第245話 心配

元いた会議室に3人で戻り、グリオンさんのことはアリオスさんに頼んで、今度はルージュさんを呼び出す。


元々はフランちゃんに会いに行く予定だったけど、さっきルージュさんがフランちゃんの相談役となるという話を聞いているので、ルージュさんの意見を聞いてからフランちゃんのところに行く予定に変更した。


「クオン君、時間がある時でいいから少し話をする時間をもらえる?」


「大丈夫だよ。ルージュさんと話が終わった後に声を掛けることにするよ」

委員長から聞かれたので、フランちゃんのところに行く前に委員長と話す予定にする。


「ありがとう。ここで待ってるわ」



ルージュさんと会議室を出て、先程まで使っていた別の会議室へと入る。


「レイハルトさんから聞きましたが、フランちゃんの相談役として側近となるんですね」


「姫様が女王となられた後、騎士団を退団して正式に姫様のサポートに徹する予定です」


「正式に発表されていないだけで、事実的には既にフランちゃんが国のトップではあるから、フランちゃんの相談役となるルージュさんに先に話をしようと思って呼んだんだ」


「まだ姫様に実権があるわけではありませんが、お聞きします」


「国に買い取ってもらいたいものと、国から買いたい物があるんだ。それから、信用出来る人で解体が得意な人がいたら紹介してほしいです」


「解体に関してはちょうどいらっしゃっていますので、サラボナギルド長に頼むのが良いかと思いますよ」

元々冒険者をしていたのだし、確かにサラボナさんなら適任だな。

後で魔王の解体を頼むとしよう。


「そうですね。サラボナさんなら僕のことも知ってますし信用出来ますね。後で頼んでみます」


「売買したい物というのはなんですか?」


「まず売りたい物ですが、先ほど見せた魔王の角、牙、心臓、血液、皮、魔石を除いた残りの全てです。金貨1万枚で買い取って下さい」


「…………1万枚でいいのですか?」

ルージュさんは少し考えた後に確認する。

どのくらいで売れるのかざっくりと計算したのだろうか。


「元々必要ない分は分配する予定でしたし、グリオンさんにこのまま渡すのは癪だなと思っているだけなので。ルージュさんならうまく捌いてくれると思ってます」


「わかりました。金貨1万枚で買い取ります。もし姫様が買わないとおっしゃられたとしても、団長に掛けあってお金は用意致します。損をするとは思えませんので、儲けを国が得るか、騎士団が得るかの違いにしかなりません」


「それじゃあ後でフランちゃんにルージュさんはそう言っていたと伝えて、どうするか聞いておきます。それから売ってほしいものですが、ミスリルを1kgと金を10kg、それから銀を20kg売って下さい。金と銀は他でも買えそうですけど、ミスリルを大量に買うのは難しそうなので、宝物庫に仕舞ってあるやつを分けてください」


「全部で金貨100枚程度ですね。姫様の許可があれば差し上げます。魔王の素材をあれほど安く譲って頂くのであれば、対価を貰うわけにはいきません」

相変わらず真面目だなぁ。

もらっておけばいいのに。


「それじゃあ遠慮なく頂くことにします。フランちゃんが国王になって、ルージュさんが相談役になることをあまり公にしない方がいいのかなと思ったから呼んだだけなので、話はこれだけです」


「話せないことでなければ、先程団長とアリオス殿と話したことを私にも教えていただけませんか?」


「聞かなければよかったと後悔することになると思います。レイハルトさんにもアリオスさんにも他言するなとは言ってないので、聞く覚悟があるならお二人から聞いて下さい。話すかどうかはお二人に任せます」


「わかりました。そうします」


「それじゃあ、フランちゃんから許可がでたら宝物庫からミスリル等はもらっていきますので、泥棒が入ったと騒がないでくださいね」



「サラボナさんにお願いがあるんですけど」

ルージュさんとの話を終えた後、委員長には少し待ってもらってサラボナさんに話をする。


「なにかしら」


「魔王の解体をお願い出来ませんか?角、牙、心臓、皮、血液、魔石は僕が、残りは国が買い取ることになる予定です。そこらの解体屋に持ち込むわけにもいかないのでお願いします」


