第32話 田代峠 実録・日本のエリア51 ①

「山菜と命 どっちが大事」


 そう記された看板が掲げれた電柱の向こうに峠がある。


 東北最大級のミステリースポットと冠された田代峠。


 そこでは霊はもちろんの事、地には妖怪妖魔が跋扈しUMAが這いずり空にはUFOが飛び交う異次元への入口であり異世界転移の門でもあり時空も磁場も狂って時間が消失し宇宙人と握手できるかもしれない旧日本軍の秘密基地とされ入れば死ぬ禁断の土地と噂されている。と、耳にしている。


 とにかく、そこにはUFOが飛び立つ秘密基地があるというのだが…いってみよう。


 山形県最上地方と宮城県大崎地方を結ぶ県道262号最上小野田線。


 県境の田代峠を挟む山間部はほぼ未舗装道のダートであり、背丈程も伸びた熊笹が生い茂る鬱蒼とした山深い林道なのだが、何故かその林道は県道指定にされている。(山形側)


 冒頭の看板がある電柱は山形県赤倉温泉付近の奥にあり、田代峠入口辺りには朝日沢集落という何軒かの廃集落が見られる。(ここが高橋コウの手記にある屋敷台、屋敷平?)


 峠を中心に囲む山々の周辺は深い原生林の山奥ということもあり、人跡未踏の地は確かに存在するという。


 山深い峠でもあり磁場の影響からか、ドローンも信号の断絶を起こし、操縦不能や撮影不具合が多発するとの事。


 宮城県側からレンタカーでこの田代峠に迷い込んだ方の話では、倒木にタイヤを取られて車が立ち往生し、小雨の降る荒れた山道を電波の通じる場所まで歩き、そこからJAFに救助をお願いしたところ、周囲に目印になる地点がなく、地図で周辺の山の名前などを説明したが、なかなか理解して貰えなかったという。

 スマホで緯度経度をメモして伝えたが、後々考えるとそれが正しく伝わっていなかった可能性があるとの事だった。


 山形県側だけでなく宮城県側加美町でもUFO目撃例が多い。

「羽」「磐」「船」等の文字が入る場所には怪光やUFOがよく出現するともいわれる。

 奥羽山脈、出羽三山、船形山…。

 古事記に出てくる天鳥船、鳥之石楠船神の通行路及び発着場であった可能性もある。

 加美町の由来は神の宿る所を意味する「賀美郡(かみごおり)」に由来している。


 田代峠のほど近く、加美町田代高原付近には死人沢と呼ばれる沢がある。


 昔、久保屋敷に性悪な農家があった。

 ある年の秋、旅の僧(六部)が村を托鉢して廻った後、一夜の宿をその農家の家に求めた。


 その日以来、憎が村から出て行く姿を見た者がいないとの噂が村内で立つ。

 後に火打山の沢で一人の死体が発見される。

 村役人の指示で御遺体の片付けを命じられた当番達が死体を取り調べたところ、僧が焼火箸で滅多刺しにされて殺され、小松沢の奥で誰の顔面かも解らないように面の皮を剥がれ、隣の沢に棄てられたと推測された。


 その事件以降、顔面の皮が見つかった沢を面剥沢(ツラハギザワ)と呼び、御遺体が発見された沢を死人沢(シビトザワ)と呼ぶようになったという。


 付近には東北大学の地震・噴火予知研究観測センターが設置した地震計が藪の中に設置されている。


 宮城県側から山体を見るとみみずくの耳のように見える事から名付けられたみみずく山は、魔の山との噂があり、付近の住民の方々は足を向けて寝られないらしい。


 みみずく山の麓近傍には岩堂沢ダム(ガンドウザワダム)があり、その完成は2009年なのだが、何故か地図にはダムへの道が記されていない。(ダム周辺は立入禁止)

