件があるんだ。」

「なんでしょう?」

「私ともう1人、看護師を同伴させる事が

絶対条件なんだがいいかな?」

「わかりました。何かあった時その方が安心です。」

「うん。わかってくれてありがとう。」

「掛け合って下さりありがとうございました。

失礼します。」

そう言い、紫夕の病室へと急いだ。


「紫夕!!」

「ど、どうしたの霄くん。」

「外出許可出たよ!」

「ほんとに?!やった!」

「嬉しい?」

「すっごく!」

「…」

「霄くん…?」

「可愛すぎんだろ!このやろ!」

俺は彼女の髪がぐしゃぐしゃになるまで、

頭を撫でた。

「や、やめてよー(笑)」

「ごめんって(笑)」

「霄くん。ありがとう。

だいすき。」

「ッッ…。い、いいんだよ。

俺も…だいすきだよ。」

「顔真っ赤だ(笑)」

「あーもう!

明日、連れていきたい場所があるから

今日は早く寝ろよ!」

「わかりました!」

「またな。」

彼女を抱き締め、俺は明日のために、

隼颯と侑汰と柚香の3人と準備を進めた。



次の日、紫夕を迎えに行き、

俺は、教会へと向かった。

美容専門学校に通っている柚香が、

紫夕のヘアメイクを担当してくれた。


「柚香ちゃん…?」

「紫夕ちゃん、久しぶり。」

「これ、どういう事…?」

「まあまあ!いいからいいから!

私がとびっきり可愛くしてあげる!」

「え、ちょっと…。」



……教会の扉が開く。

眩しい光が差し込んだ。

そして見えた彼女は、

純白のドレスに身を纏っていた。

この世で1番綺麗だと思った。


「霄くん…?

これ、どういう事なの…?」

「驚かせてごめんね。

今日は紫夕に伝えたい事があるんだ。」

「うん?」

「高校3年のあの日、紫夕に出会えた事。

今でも運命だと思ってる。

居なくなってからもずっと紫夕の事で、

頭がいっぱいで、紫夕に会いたい、

その一心で上京してきた。

3年ぶりに紫夕に会った時、

やっぱり君が好きだと俺は、確信したんだ。

だから、この先も俺と一緒に生きて欲しい。

俺の隣で、一緒に人生を歩いて欲しい。

俺と、結婚してください。」

「でも、私…。」

「紫夕。」

彼女は驚いた顔をしていた。

「お父さん?」

「幸せになりなさい。」

「でも…。」

「お母さんの事はお前のせいじゃない。

お父さんのせいだ。紫夕の幸せを、

誰よりも願ってるのはお母さんだよ。」

「お父さん…。」


「紫夕?返事、聞かせて?」

「そんな急に…。

私、死んじゃうんだよ?」

「俺のために生きてよ。治療しようよ。」

泣きながらそう言った。

「霄くん…ッッ。」

「紫夕が居ない世界なんて、俺には耐えられない。

結婚しよう?ずっと一緒に…居ようよ…。」

「うんっ。」

泣きながら笑ってみせる彼女に、

俺は指輪をはめた。

「安物でごめんな。」

「ありがとう。嬉しい。」

「紫夕。」

「なに?霄くん。」

「この世界の誰よりも愛してる。」

「私も、愛してる。」

そう言って、口づけを交わした。

「幸せになれよ。2人とも。」

「そうよ!幸せになりなさいよ!」

「お前らの幸せを願ってる。」

「侑汰、柚香、隼颯…。ありがとう。」

「ありがとうみんな。」

「家のバカ息子を宜しくね。紫夕ちゃん。」

「母ちゃん!やめろよ!(笑)」

「こちらこそよろしくお願いします(笑)」

その日の内に、婚姻届を役所に出し、

晴れて俺達は、夫婦となった。

この時間が永遠に続きますようにと、

強く、強く、願った。







しかし、神様は残酷だ。

結婚式をした次の日、彼女の容態が急変した。

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