来る来る巣

架橋 椋香

来る来る巣

 あたしは若いから大丈夫だと思ってたけど、物凄い数の腕が生えた夢を見たから、彼氏に会いに行くことにした。怖かったのだ。あたしの彼は呪学に詳しい。


「やあ、どうしたの」

と声をかけてくる彼、今日もたいへん美丈夫なので、

「今日も明弥みょうやは羊が大丈夫だね」と言うと、

「へへ、由呼ゆいこもchopsticks to sellだよ」と笑む。うるはしいらしい。

 かくかくしかじか、今朝の夢のことを聞いた彼は、

「なんだ、そんなことなら羊なんかより大丈夫だよ、でも一応大根を食べたほうがいいかもね。せっかくだし、これからでもしませんこと?」

 彼にも彼なりに情緒というのがある。あたしはそうね、そうしようかしら♪と答えて、おでんが食べられそうな場所を検索する彼の、右肩の薄さなんかを観察していた。


 結局、連れていかれたお店はおでん屋ではなくダイエット食とかそういうレストランで、曰く、おでん屋さんはなんかえなかったから。おでん屋なんてみんなそうだけどな、と思いつつ、あたしは大根ハンバーグ、彼はそれに大根おろしがのったもの、を注文。味噌汁の豆腐か。

 出てきた大根ハンバーグは想像よりは満足感のあるものだったし、おそらくおでんよりは映えるしなだったから、おお、となったけれどやはりダイエット食はダイエット食であって、あたしは若いし割といくら食べても太らないからクレープ屋を見つけていちごのクレープを食べた。結局大根はどんなに頑張っても、映えに於いてはいちごクレープには敵わないのだ。明弥は?と聞くと俺はいいよをしやがったので強引に一口食わせたところ口の周りにクリームがたくさん付着したので一瞬舐めようかとも思ったけど、さすがにそれは過激だし、と丁寧に拭ってあげるにとどめた。自分でやったことの尻拭いは―今回は入り口だが―ちゃんと出来る個体を目指しております山崎由呼やまざきゆいこ19歳です宜しく

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来る来る巣 架橋 椋香 @mukunokinokaori

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