第7章 特産品を考える

第25話 これで私も異世界漁師?

 家関係についてはキャンペーンの100万円を使い、物品は事務局受け取りという殊にした。

 異世界現地に到着時、アイテムボックスに収納またはその場に配送という形だ。


 しかしあの100万円以外の分、つまり自分の財布で購入する分は自宅受け取りにする。

 理由は簡単。

 私自身の個人情報を事務局に渡さない為だ。

 

 今では私も9割方、この異世界移住は詐欺でないと思っている。

 しかしだから用心をしないという訳にはいかない。


 それでも中には事務局預かりにした方がいいものもある。

 具体的に言うと釣り用の船。

 こんな代物を置けるような場所はこの部屋にはない。


 出来る限り事務局に個人情報を渡さずに購入する方法はないだろうか。

 調べた結果、

① 移住計画事務局へ、登録したメールアドレス名義で送金

② 送金分+キャンペーンの残金で船を購入

という手順なら問題は少ないだろうと判断。


 なお送金そのものはネット上で済ませる。

 送金者の名義をメールアドレスにして口座情報非通知に設定すれば大丈夫だろう。


 さて、船はどんなものにしようか。

 候補としては、

  〇 シットオンカヤック

  〇 手漕ぎボート

  〇 ゴムボート

  〇 中古漁船(の小さめの奴)

といったところだろう。


 勿論動力にエレキやエンジンは使えない。

 手漕ぎか足漕ぎか、さもなくば魔法だ。

 大きい方が安定性が高い。

 長い方が速い。

 軽い方が漕ぎだしは速いけれど、その分風で流されやすい。

 あとは値段だ。


 ゴムボートは耐久性と利便性を考えてパス。

 アイテムボックス魔法を使えるのだ。

 空気を入れたり折りたたんだりする必要は無い。

 それならハードシェルの方がメンテナンスも楽だろう。


 機動性を考えたらシットオンカヤックだ。

 魔法による推進を考えなくてもある程度動き回れる。

 ただ船上はかなり狭い。

 身動きをとるのは難しそうだ。


 あとシットオンカヤックで投網を使うのは難しそうだ。

 投げるのは風魔法を使えば出来るかもしれない。

 ただ手繰り寄せたり引き上げたりするのは難しいだろう。

 船の横側でそんな作業をしたらひっくり返りそうだ。

 船尾で出来ればいいけれど船が狭くておそらく無理。


 中古漁船は大きさと重さ、値段がネック。

 いくら魔法を使ってもエンジン程の推進力というのは想像しにくい。

 そうなると手漕ぎも出来るボートというのが選択肢として残る訳だ。


 まずは日本の通販サイトで検索。

 なるほど、船検があるからあまり長いものは無い訳か。

 しかし全長3メートルちょいまでというのは見た目が不格好だ。


 そんな場合は海外通販を確認。

 Rowing boat usedとかfishing boat usedで検索しまくる。


 よし、全長4.3mちょい、幅1.6mちょいの良さそうなものがあった。

 船底の形状から見てそこそこ海でも使えそうだ。


 筐体はアルミ製。

 オールも一応ついている。

 きっと非常用でエンジンを使うのが普通だろうけれど。

 水属性魔法で動かすか、身体強化魔法で腕力に頼るか。

 その辺は現地で試せばいい。


 値段は……1,995ドル、今日のレートで22万4千円というところか。

 詳細は……問題は無さそうだ。

 割と新しいし、船体の方も問題なさそう。

 海水対応ともなっているし、腐食防止の亜鉛板もついている。

 購入だ。


 残金が8万円程度なので、少し余裕を見て15万円を振り込む。

 外出せずネットで出来るのは便利だ。

 そして持ち物リストのページを開き、先程の中古船のWebアドレスをカット&ペースト。

 購入ボタンをクリック。


 あっさり購入成功だ。

 重さはオールや付属品を含めて175kg。

 家やトイレ等の超大物を除いた重量で200kgを超えてしまった。

 つまり家やトイレをアイテムボックスに入れた場合、入らず溢れるものが出てしまうという事。


 でもまあいい。

 家を出した後にアイテムボックス内に入れればいいのだ。

 これなら外置きしても問題ないだろうし。


 あとは漁網や釣り道具。

 1人漁業だから地引網は無理。

 しかし投網や仕掛け網は可能だろうしやってみたい。

 

 魚のサイズはどのくらいを目安にしようか。

 現地情報を確認する。

 今ひとつ情報が足りない。

 漁業を志す移住者が少ないせいだろうか。


 魚網の通販ページに『魚体が痛まないようにしたい場合は、1~2サイズ細いものをおすすめします』とあった。

 なら投網の網目はやや小さめの網でいこう。

 ただし網そのものの大きさは投げにくさ覚悟で大き目に。

 勿論私のテクニックではなく、魔法でのアシストを期待して。


 あとは張り網で潮の干潮を利用した漁をやりたい。

 つまり憧れのすだて漁だ。

 現地は満潮と干潮で3m近く潮位が変わる。

 月が無いので大潮小潮の差はほとんど無い。

 だからこの漁、なかなかはかどりそうだ。

 そんな欲望丸出しで海用、長さ27mなんてのを2つ購入。


 更に程よく流れの緩やかな川もある。

 なら刺し網なんてのもいい感じだろう。

 緩やかな方の川でガンガン行けるかな。

 全長15mのものを網目のサイズ違いで2枚。


 補修用品や付属品、予備もつけ、網だけで20万円近くなった。

 異世界移住できなければただの不良在庫決定。

 そう思いつつもワクワクがとまらない。


 さて、次は釣り用のグッズを揃えよう。

 大物狙いは海辺の浪漫だ。

 あとは干物製造用具も揃えないとな。


 無理して社畜やっていたので貯金はそこそこある。

 厳密には役所だから所畜だけれども。

 だから問題ない。

 多分きっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る