第230話 作戦開始

朝起きたらアリオスさんのところに行き、弱体化をしてもらいダンジョンで魔物を倒し、効果が切れたら昼飯を食べてからもう一度同じことをする。


そうするとちょうど夕方になっているので、立花さんと一緒にサモナーストーリーをプレイしてから寝る。


そんな1日をしばらく続け、15日程で僕のレベルは100まで上がった。

アリオスさんが弱体化した状態でどうやって魔物を倒していたのかは知らないけど、やり方次第ではこのペースでレベルが上がるのだから、アリオスさんの高過ぎるレベルにも納得が出来る。


そしてやはり僕のレベルはゲームと同じく100で頭打ちだった。

残念ではあるけど、頭打ちになることも想定してスキルポイントを温存しているので問題はない。



「レベル上げは終わったよ。そっちはどんな感じ?」

アリオスさんにお礼を言ってから、委員長に僕の方の準備は終わったことを伝える。


「後回しにしていた書物には作戦を変更するようなことは書かれていなかったわ。気になることは書いてあったけど……」


「気になることって?」


「思い過ごしならいいんだけど……召喚の魔術は神の使者を選定する為に授けられた魔術かもしれないわ。そう明言されているわけではないけど、そう読めることが書かれていたわね。世界ごとにそこの世界を管理する神がいるようだけど、そうなると、他の神が管理する世界から人を連れて来る魔術をこの世界の神は授けたことになる。この世界に住む人の都合で魔術が発動されて、他の世界の神に喧嘩を売るというのは、この世界の神にとってはデメリットでしかないのに、何故召喚の魔術を授けたのかずっと疑問が残っていたわ。でも、神の使者の選定がデメリットを超えるメリットになるならおかしくないわね」


「神の使者ね……。なんでこんなに面倒な手順で選定しないといけないのかな?優秀そうな人を選べばいいんじゃないの?」

先日、神と会話が出来るという話を刑事から聞いたばかりだ。

使者だと言われてもそこまで驚きはない。

ただ、それにしては回りくどいやり方だということには疑問が残る。


「単純に神々の中にも決まりごとがあるのかもしれないけど、世界を渡ることに何か意味があるのかもしれないわね。スキルや魔法がある世界に来たからスキルが使えるようになったのではなく、世界を渡ったことで特殊な人種に私達はなったんじゃないかって私は思うのよ。最初にもらった統率のスキルだけじゃなくて、例えば前に見せた伝心ってスキルもこの世界の人が知らないスキルだったわ。この世界の人と同じスキルもあるけど、魔法やスキルがあるこの世界に適用したという理由だけでは腑に落ちないわね。可能性は高くないし、考えたくはないけど、この世界自体が神の使者を選定する為のフィールドとして作られたのかもしれない。この世界のアダムとイブは、元の世界に帰らなかった異世界人という可能性も……」


「うーん、そうなのかもしれないね」

委員長の言っていることはわからなくはないが、確かめる術はない。

ただ、あの刑事が神の使者だったとして、言っていたことが本当なら、神の部下というよりは協力関係のように思えた。


「神の使者の選定がされているとして、術者のフランちゃんの願いを叶えて帰還するというのはポイントが高そうだけど、作戦は変わらずやるってことでいいの?」

正解かどうかはわからないけど、委員長は他にも帰還方法を見つけている。

実行に移す前なら選択を変えることは出来る。

迷っているなら作戦の開始を少しであれば延期することも出来る。


「やるわよ。元の世界に帰るために計画は変えられない。クオン君が隠している何かを話してくれない限りは他の帰還出来そうな方法をとることも出来ないから、神の使者になるかもしれないというリスクを負っても止まることは出来ないわね。他の方法で帰還したとしても使者になる可能性が消えるわけではないし、帰還せずに残った結果、使者に選ばれる可能性もあるわ」

確かに、選定の理由が明らかになっていない時点で可能性の高い低いはあっても、どれが正解かはわからない。


「委員長の覚悟はわかったよ。作戦が失敗しないように、僕も気持ちを整えておくね」


完全にフランちゃんの子守が仕事となってしまっているエドガードさん達と一緒にフランちゃんと遊んでから自室に戻る。



数日後、ルージュさん達の方も予定通り準備を終え、僕と委員長とルージュさんは王都へと向かった。

僕もファストトラベルを使わずに馬車で移動するのは、道中に国王が放った刺客がいるかもしれないので、本当に必要かは別として護衛としての役割を担っている。


エドガードさん、ケルトさん、ルイスさんの3人はブーケルに残りフランちゃんの護衛をしてもらう。

作戦の1段階目が終わった後フランちゃんにも王都に来てもらわなければならないが、今は安全なところに身を隠しておいてもらったほうが安心だ。



王都に着いたところでレイハルトさん率いる第1騎士団と、アルマロスさん率いる第10騎士団の騎士達と合流した後、作戦の最終確認を行う。


「レイハルトさん、その腕輪……」

レイハルトさんの腕には紫の石が埋め込まれた腕輪が嵌められている。


「ああ、大丈夫だ。前もって聞いていたからおかしなことにはなっていない」


「先手を打てたみたいで安心です。とりあえず僕がうまいことやりますので、その後のことで何か不明な点はありますか?」


「王都に住む者に被害が出ないように、騎士達の配置は終えている。一番危険な役回りである君が使命を果たしたにも関わらず作戦が失敗しようものなら、それは騎士として恥でしかない」


「城の中にも騎士は配置しているということで間違いないですね?騒ぎを起こすので、城にいる無関係な人が巻き込まれないようにお願いします」


「ああ、第1騎士団から多くの騎士を配置している。結果として、私が指示を出さなくとも国王から警備を厚くするように言われていたから、予定よりも多くなっている」


「それなら安心ですね、それじゃあ予定通りの時間に行って来ます。また後で会いましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る