 ダム湖の湖底にUFO基地が隠蔽されている…そのような噂も伝え聞いた。


 岩堂沢ダムからみみずく山方面へ地図にない林道を進むと林の中に巨木が現れる。その根本には小さな山神の石碑が鎮座している。

 その巨木はまるで樹洞が丸く穴が空いたように奇妙な形にえぐれており、絶妙なバランスでそびえ立つ。


 みみずく山は熊がよく出没するため熊の宝庫ともいわれ、そこかしこに熊穴が多数存在していると思われる。


 宮城から山形へ奥羽山脈を抜けて通じる峠は12か所ほどあり、その一つである田代峠は密輸、国抜け等が横行した事で仙台藩の番所が設置されていた。

 主な峠道から枝葉が別れるように無数に廃棄された山道があるともいわれる。

 奥羽山脈緑の回廊の看板が設置されているが、峠は無数の廃道を含めるとまさに難解な緑のダンジョンと化す。


 宮城側はそうでもないが山形側に入ると雰囲気というか空気がガラリと変わる印象を受ける。

 熊も危険だがまむし、蛇、山ビル、毛虫も多数現れる為、注意を要する。山深くならツツガムシもいるであろう。

 蝿や虻などは平地と比べるとやや巨大化しているのでその容貌に驚く。


 この田代峠周辺にまつわる事件と噂をなるべく時系列に沿って列記しておこうと思う。(裏取り未確認のものも含む)


 ①戦時中、田代峠近辺に旧日本軍の一式陸上攻撃機が墜落。(非公式なのか記録を見た事はないが目撃したという伝聞が残る)

 海軍所属戦闘機グラマンF-6Fも墜落したとTV番組内で紹介。(80年代辺りのオカルト番組は話を盛り上げるために虚実織り混ぜ、過剰な演出も見られる)


 ②1968年(昭和43年)1月17日。

 航空自衛隊松島基地所属のF86Fセイバー戦闘機が墜落。


 田代峠にパイロットと愛機を鎮魂する慰霊碑が建立されている。


 ③1970年代頃~。

 田代峠周辺、奥羽山脈上空に謎の怪光、未確認飛行物体、UFOの目撃例多発。(UFOブーム)


 ④1970年代頃~(昭和50年代頃)。

 翁山など峠近辺の山々周辺に出没する山人の目撃事件。


 身長2メートル程の「山人(やまびと)」と言われる未確認生物が生息しているという噂がある。


 地元の農家の人が山菜採りへ山に入った際、気分が悪くなり座り込んでいると、山人に助けられて無事に集落がある場所まで送り届けてもらったという。


 ⑤1979年8月。

「禁断の山に踏み込んで見たもの」

 中央公論社刊、婦人公論にて掲載。

 同年5月に起きた出来事を、妻の名義で夫の高橋邦安氏が綴ったとされる。

 後の「禁断の田代峠奥 高橋コウの手記」

 その後、高橋邦安氏急逝。(亡くなった原因は不明)


 ⑥1979年。

 保京山事件。

 2人の16歳の女の子が田代峠付近、赤倉温泉の外れから保京山の山頂を目指して登山をしている時、山中で銀色のスーツを着用した3人の人型物体を発見。500m程の距離で目撃したという。

(1977年12月5日。ピンクレディー、UFOリリース)


 赤倉温泉周辺の洞窟の伝承では、山賊の頭領がそれまで集めていた財宝を或る洞窟に埋蔵し、口封じに手下を皆殺しにしたという場所があるといわれている。その財宝はまだ見つかっていない。


 ⑦年代日時不詳。

 航空機墜落事故原因はUFOだと主張する人々が多数現れ、調査隊を結成して調査に向かう。峠付近で濃霧に囲まれ、霧の中で女性から「ここから入っては駄目」との警告を受ける。


 これは同じ話と思われる。

 UFOブームの頃、UFO研究会と名乗る団体が峠へ赴き、霧深い中で老婆に遭遇したという話。その老婆は暫くすると霧と共に消えたらしい。


 研究会が学術調査隊に置き換わる話もあり、同様に田代峠へ車で登っていると急に濃いガス、濃霧が立ちこめ、霧の中に一人の老婆が現れて「ここから先へ行ってはいかん」と、道を塞ぎ睨みつけていたという。

