第3話


4月。声が多くなる季節。冬のネガティブな冷たいシンとしたのとは違う、明るかったり不安だったりが少し不安定な声の季節。


「今日から期間限定の転校生が来まーす。まぁクラス替えしてすぐだからあんまり関係ないと思うけど仲良くしてね。」


 今年の担任からの衝撃の知らせでクラスがざわつく。


「まじか!きいてねーよ!」

(なかよくなれるなかな)

「男?女?」

「かわいいかなぁ?」

(いけめんか?)



「そんで!ひとつ。お願いがあるの。この子は耳が聞こえない。人が喋ってるのを聞いたことないから上手に喋れないの。今までは支援学校にいたんだけど、本人と保護者の意向で普通科の学校に1学期だけ参加することになりました。だから基本的に会話は筆談。みんなにペンとホワイトボードを配るから、これで話すように。それ以外は普通のいい子だから問題無いわ。」


一気にクラスが静かになった。

(きこえない)

(いいこならへいきかな)

(ひつだんか)


「じゃ、入っておいで。」

先生が手招きする。


彼女は背伸びして黒板に


よ 齋 こ

ろ 藤 ん

し 一 に

く 葉 ち

お で は

ね す


と書いてニコッと笑った。

そのときなんか不思議な感じがした。


クラス中で拍手がおきた。

「やべぇかわいい!」

「中学生みたーい」

(はだしろっ、はーふかな?)

「いいこそうだね!」


本人は良くわからない様子で、みんなが笑ってるのをみて笑いながら拍手をした。



ん?

聞こえない。


彼女の声が。



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