「……仕方ないわね。やってあげるわ」


「ありがとうございます。解体はどこでやりますか?後で持っていきます」


「ギルド本部の一部屋を貸し切らせてもらうのがいいかしらね。解体には時間が掛かると思うわ」


「わかりました。委員長と話をした後に持っていきます」



「お待たせ。それで話って?」

他の用件を終えた後、委員長と2人で話を始める。


「クオン君、1人で色々と抱え込みすぎてない?話せないこともあるのだと思うけど、私に話せることであれば相談に乗るわよ」

また何か問い詰められるのかと思っていたけど、予想は外れ心配をされる。


「相談なら今までも聞いてもらっている気がするよ」


「なんだか抱え込んでいるものが今までとは違う気がするのよね。1人で抱えるには重すぎる、心配になるようなことを抱えている感じがする。言えないなら無理に聞かないけど、話せば楽になることもあると思うわよ」


「アリオスさんとレイハルトさんには話したし、話したら楽になるようなことではないけど、委員長が聞きたいなら話してもいいよ。他の人に比べれば委員長が受けるショックは少ないだろうし」


「そうね、聞きたいから話してくれる?ある程度予想はしているけど、クオン君の口から話してくれれば協力出来ることもあるかもしれないし、知らずに邪魔をすることもなくなると思うから」


「それなら話すね。先日、神から神託をもらったんだ。前に委員長が言ってたとおり、この世界は神の選定をする役割を担っているみたい。神の使者じゃなくて神らしいけど、重要なのはそこじゃないよね。それで、僕達が神の候補者らしいんだけど、僕は神の候補として期待されていたらしいんだ。でも、期待されていたのはこの世界に来たばかりのこの世界をゲームのように楽しんでいた僕であって、今の僕ではないみたいなんだよ。僕がつまらない人間になったからだって。結果として、僕をつまらない人間にした要因であるこの世界を作り変えることにしたらしいよ。それが5年後」

話せることは隠す必要もないので、包み隠さず話してしまうことにする。


「…………うん。世界が崩壊する未来が変わっていないとは予想していたけど、流石に予想の斜め上の答えに頭が追いつかない」


「頭が痛くなる話はまだあって、多分この世界は過去に作り直されてると思うんだ。僕のことを作り物ではないって言ったひとがいて、その人は僕以外の人のことを作り物と思っているんだろうなって。前に委員長が100年周期で召喚された形跡があるみたいな話をしていたと思うけど、もしかしたら作り直した時に歴史も書き換えたから100年周期となっているのかもしれないね」


「……ご先祖様との繋がりを全否定するような話だから、この世界の人には軽々しく話せることではないわね」


「ちなみに、地球は科学力を発展させる役割を担っているらしいよ。魔法が使えないのはそのせいみたい。だから、もし魔法が普及したりして科学が廃れたら、地球も作り変えられるかもしれないね。もしかしたらもう何度か作り変えられた後かも知れないけど、それを確かめる術がないからわからないよ」


「それは聞きたくなかったわ」


「話が前後するけど、僕達がこの世界に呼ばれることになった理由として、やおよろずの神が信じられている日本は神が足りてないんだって。だから、神が増えるチャンスであるこの世界への召喚に前のめりで地球の神は僕達を差し出したらしいよ」


「本当に賭けをしていましたって言われるよりはマシな答えね。ふざけるな!とは言いたけど。急に魔王討伐作戦に協力しないって言ったり、どうやってか知らないけど、魔王を相談もなく討伐してきたりしたのはそういった理由からなのね。石像の呪いを解くことも関係しているんだろうけど、この後の予定はどうなってるの?」


「世界を作り変えようとしている神に直談判しようとしているところだよ。その為に石像の呪いを解くつもり。色々と他にも方法は考えてはいるけど、やることは固まってる感じだね」


「何か私に手伝えることはある?」


「これといったことはないけど、そろそろフランちゃんを王都に戻そうと思ってるから、フランちゃんの相手をまたお願いしたいな。後は、委員長も神になるに相応しいか試されているわけだから、そのつもりでねってくらいだね。何をするのがいいのかは僕にはわからないけど」


「フランちゃんのことは任せてくれて大丈夫だけど、話を聞く限りだと私達を起因として世界が終わりそうになっているわけだから、もっと何かやれることがあれば手伝うわよ。世界の危機なのだから遠慮はいらないわ」


「うーん、そうは言ってもな…………あ、本当に遠慮せずに頼んでいいなら一つやってほしいことはあったよ。委員長じゃなくてもいいんだけど、他の人に頼むのも気が引けることが」


「なんだか聞くのが怖いんだけど……」


「難しいことはないんだけど、ちょっと呪われてくれない?」

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