第149話 説明

刺客が狩谷君だったとわかり、返り討ちにして近づかないように契約させて放逐したので、とりあえずは以前と同じレベルの安全は得られただろう。


カリュブディスも忘れているうちに倒していたけど、狙ってたのが狩谷君だったなら、盗賊を討伐してもよかったな。


やってみないとわからないけど、カリュブディスを釣り上げるよりは盗賊を討伐する方が楽だっただろう。


というか、あれだけ苦労してカリュブディスを倒したのに、ドロップしたのは水の魔石1つとかしけてるな。


とりあえず冒険者ギルドに行き、ギルマスにカリュブディスを討伐したことを報告することにする。


「カリュブディスを討伐しました。作戦通り釣り上げることが出来ましたので、トドメを刺しておきました」

僕はギルド証を渡して倒したことを証明する。


「感謝する。釣り上げたのは見えていた。あれだけの音を立てれば誰でも気付くからな」

岩が海に落ちた音が鳴り響いていたからね。

そりゃあ気付くか。


「もしかして、釣り上げた後のことも見えてましたか?」

狩谷君とのやり取りも見られていたりするのだろうか……。


「急にカリュブディスが消えたことか?」


「それは僕のスキルによるものです。崖の上であまり見られたくないスキルを使っていたんですけど、誰かに見られたりしてないですかね?」


「一応、危険だからという理由であの辺りは立ち入り禁止にしていたから、誰も近くにはいなかったはずだ。街からはカリュブディスは見えたが、君の姿は見えなかったな。カリュブディスもすぐに消えてしまったから、何が起きたのか気づかなかった者の方が多いくらいだろう」

狩谷君のことも見られてなかったかな。


「そうですか。それはよかったです。これで船が出ますか?」


「他の個体がいないか確認したら、運航再開するだろう」

これでこの街から出られるな。


「盗賊の方はどうですか?」


「変わらずだが、これで他の支部に連絡が取れる。時間は掛かるかもしれないが、なんとかなるだろう」

なら無理して倒しに行く必要はないな。


「そうですか。では、これで失礼します」


「君のおかげでなんとかなった。ありがとう」

ギルマスに改めてお礼を言われた後、宿屋に戻る。


「本当に釣り上げたな。半信半疑で手伝っていたけど、成功してよかった。ここからだとよく見えなかったけど、倒したんだろ?」


「倒したよ。釣り上げてしまったら、ヘルハウンドよりも弱かったよ。冒険者ギルドに寄ってきたけど、別の個体がいないか確認したら船も出るだろうって」


「準備ばかりしてたけど、クラスメイトは見かけなかったな。冒険者ギルドに委員長のメッセージも貼ってあったし、いたとしても移動したのかもな。これからどうする?」


「少ししたら漁船も動き出すと思うんだよね。そしたら海鮮料理も食べられると思うし、それまでは観光したいかな」

本来の姿のこの街の観光はまだ出来ていない。


「それまでこの宿に泊まり続けるのか?金はあるのかもしれないけど、流石に贅沢しすぎじゃないか?」


「え?ああ、そうだね。わざと1人で歩いたりもしてるけど狙われないし、そろそろ普通の部屋でもいいかもね」

狩谷君に狙われる心配は無くなったし、他の人に狙われる可能性が無いわけではないけど、ここまでする必要はなくなっている。


話し合った結果、宿屋を変えることになった。

ヨツバとイロハは相部屋で部屋を借り、桜井君と僕は別で部屋を借りる。


何かあった時のために、今後は僕も部屋は借りておくことにしたくらいで、以前とあまり変わらない。


「クオン、今大丈夫?」

寛いでいたらヨツバがやってきた。


「大丈夫だよ」


「聞きたいことがあるんだけど、なんで宿屋を変えることにしたの?」


「ずっと襲われてなかったから、この街に刺客はいないのかなって話にさっきなったよね?ヨツバはあの宿屋にもっと泊まりたかった?」


「さっきは言わなかったけど、クオンにしては珍しいなって思ったんだよ」


「なにが?」


「あの部屋に泊まるときにイロハちゃんに言ったけど、クオンは頑固なんだよ。自分では気付いてないかもしれないけど、狙われている可能性が減ったとしても、少しでも残ってるなら気を抜かずにあの部屋に泊まり続けると思うんだ。お金がないとか、他の理由があるなら別だけど、そろそろいいんじゃないかみたいなふんわりとした理由では意見を変えないはずだよ。だから、他に理由があるのかなって思っただけなんだけど……」

うーん、確かに狩谷君のことを知らなければあの宿屋に泊まり続ける判断をしたかもしれない。


でも、ヨツバが不思議に思うほどあの宿屋に固執したかな……?