 しばらく睨み合いが続き、一行が困り果てていると霧が晴れてきて、その老婆の姿も忽然と消えていた。


 ※1982年

 山形県山形市瀬ノ原山に謎の発光体が出現。通報を受けた山形新聞のカメラマンが駆けつけたが、発光体は消滅。その後、姿を現すことはなかった。

 その4年後の1986年。

 西川町鶴部でミステリーサークルが発見される。

 その前日。この地区では電灯が突然点滅したり、電源を入れていないラジオが突然鳴りだすという事が相次いでいた。


 ※1984年(昭和59年)。

 山形県酒田市松山町外山。

 謎の発光体群が出現。二週間ほど町民に目撃される事例が相次ぎ、町が調査に乗り出したが原因は解明されず。

 UFOフィーバーと当時の様子を山形新聞が報じている。


 1982年頃は田代峠周辺、最上町、尾花沢市近辺でも謎の発光体、怪光、UFOが頻繁に目撃されている。

(時は80年代オカルトブーム)


 ⑧1983年5月19日。

 宝森山菜採り行方不明事件。

 田代峠近辺の宝森に山菜採りに入った佐藤カツエさん他三名が遭難した事件。

 息子さんと旅館の仲居さん二人と共に宝森へ入山。

 山に入ると一行は濃霧に囲まれ、四人は散り散りとなり遭難する。

 カツエさんは意識が朦朧としたまま一人で山中を彷徨っていたところ、聞いたことのない発音で話す外国人と遭遇。

 何を話しているのか理解できず、その場を通り過ぎたという。


 その後、一行は捜索隊により救出されたがカツエさんが救出された際、第一声が「あんたら日本人?」と、捜索隊に問いかけたといわれている。


 ⑨1985年2月下旬。

 田代峠の東、海抜200~300メートル地点。

 その地点で猟師の大場廉次氏という人物が猟銃で獲物を仕留めようとしたところ、何度引き金を弾いても銃弾が発射できない状態となる。

 猟を諦め下山すると、携帯していた時計の日付が4日間程、逆戻りしていた。


 ⑩1985年。

 塩野智廉氏による田代峠の調査レポート

 オカルト雑誌月刊ムーに掲載。

 その後、氏は行方不明。

(80年代オカルト&SFブームの頃)


 ⑪1989年~1990年頃?。

 田代峠を訪れた関西テレビの取材班が洞窟内に潜入。

 10分ほど進んでも、どこまでも内部は続くので危険と判断し引き返す。

 翌年、再度潜入を試みるも3分程進んだ辺りで内部が崩れており、進入不可能だったという。


 ⑫2007年2月5日(月)。

 インターネット掲示板に、後の都市伝説、ヤマノケが投稿される。


 田代峠がモデルといわれている。


 ⑬2010年8月21日(平成22年)。

 尾花沢銀山温泉行方不明事件。


 温泉街で栃木の男性が「近くの神社へ行く」と出かけたまま行方不明。

 山形県尾花沢市の銀山温泉付近で、栃木県の男性が散歩に出掛けたまま帰らず、翌22日、本格的な捜索を開始。

 尾花沢署によると、男性は家族ら3人と銀山温泉を訪れていた。

 21日夕方に「近くの神社へ行く」と言って出掛けたまま夜になっても戻らず、家族が警察に届け出を出した。現在も未解決。


 ⑭元田代高原 謎の網目状地形

 グーグル・アースで田代峠奥とされる元田代高原を見ると、人の手が入ったような人工的な地形、碁盤の目のように見える。


 ⑮特異地点 謎の空域 R

 航空機の計器が乱れる飛行に注意を要する空域、コリドー(飛行路)、

 宮城上空に出現した謎の白い球体

 、ラジオゾンデ(米軍所属機か?)が田代峠を調査していたという噂



 …様々、田代峠を中心に周辺ではオカルトマニアが歓喜する出来事が、昔から盛りだくさんな内容で起きている。


 これらの事象を一ツ一ツかいつまんで紐解きながらUFOを捜してみようと思う。


 《続》

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