第4話 アイスと海と君
時刻は午後3時。
あれから1時間ほど、4人で海を楽しんだ。
「ちょっと休憩しよーぜ。」
「柚香アイス食べたい!」
「じゃあ俺、柚香とアイス買ってくるわ。
霄と久我山、何がいい?」
「俺ソーダ味。」
「私はバニラがいい。」
「おっけー。ちょっと待っといて!」
そう言って近くのコンビニまで、
侑汰と柚香はアイスを買いに行った。
隣を見ると、疲れきった表情の久我山が居た。
大分顔色が悪い。
「久我山、大丈夫?
顔色悪いけど…気持ち悪くなったか?」
「少しね。」
彼女は少し苦しそうに笑った。
「飲み物買ってくるからちょっと待ってて。
あ、何がいい?」
「お水欲しい。」
「ん。わかったよ。」
俺は、予備に持ってきていたタオルを、
久我山に渡し、自動販売機へと向かった。
みんなの分も買い、久我山の元へ戻ろうとした時、
久我山が年上の男に絡まれているのが目に入った。
居ても立っても居られなくなった俺は、
走って久我山の元へ行った。
「久我山ッ。」
「安藤君…。」
「向こうに行こう。」
「おいおい、そこのお兄さんちょっと待てよ。
勝手に連れてこうとすんなよー。
仲良くしようぜ?」
「すみません。辞めてください。
嫌がってるじゃないですか。」
「お兄さんこの子の友達でしょー?
別にいいじゃんか。」
「こいつは……
こいつは俺の彼女なんだよッ!」
そう言って久我山の手をとり、
無我夢中で走った。
勢い余って、口から出任せを言ってしまった。
「ごめん。久我山。怖かったよな。」
「大丈夫。」
「あと、あんな嘘ついてごめん。」
「……助けてくれて、ありがとう…。
「よしじゃあ、戻ろうか!」
そう言って歩き始めた時だった。
バタッッッッ
驚いて後ろを振り返ると、
久我山が倒れていた。
携帯をロッカーに入れてしまっていたので、
すぐに久我山を抱えて海の家まで戻り、
救急車を呼んでもらった。
少しして、侑汰と柚香が戻ってきた。
柚香に久我山の荷物を持ってきてもらった。
急いで着替えて、救急車が来るのを待った。
そこからの記憶は酷く曖昧だ。
確か、一緒に救急車に乗って、病院へ行き、
そのあと久我山のお父さんが来て、
俺は家に帰ったんだっけな。
その日から4日が過ぎ、
始業式の日がやってきた。
あれ以来、久我山とは会えていない。
面会にも行ったが、
「御家族の方ではないとお会いできません。」
と、跳ね返された。
今日もまだ久我山の姿は見えない。
その後のホームルームで先生が言った。
「急で申し訳ないんだが、
久我山は家庭の事情で東京へ戻った」と。
それから1度も、
彼女がこの街に戻ってくる事はなかった。
あの日を境に彼女は、俺の前から姿を消した。
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