「そんなに不思議?」


「うん。何かあった?クオンの中で危機は去ったと判断出来る何かが起きたんじゃないの?」


「……まあ、話してもいいか」


「やっぱり何かあったんだね」


「さっきカリュブディスを釣り上げた時に襲われたんだよ。それで返り討ちにした。平山君を殺したって確認が取れたから、危機は去ってるよ」

どこまで話すか悩むけど、半分バレているみたいだし、平山君を殺したのが僕でないとちゃんと説明出来るから話してもいいかな。


「怪我とかしてない?」


「不意打ちは食らったけど、なんとかね。回復魔法で完治してるよ」


「無理矢理でも私も付いていけばよかった。でも、それならなんでそう言わないの?言えないような相手だった?」


「ショックが大きいと思うから2人には言わないでね」


「……うん。わかった」


「襲ってきたのは狩谷君だったよ。平山君もだけど、小早川さんも殺したって言ってたよ。他にも数人殺してそうな口振りだったね」


「覚悟してた話よりもずっと重いよ……」

ヨツバはクラスメイトが犯人の可能性があることは分かった上で聞いてきたのだろう。


それでも、犯人どころか既に何人も殺しているとは思ってなかったようだ。


「だから話さなかったんだよ」


「返り討ちにしたって言ったけど、クオンは狩谷君を殺したの?」


「殺してないよ」


「衛兵に引き渡したんだね」


「引き渡してないよ」


「え?」


「なんだか、バトルロワイヤルだ!みたいなことを言っててね、殺した相手とスキルを交換出来るのがその証拠だって言ってたよ。交換できる話は前に話したから知ってるよね?」


「うん、それは覚えてるけど、何を言ってるのかわからないよ」


「僕もわからないよ。こんな世界に連れてこられて頭がおかしくなったんじゃないかな」


「そうかもしれないね。それでどうしたの?」


「僕達と10km以上近付かないって約束させて、逃した。サラボナさんに水の魔石を売った時の契約する魔導具でね。だから、狩谷君が近付いたらこれが光るからすぐにわかるよ」

僕は見えるところに置いておいた魔道具を指差しながら話す。


「……逃したの?」


「僕の中で狩谷君は殺す対象じゃなかったんだよ。だから殺さない。それから、クラスメイトを探して殺して回っている狩谷君を衛兵に引き渡したら面倒なことになるのは目に見えている。だから衛兵にも引き渡さない。そういうことで逃すことにしたよ」


「クオンもクラスメイトを探して殺して回ってるよね?同じ理由じゃないの?」


「僕はあんなトチ狂った理由で殺してないよ。そもそも、同じような話をしたら信じなかったのはヨツバだよ。スキルが欲しいから殺してるって嘘を言ったら信じなかったよね?」


「そうじゃなくて、狩谷君が嘘を言ってて、本当はクオンと同じ理由で殺してるみたいなことはないの?」


「どうだろうね。僕にはわからないよ」


「そっか。そうだよね」


「とりあえず宿屋を変えてもいいって言ったのはそういった理由だよ」


「教えてくれてありがとう。もう一つ聞いてもいい?」


「答えられることなら」


「狩谷君を逃したら他の皆んなを殺すかもしれないよね?わかってて逃してるよね?そうさせない何かはしたんだよね?」


「もちろんわかってはいるけど、何も対策はしてないよ」

帰りたい人は狩谷君に殺されれば結果的には良いことだし、帰りたくない人が殺されたとしても、それは僕の知るところではない。

帰りたくないなら、狩谷君のことじゃなくても、異世界人ってことで狙われる可能性はあるんだから、やられないように力を予め付けておくべきだ。


僕は帰りたい人を殺してまわっているのであって、帰りたくない人の手助けをする為に探しているわけではない。


無下な扱いをしていないだけだ。


「クラスの皆んなが死んでもいいって言うの?」


「死んでもいいっていうよりは、近くにいない人のことまでは面倒見きれないって感じかな」


「そっか。クオンはそうだよね」


「他に聞きたいことはある?」


「ないよ。何も答えてくれないかなって思ってたけど、教えてくれてありがとう」

ヨツバは自分の部屋へと戻っていった。


あの説明で納得するなんて、ヨツバからどう思われているのかが少しわかった気がする。



◆◇◆◇◆◇◆◇


ご愛読頂いている皆さんに一つアンケートを取らせてください。


4作品も完結させずに執筆中としている作者に原因があるのですが、全てをハイペースで執筆することは、今の生活では難しいと痛感しています。


最新話のPVの数字を見て、現在は『クラス転移したひきこもり・・・』の作品を多めに投稿出来るように、書き溜めるストックを調整していますが、投稿ペースが早い作品がPVが多くなる傾向でもあるので、実際にどの作品を皆さんがもっと読みたいと思っているのかを知りたいです。


全体の執筆ペースを上げることはなかなか難しいですが、「この作品の投稿ペースをあげてくれ!」という要望が多い作品を多く投稿したいと思っています。


①『クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される』


②『イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・』


③『クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです』


④『天職が『盗賊』という理由で追放されました。盗みを極めし男はやがて魔王と呼ばれる』


⑤その他(新作が読みたい。投稿ペースを揃えて欲しいなど)


数字だけで結構ですので、コメントで教えて下さい。

作者のモチベーションにも繋がりますのでよろしくお願いします。

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