第12話 赤い人白い人黒い人紫の人

 宮城県利府町県民の森


 宮城県民の憩いの森であり、晴れていると遠くに奥羽山脈から太平洋まで見渡せ、緑の眺望は素晴らしく、日々、人が訪れる。言わずと知れた心霊スポットでもある。


 ある親子がそこへ遊びに来た。


 自然に触れるのがよほど嬉しかったのか、はしゃぎながら子供が駆け出して歩道をどんどん先に進んでいく。

 とうとうその姿を見失い、迷子になってしまった。

 両親は懸命に森の中を捜し、その子は難なく無事に見つかった。

 帰り際、その子が親に話を聞かせたという。


 あのね


 人がいっぱいいたよ


 真っ暗な穴があってね


 赤い人が住んでいたよ


 なんだかケガしてたみたい


 動かないでじっと見ていたよ


 四つの池にね


 白い人がいたよ


 水の中に沈んでいたよ


 動かないでずっと笑っていたよ


 神社の近くでね


 黒い人が歩いていたよ


 呪文を唱えてうろうろしていたよ


 森の中にね


 紫の人がいたよ


 いっぱいいっぱい浮いていたよ


 木にぶらさがって笑っていたよ


 いっぱいいっぱい人がいたよ



 この森は昔から自殺現場が異様に多い事もあり、霊の目撃や怪奇体験の噂が絶えない。


 森の中には青麻(アオソ)神社と4つの池沼があり、南の高森山公園には岩切城跡(旧高森城)が存在する。

 その一帯を治めていた留守氏(るすし)の居城であり、14世紀の南北朝時代には動乱に巻き込まれた。

 太平記に東北の戦記は記されていないが、周辺は血みどろの激戦地と化し、城は落城したという。


 そして森の内部には太平洋戦争末期に構築された多くの防空壕が点在している。


 よく出没するという噂のスポットがある。


 ・県民の森入口付近の洞窟


 ・神社付近に修行僧が現れる


 ・防空壕跡、人工洞窟近辺


 ・池沼周辺

 水の中へ引きずりこもうとしてくるという噂。


 ・駐車場

 だが不審者の目撃事例も多い。


 ・森全域

 森内部は遊歩道が張り巡らされ、なかには廃棄された道も存在している。

 そこに入り込んだ散策者が、木からぶら下がっているご遺体を発見するという事例もある。


 そのなかでも特に気をつけなければいけない場所があるといわれている。

 それは1つ目の池と洞窟周辺なのだという。

 そこにはなにやら危険な何かが現れるらしい。

 ただ遊歩道の進入口はいくつもあり、その1つ目の池がどの池の事を指しているのか、まだ判明していない。洞窟もまたしかりである。


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