第4話 まずは軽く探索を

 メールボックスを見てみる。

 オース移住計画事務局からの新着メールだ。

 早速中身を確認させて貰う。

 勿論スクリプト類はもとよりHTMLも一切動かないセーフモードで。


 メールは添付ファイルや画像等がないテキストメールだった。

 念のためヘッダーを全て確認する。

 送信者偽装等は無さそうだ。


『御登録ありがとうございました。下記が御登録者様専用のページとなります。ブラウザのアドレス欄に貼り付ける等してアクセスしてください』


 アドレスには不審な点はない。

 ドメインは先程のWebサイトやメールと同じ。

 末尾が長く細かいのは専用ページであるなら仕方ないだろう。


 なら見てみよう。

 プライベートモードのままである事を確認し、ブラウザへにメールからアドレスをコピー&ペーストする。

 

 あっさり新しいページが開いた。

『オース移住計画・情報登録ページ』

 そしてその下には私が入力したメールアドレスに様用とつけて表示されている。

 つまり私専用の情報登録ページであるようだ。


『まずはニックネームとアクセス用のパスワードの設定をお願いいたします。次回からは登録メールアドレスとパスワードで専用ページにアクセスいただく形となります。

 それでは記載のメールアドレスに間違いがない事を確認して、ニックネームとパスワードを決定し、入力してください』

 

 まだクレジットカードだの個人特定情報だのを入力する必要は無い模様。

 なら進めてしまおう。

 ニックネーム欄に『エルザ』、パスワード欄には『5904523536』と入力。


 なおエルザというのは大学のサークルでのあだ名だ。

 野外活動が好きだから野生→野生のエルザ→エルザというつながり。

 ああ、自然の多いところへ行きたい。

 緑が多くて水が綺麗で出来れば海が近くにあるところ。

 海外はあまり好みでは無い。行った事無いけれど。

 屋久島あたり、行きたいなあ。

 少しばかり雨が多いけれど。


 パスワードはある数学定数の小数点以下11桁以降。

 この辺は暗記しているので忘れる事はない。

 万が一忘れても調べればわかる。


 さて、これでいよいよ個人特定情報の入力か。

 そう思ったが違った。


『登録が完了いたしました。それではログインページに移動します。登録済みのメールアドレスとパスワードを使用してログインしてください』

 

 個人情報収集はまだのようだ。

 ならと言うことでページを移動、ログインページを一応ブックマークに入れておく。

 メールアドレスとパスワードを入力しログイン。


『オース移住計画・情報提供ページ』

 そう題したページが出て来た。

 項目として、

  1.はじめに(進度0/100)

  2.言語学習(進度0/100)

  3.魔法訓練(進度0/100)

  4.そのほかの訓練(進度0/100)

  5.持込装備登録

  6.移住スケジュール・候補地登録

  7.現地情報収集

  8.登録情報変更

  0.終了(ログアウト)

とある。

 個人情報を収集する気配はない。


 一番興味があるのはやっぱり魔法訓練だ。

 しかしこういうものはやはり1から始めるべきだろう。

 そんな訳ではじめにをタップする。


『1.はじめに

  ⑴ 移住までの流れ

    移住は概ね、

     ➀ 言語学習

     ② 魔法訓練

     ③ その他の訓練

   等の訓練を行うのと平行して現地の情報を収集し、必要な装備を準備します。


    現地への持ち込みは、

     ➀ アイテムボックス魔法で持ち込める範囲の重量の場合、アイテムボックス内

     ② それ以上の場合は現地出現場所へそのまま

   という形で行われます。

    アイテムボックス魔法は②の魔法訓練を終えた段階では、概ね2,400kgのものを収納可能です。なお容積の制限はありません』


 なるほど、それならキャンピングカーとかも持ち込めるな。

 巨大なものでなければ。

 エアストリームなんて異世界に持ち込むと目立つかもしれない。

 そんなの買うお金は無いけれど。


 現在の貯金は700万円ちょい。

 何が必要かを考えるのも楽しそうだ。 

 2,400kgもあればかなりのものが持って行ける。

 そんなに買うお金は無いけれど。


 そういえば何かキャンペーンというか特典があった筈だ。

 100万円以内通販可能という。

 あれはどうなっているのだろう。


 これは前の画面の持込装備登録あたりかな。

 一度戻ってそっちを見てみる。

 少しばかりメニューを探してページ移動すると、案の定それらしい説明を発見した。


『持ち込む装備等は既に御自身でお持ちの物、御自身で購入された物の他、当サイト経由の通信販売で購入することも可能です。

 なおキャンペーン等での特典は当サイト経由の通信販売のみ使用する事が可能です』


 登録だけしてお金を引き出して逃げるなんて事は出来ない訳か。

 まあ当然だ。

 そのくらいの対策はしてあるだろう。


 それではその通信販売とやらはどんな品揃えなのだ。

 確かここへ来るまでに通信販売なんとかという項目があった気がする。

 メニューを少し戻ってみるとあっさり発見。

 どれどれ。


『本事務局の優秀なバイヤーによりほぼ全世界の通信販売サイトからの購入サポートが可能です。

 必要な物品がありましたら

  ➀ 商品掲載ページのWebアドレス

  ② 商品名

  ③ 必要個数

を通信販売ページの装備購入一覧表に入力してください。数時間で価格と重量が表示されます。購入を決定した際には購入承認ボタンを押してください。金額がポイント通帳から引かれ、商品の購入が確定します。

 なお商品は移住と同時にアイテムボックス、あるいは移動場所へと移送されます。ですので保管等の心配はありません』


 なお画面の右上には私のポイント通帳残高が表示されている。

 キャンペーンのおかげで現在の残高は100万円だ。


 これで異世界に持って行くべき物の買い物ゲームなんてやっても面白そうだなと思う。

 私が買うとしたら何だろう。


 生きるのに必要なのは衣食住。

 そしてアウトドア活動をした経験から言うと、住はやっぱりしっかりした屋根のある家が欲しい。

 テント泊や寝袋カバービバークを何度も経験した身だからこそ、雨風をしのげる建物のありがたさはよく知っているのだ。


 ものすごく久しぶりに私は夢中になっていた。

 それこそ休職の少し前から今までの間では無かったことだ。

 何かおかしい、怪しい。

 このサイトだけではなく、私も。

 心の底でそう思いつつも夢中で内容を追い続けてしまう。

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