第185話 辿り着いた真実

コンコン!とノックする音が聞こえる。


「開いてるよ」

部屋で待っていると、委員長ではなくヨツバが入ってきた。


委員長に聞かれるかもしれないし、音だけ遮っておくか。

僕がみんなを殺したことはバレているみたいだから、今更音を遮ることが出来ることを知られても、何も影響はないだろう。


「何の用?」


「昨日、改めて占いをしてきてもらったの。みんなの前では聞きにくいことを占ってもらいたかったから」

やっぱりその件か……。

結果はさっき神下さんから聞いているけど、僕に言いにくるとは思っていなかった。

言ったところで僕の答えは変わらないと思っているだろうから。


「そうなんだ」


「さっき委員長も聞いてたけど、クオンはあの占いを信じているんだよね?」


「そうだね。矛盾しているところも解釈の仕方かなとは思ってるよ」


「あの子は桜井君が死んでるけど、生きてるって言ってたよね?」


「言ってたね」


「あれって、一度死んだ人が生き返ったからああいった結果が出たのかなって思ったの」


「それだったら、死んでるとは占いに出ないんじゃないかな」


「うん。私もよく考えたら違うなって思ったんだ。だから、私が生きてるのか占ってもらったの」


「面白いことを聞くね。それで結果は?」


「生きてるって結果の他に、生まれてないっていう結果も出たよ。生まれていないっていうのは、何か違う解釈があるのかもしれないけど、私が2人存在しているのかなとは思うのね」

肉体に魂が宿ることを生まれると解釈することも出来る。

ネロ君のはあくまで占いであって、カードに当てはまる内容を、質問に置き換えてネロ君が解釈しているだけだから、こういう結果になるのも納得だ。


普通と違うのは、正解のカードしか出てこないということだけ。


「それは驚きの結果だね」


「あんまり、驚いていないように見えるけどね」


「想定の範囲内の話ではあるからね」


「それで、私が死んだらどうなるか占ってもらったの。そしたら、私にとって懐かしいところで生まれ変わるって言われたよ。それは、こことはとても遠いところだって」


「そうなんだ」


「前にも聞いたけど、やっぱり死んだら元の世界に帰れるんじゃないの?こっちの世界で死ぬと、元の世界で生き返るってことだよね?理由はわからないけど、遺体はこの世界から消えるわけじゃないから、この世界で死んでるって結果と元の世界で生きてるって結果が出たんだよ」

これは、僕が話したわけではないから多分セーフかな。

僕が全く関わっていないといえば嘘になるけど、占い師に帰還方法を占ってもらうというのは、正規ルートの一つである気がする。

それに、ヨツバが占ってもらったのは昨日のことだ。アウトなのだとしたら、さっき神に会った時に何かしらアクションがあってもおかしくない。


「確かにそう解釈出来る占いの結果だね」

そうとしかとれない占い結果だ。


「クオンがみんなを殺しているのも、死ねば帰れるって知ってるからだよね?まだ私とイロハちゃん、それから委員長がクオンに殺されてないのは、すぐに帰りたくないって意思表示したから。だから、桜井君と平松さんはあそこで手を挙げたから殺したんでしょ?」


「僕の答えは変わらないよ。死んだら帰れるなんて夢物語を僕は知らない。さっきの占いも、輪廻転生っていうんだっけ。そんなに都合のいいものではなくて、他の命として生まれ変わるってことじゃないのかな。それがたまたまヨツバの懐かしい場所なんだろうね」

苦しい言い訳だと思う。


「何か言えない理由でもある?」


「そんなのはないよ」


「あったとしても言えないよね。私にはあの子の占いが本当に合ってるのか確かめる方法はないけど、クオンも委員長も確定事項のように信じているから、合ってると思うんだ。それから、私は特殊で、普通は死ぬ場合の占い結果は違うカードが出るって言ってたよ」


「そうなんだ。僕が知らないだけで、死んだら元の世界に帰れるのかもしれないね。僕が向こうに帰っている時に誰とも再会してないけど、僕が帰っている世界が、あの神様が作った偽物という可能性もあるのかな」

先に神下さんからヨツバとネロ君のやりとりを聞いているから、無理矢理ではあるけど誤魔化しの言葉は出てくる。


「それで、それを僕に言ってどうするの?」


「ここまで証拠を並べれば本当のことを話してくれるかなって思ったから。それから、クオンが良いことをしているのか占ってもらったら、良いことをしているって言われたよ。私が思ってたことと同じ結果で安心した。それだけ。それじゃあ部屋に戻るね」

わざわざ言いにきたのは、真正面から向き合ってくれたってことかな。


しかし、委員長は僕のことを聞いて悪だと答えられ、ヨツバは良いことをしていると言われた。

やはり、ネロ君の占いは聞き方に対してストレートに返ってくるってことか。

委員長は僕が悪かどうか聞いた。もし、善かどうか聞いていれば、善だと返ってきたかもしれない。

少なくても、この世界ではバレていないだけで大量殺人犯だ。悪という結果が出るのは当然だ。


的中率100パーセントでも、聞き方と捉え方を間違えるとドツボにハマりそうだな。

鵜呑みにしすぎないように気を付けよう。


「話してくれてありがとう。委員長が話が終わるのを待ってると思うから、呼んでもらえる?」


「わかった」

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