第229話 楽々簡単レベル上げ

馬車を手配してザングから南へ進み、アリオスさんから教えてもらった遺跡と隣接している村に到着する。


まずはファストトラベルの目的地にここケルタ村が登録されたか確認し、問題ないとわかったところで目的である遺跡に入る。


アリオスさんからダンジョンへの抜け道は教えてもらって地図として書いてあるるので、それを見ながら隠し扉を開いて進んでいく。


ダンジョンへ辿り着くには遺跡を破壊しない限り隠された通路を通る必要があり、これはこのダンジョンが危険過ぎることから、誤って村の人が入らないように人為的に通路が隠されている。


それほど危険なダンジョンに人が殺到することなんてなく、獲物は狩り放題というわけだ。


ダンジョンと遺跡の境界線となる階段を降りて、地下ダンジョンへと入る。


そして、入ると同時にゴブリンとウルフの群れが襲いかかってきた。


数が多かろうと、今更ただのゴブリンやウルフに苦戦することはなく、冷静に相手の強さと行動パターンを確認してから掃討する。

ダンジョンだということもあり、やはり手に入るのは魔素だけで、魔物の死体は元々存在していなかったかのように消えた。


「数が異常なだけで、個体の強さとしては変わりなさそうだな」

魔物自体に他のダンジョンと差異が見られないことに安心する。


しかし、血に飢えた獣のように守りを考えず突っ込んでくるのは恐怖以外の何者でもない。

しかも、守りはしないのに連携だけは取れていた。

相手の命を確実に取りに来ている動きだ。


相手は死んでもぞろぞろと湧き出てくるだけだが、こちらの命は一つだけだ。

ダンジョンが出来る原理は知らないが、このダンジョンを作った人物がいるなら相当殺意を込めて作ったのだろうと肌で感じる。


考察している間にも、わらわらと魔物が集まってくる。

次はオークとスライムだ。


先程と同じく魔物自体の強さにおかしなところはなく、ただただ殺意が高い。


状況把握の為に囲まれては倒し、囲まれては倒しを繰り返したところで、十分把握は出来たとして考察を終える。


ずっと遺跡への階段近くで戦っていたわけだけど、やはり殺意が高いこと以外は他のダンジョンの魔物と変わらない。


魔物が自らダンジョンの外に出て行くことはないが、階段を僕が登って逃げようとすると、今まで見えない壁でもあるかのように階段に近付かなかった魔物達が、階段を登ってダンジョンの外まで出てくるのも変わりない。


数百体倒したけど、レベルが1さえも上がっていないのも想定通りだ。

レベルが上がっていないことは残念だけど、弱体化することで経験値が増える可能性は上がった。

こちらの力に関係なく魔物ごとに決められた経験値が貰えるなら、弱いといっても1くらいはレベルが上がっていないとおかしいからだ。


襲って来た魔物はスライム、ゴブリン、ウルフ、オーク、ボアが殆どで、ミノタウロスとキラーベアーがたまに混じっている。

外では見たことのないソードオーガという両手が剣のようになっている赤黒いオーガが3体固まって襲ってきたことがあり、他の魔物とは桁違いに強かったことを考えると、フロアボス扱いかもしれない。

出会ったのは一度だけで、強いといっても他の魔物に比べればの話で、苦戦せずとも倒すのは可能だった。


「弱体化のことを考えると深くまで潜る必要はないな」

ザングを出発する前にアリオスさんにどのくらい弱くなるのか確認する為に一度弱体化のスキルを掛けてもらっている。

アリオスさんの能力が高過ぎるのが原因かもしれないけど、ステータスは1/100程にまで低下しており、レベル一桁の時のステータスとほとんど変わらないレベルにまで弱体化した。

HPとMPは下がらなかったので、そこだけが救いだ。


安全に効率よく格上の魔物を倒す為に、最適な場所を探す。



しばらく歩きいくつか候補を見つけた後、入り口の階段に近いところを拠点と決め、細工を施し、弱体化していると想定して問題がないか確認してからダンジョンを出る。



「弱体化してもらいに来ました」

ザングにファストトラベルして、アリオスさんに弱体化のスキルを掛けてもらい、すぐにケルタ村に戻る。


「ディレイ、反魂!」

時間との勝負でもあるので、寄り道せずにダンジョンに向かい、ダンジョンに入った瞬間殺されても復活出来るように発動を遅延させて反魂のスキルを使いつつ、階段を降りてすぐのところに取り付けておいた梯子を登り、投擲による攻撃を受けながらも、壁に打ち込んでおいた杭を足場にして、落ちないよう注意しながら目的の場所まで急いで移動する。


この階層に空を飛ぶ魔物がいないことは確認済みだ。

下を見ると地面を埋め尽くさんとするばかりに魔物が集まって来ているが、弱体化した状態で飛び込めば一瞬で肉片にされることはわかっているので挑んだりしない。


目的の場所は階段から見える程に近い場所の岩壁で、少しだけ出っ張りがある天井近くだ。


人1人がギリギリ立てるくらいのスペースしかなかったが、あらかじめ足場を補強して広げてあり、近接攻撃が届かないところに維持出来るようにしてある。


「ヒール!」

まずは投擲により受けたダメージを回復して、ブラッドワンドを足元に突き刺してウエポンスキル『血の池』を発動する。

杖からドバドバと流れ出た赤い水は魔物達に降り注ぎ、魔物は血の池に浸かることになる。


HPは高くても、DEFが低下したことでダメージ自体は大きいので、まずは回復手段の確保が先決だ。


後は魔物達の頭上から、拾っておいた石を投げたり、魔法を放っていれば安全に討伐は終わる。

攻撃しなくても血の池の効果で魔物は自動的に消滅していくけど、弱体化している間に少しでも多くの魔物を倒す為に攻撃は行う。


相手が出来る攻撃は矢を射る、石を投げるの2種類だけで、遠距離攻撃の手段をもっていない魔物はわーわーと威嚇することしか出来ない。

石が当たれば痛いし、矢の刺さる位置によっては致命傷になるけど、血の池が吸ってくる生命力の方が遥かに大きいので、僕のHPが尽きることはない。

胸に矢が刺さろうと、刺さった瞬間に傷が塞がるのだから死にはしないはずだ。

流石に怖いし痛いから試しはしないけど……。


下見の時に出会っていない魔物がいるかもしれないので警戒は解いていないけど、ここから殺される未来は正直見えない。


弱体化のピークが1時間程というだけなので、3時間程一方的に魔物を狩り続けてダンジョンを出る。

出る頃にはステータスもほとんど戻ってきており魔物達はただの雑魚になっていたので、外に出てこないように適当に蹴散らしておく。


ステータス的に格上な相手を倒す為に考えて準備はした訳だけど、これの何が経験になるのか聞かれると疑問符が浮かぶ。

しかし、格上を倒したことには変わりないようでちゃんとレベルは3も上がっていた。


「今日はここまでにしてノワールに会いに行こ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る