第150話 side 神下える⑤

何の進展も無いまま、クオン君が言っていた1ヶ月が過ぎてしまった。


クオン君が私の言うことをずっと守ってくれる気がないことはわかったので、私は今度は委員長の所に行くことにする。


委員長はクオン君に会わないようにしてくれるって言ってくれて、クオン君が騎士団に行った時も隠れてくれた。

でも、クオン君が隠れて会いに行ってしまい、結局委員長はクオン君と話すことを選んでしまった。


幸いなことに、クオン君は委員長には手を出さずに帰っていった。

私の行動についてもわかったって言ってたし、もしかしたら私を殺せる人を探す協力をしてくれるのかもしれない。


そう思った私が馬鹿だった。


クオン君は殺しを再開するようだ。

何も分かってはくれていなかった。


色葉ちゃんがクオン君のことを疑い始めてるし、どうなるかが全く読めない。


ただでさえ困ってるのに、問題が増える。

安本さんが死んでから短期間でクラスメイトの皆んなが死にすぎている。


要因を探しつつクオン君の監視をしていると、クオン君が狩谷君に襲われそうになる所を目撃した。

狩谷君の後を追い、平山君を殺す所を目にする。


クオン君は死ねば帰れることを知ってて、善意で殺しているけど、狩谷君は違うようだ。


平山君の処理をした後は狩谷君の動向を伺うことにする。

クオン君もだけど、それ以上に狩谷君は無作為にクラスメイトを殺しすぎている。

どうにかしないといけない。


狩谷君はクオン君を狙っているみたいなので、狩谷君の処理はクオン君に任せることにして、見守ることにする。

クオン君は負けないだろう。


そう思っていたけど、クオン君は窮地に追いやられる。

不意を突かれて、お腹にポッカリと穴が空いてしまった。


神力を使って助けるか迷っているうちに、クオン君は自分で傷を治した。

クオン君は死にそうな怪我を負っても冷静だった。

怪我を治しつつ、狩谷君から情報を集めている。


このままクオン君が狩谷君を殺して退場させてくれるかと思ったけど、クオン君は狩谷君を見逃した。


神様から私が手を下すことを今は禁じられているので、私が殺すことが出来ない。

天使でなくなったら、制限を解いてくれると言っていたけど……。


本当に困った。

このままでは、誰かが死ぬ度に神様から対象だったと言われないか心配だ。


どうしようか……。

委員長に狩谷君がクラスメイトを殺して回っていると伝えるのがいいかな。

そうすれば委員長が捕まえるなり処刑するなりしてくれるかもしれない。

少なくとも委員長の所にいる人は守ってくれると思う。


『委員長に狩谷君がクラスメイトを殺していることを教えてもいいですか?』

私は神様に念話を飛ばす。


『いいよ』

軽い返事が返ってきた。


『クオン君が殺していることも言っても良いですか?』


『ダメだよ。前にも言ったよね?』


『変わってないかと聞いただけです。ありがとうございます』

やっぱりクオン君のことはダメらしい。

真実を知っているか否かの違いかな。

それか、私みたいに何かクオン君には神様が別の制限とか、役割を与えているのかもしれない。


やることは決まったので、委員長の所にまた行くことにする。


前回同様、同じミスをしないように委員長が帰ってくるのを確認した後、委員長の部屋の中に姿を現す。


「急にごめんね」

私は部屋に入ってきた委員長にまずは謝る。


「……驚くから前もって言ってくれたりはしないのかしら」


「ちょっと難しいかな。ごめんね」


「まあ、いいわ。私も先に謝っておくわね。斉藤君に会っちゃったわ」


「会わないようにしてくれてたのは知ってるからいいよ。私もクオン君が委員長に会う為にあそこまでやるとは思ってなかったから責められないよ」


「今日は何の用なの?急いでないなら先に聞いてもいいかな?」


「そんなに時間はないけど、少しなら大丈夫だよ」


「斉藤君から神下さんは天使だって聞いたんだけど本当なの?」

クオン君が委員長にバラしちゃったから……。


「……本当だよ。最初にもらったスキルの影響で天使になっちゃったよ」


「前に神下さんは特殊だから帰れないって言ってたでしょ?それって天使ってことが特殊なの?」


「そうだね……」


「それなら、前に念話をしていた相手はあの神様になるのかしら」


「……念話の相手については何も教えられることはないよ」


「そう。仮にあの神と話が出来るなら文句を言っておいて」


「わ、わかった」

怖くて文句なんて言えないよ。


「それで神下さんの用は何かな?」


「注意して欲しいことがあって、それを伝えに来たんだよ」


「今日は頼み事ではないのね」


「頼み事でもあるかな。狩谷君はもちろんわかるよね?」


「ええ。今日は斉藤君じゃないのね」


「クオン君にも相変わらず困らされてるんだけど、今は狩谷君だよ。狩谷君がクラスの皆んなを殺してるんだよ。だから委員長もだけど、保護している皆んなが殺されないように守って欲しいんだよ」


「え?……狩谷君はなんでそんなことしてるの?」


「狩谷君が言うには、私達はバトルロワイヤルをやる為にこの世界に連れてこられたみたいだよ。最後の1人になる為に他の人を殺すんだって」


「意味がわからないのだけれど、私達はそんな理由でこの世界に連れてこられたの?」


「真意は私にもわからないよ。でも、このまま狩谷君が皆んなを殺してたら、私が探してる人も殺されちゃうかもしれないし、騎士団で保護している人は委員長に守って欲しいなって」


「それはもちろんだけど、神下さんが狩谷君を止めることは出来ないの?私の推測だけど、透明人間みたいな感じで私達の行動を隠れて見てたりするんじゃないの?そのまま隠れて捕まえたり出来ないの?」

さすが委員長。

少ない情報から私の存在がどんなものか的確に導き出している。


「残念だけど私には難しいかな。委員長は透明人間って言ったけど、姿が見えない時は位相がズレた所に私はいるんだよ。天使にはそっちのズレた位相の方が本来の次元で、接触出来るように力を使って無理矢理こっちに来てるの。だから、姿を隠したまま捕まえたりは出来ないんだよ。それに私は力が弱いから、正面から狩谷君と戦っても捕らえることは出来ないよ」

神から制限が掛かっているのとは別に、私は戦う力を持っていない。


頼ってばかりで自分が情けなく感じる。


「……そうなんだね。神下さんが探している人はまだ見つからないの?」


「見つからないよ。手掛かりが全然ないんだよ」


「早く見つかればいいね。見つかったら私は最後でいいから、他の人を元の世界に帰してあげて」


「うん。委員長はスゴイね。それじゃあそろそろ消えちゃうから、またね」

そろそろ顕現出来なくなるので、別れを言う。


これで時間稼ぎくらいにはなっただろうか……

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