第5話 再会

あれから3年の月日が経ち、

俺は大学3年生になった。

髪色も趣味も、色々な事があの頃からすっかり変わってしまったけれど、1つだけ変わらない事がある。今でも、彼女の事を想っているという事だ。

彼女が、東京へ戻ったという情報だけを頼りに、

田舎から上京してきた。

もう1度彼女に会いたい、その一心で。


「霄、今日暇か?

久しぶりに呑みに行こうぜ。」

「お、隼颯から言い出すなんて珍しいじゃん。

彼女にでも振られたのか?」

「傷口に塩塗るなよ…。」

「悪い悪い(笑)。」

恐らく2日前に彼女に振られたこの男は、

大学で仲良くなった天馬 隼颯。(てんまはやて)

金髪が同じだった事をきっかけに、

話すようになった。



午後の授業も終わり、隼颯と居酒屋へ向かった。

1杯目はビール。

2杯目からはレモンサワー。

俺達の中ではそう決まっている。


「だいたいさぁ、

お前はなんで彼女作んないんだおぉおお。」

「忘れられない人が居るんだ。」

「会ってぇ、気持ち伝えろよぉおお。」

「高校3年の時に俺の地元に引っ越してきて、

そこから2ヶ月だけ一緒に過ごしたんだ。

一目惚れだった。

でも、2学期の始業式前に、

東京に帰っちゃったんだよ。

連絡先も知らないし、もうきっと会えない。」

「それはなぁ!お前!

見つかるまで…」


バタッッッッ。


隼颯は急に泡を吹いて倒れた。

救急車で運ばれて、処置がされた。

急性アルコール中毒だそうだ。

念の為、1晩だけ入院させるそう。

喉が渇いたと隼颯がうるさいから、

飲み物を買いに自動販売機へと向かった。

そこには、車椅子に乗った髪の綺麗な女性がいた。

上まで届かないようで、困っていたので、

「何にしますか?俺押しますよ。」

と、その方に声を掛けた。

「お水で。」


ピッ。


「どうぞ…って、え…。」

彼女の顔を見て俺は驚いた。

「久我山…?」

彼女も俺の顔を見て目を丸くさせていた。

「安藤君…。

なんでここに…。」

「友達がさ…

急性アルコール中毒で運ばれたんだ(笑)

それで入院するらしいから俺も付き添いで。」

「そっか。なんか、大人っぽくなったね。」

「久我山は相変わらず、髪…」

ブーッブーッ。

「ちょっとごめん……。

せっかく久しぶりに話せたのに残念だけど、

友達が飲み物くれってうるさいから戻らなきゃ。」

「わかった。またね。」

「あの…久我山!今度会いに行ってもいいかな…?」

「もちろんだよ。1015号室にいるよ私。」

「わかった。ありがとう。

お大事にな。ちゃんと寝ろよ?」

「うん。ありがとう。」



次の日、俺はさっそく久我山に会いに行った。

「よっ久我山。おはよ。」

「おはよう。」

なんだか今日の彼女は、具合が悪そうだ。

顔色も悪く元気がない。

「体調、悪いのか?」

「今日はちょっとね(笑)」

そう言って笑って見せた彼女だったが、

その笑顔は切なく悲しげで、心が痛んだ。

「私、少しお手洗いに行ってくるね。」

立ち上がりトイレへ向かおうとした次の瞬間、

彼女は床に倒れた。

「久我山…?!おい!久我山!

久我山…久我山…久我山ッッ!!」

俺は、わけもわからずナースコールを押した。

「ゲホッ」

「血…。おい…おい…!久我山!おい…。

紫夕!!!!」

「どうなさいましt…久我山さん?!

わかりますか?!

横田さん石川先生呼んで!早く!!」

そこからはあまり覚えていない。

気付いた時には、彼女は酸素マスクをつけていて、

俺は眠っている彼女の手を、

ただひたすらに、握り続けた。

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