第139話 配分
「素材の分配ですけど、どうしますか?」
スカルタに帰りながらエアリアさんに確認する。
「買い取るって話よね。正直戦ってないから貰いにくいわね」
「僕が手を出さないで欲しいと言ったからなのでそこは遠慮はいらないですよ。通常なら手に入ったはずの素材の価値が僕にはわからないので聞いているだけです」
「……水の魔石ももらってるし、やっぱりいらないわ」
エアリアさんは考えた後いらないと言った。
「うーん、あ、ならこれをどうぞ。便利アイテムです」
「杖ね。何かこれも特殊だったりするのかしら?」
「治癒魔法が使えるようになる杖です。多分フレアさんなら使えると思います」
ヨツバが使えなかったので余っていた杖を渡すことにする。
「魔導具を組み込んだ杖ね。治癒が出来るものは見たことがなかったけど、もらっていいの?」
「元々はヨツバの為に作ったんですけど、ヨツバには使えなかったのでどうぞ。あまり効果は高くないですけど、パーティに治癒魔法が使える人がいませんよね?」
「君が作ったのか?」
「そうです。なので探してもどこにも売ってませんよ」
「君は多才だね。貰いすぎな気がするけど頂くわね」
「僕からもらったことは秘密にしておいて下さいね」
分配も終わり、後は街に戻るだけだ。
スカルタに戻り、サラボナさんにエアリアさんが依頼報告をする。
「それなら仕方ないわね。無事に戻ってきて良かったわ」
「私達は見てただけで危険はなかったわ。バーゲストもクオン君が1人で倒したのよ」
「……Dランク冒険者にしておくのは惜しいな。本部に通達を出せば特例でAランク冒険者になれるかもしれない。どうする?本気ではなかったとしても私に勝ったんだ。それも考慮されるだろう」
昇格したばかりなのに、一気に上げてくれるらしい。
「え!?模擬戦をしたようなことは言ってたけど、姉さんが負けたの?」
エアリアさんが驚く。
「サラボナさんは本気を出してませんでしたよ。それから、冒険者として上は特に目指してないので大丈夫です。それにバーゲストは状況がよかっただけです」
いい話ではあるけど、目立ちたくはないので遠慮しておく。
「姉さん、どこまで見せたの?」
「別に構いませんよ」
サラボナさんがこちらを見たので、話してもいいと答える。
「彼の武器から赤い水が出てきてね。浸かっていたら近付けずにいるうちに力が抜けてきたのよ。だから彼の後ろに回って終わらせようと思ったら、何故かバレてたわ。それで降参して終わりよ」
「アレを使ったってことよね?」
「ええ、そうよ。ブランクもあるけど、負けるとは思ってなかったわ。ギルドを壊さないようにしていたってことを除けば、結構本気だったのにショックだわ。次やったら負けないけどね」
「姉さんのスキルが初見で見破られるなんて考えられないわ。なんで見破れたの?」
エアリアさんは信じられないようだ。
あれは初見殺しだと僕も思う。
影移動のスキルがあって、僕の背後に影が出来る立ち位置だったから、予想が出来ただけだ。
「サラボナさんがあのスキルを使えることは知ってました。だから予測が出来ました。サラボナさんは僕が知っているとは気付いてなさそうなので、背後だろうと。なんで知っていたかは秘密です。対人戦は情報がかなり重要です。サラボナさんが言った通り、多分次は負けます」
簡単に負けるつもりはないけど、血の池も対策されるだろうし、絡め手を使うにも警戒をされている。
多分勝てないだろう。
「私も1度手合わせして貰おうかしら」
エアリアさんが言う。
「勝てる気がしないので勘弁してください」
「姉さんとは戦って私は拒否するのかしら?」
「サラボナさんのは断れなかっただけです。どうしてもと言うなら構いませんけど、さっきも言った通り僕がすぐに負けて終わりですよ。勝てるビジョンが浮かびません」
エアリアさんのレベルはサラボナさんより低い。
次元斬みたいなヤバそうなスキルはないけど、逆にいえば模擬戦でも使える使い勝手の良さそうなスキルが揃っている。
サラボナさんは一撃が強うそうなスキル構成の近距離特化型をしていて、エアリアさんは近距離から中距離までいけそうなスキルをしている。
近付かれないことに注視すればいいサラボナさんよりも、エアリアさんの方が僕には厄介だ。
次元斬だけは近距離なのか遠距離なのかわからないけど……。
「まあ、無理強いはしないわ。話を戻すけど、遺跡はどうするつもり?」
エアリアさんは引いてくれるようだ。
ある程度力が均衡してないと面白くないからね。
「エアリアの予想通りよ。領主に投げるわ。遺跡の最深部にはお宝が眠ってるかもしれないけど、遺跡というよりは地下洞窟みたいな感じだったわけよね?」
「そうね。部屋みたいに区切られてはいたけど、何もない空間がいくつもくっ付いているだけだったわ」
「それなら、うまみは少ないわね。一応遺跡内でお宝が見つかった場合の分配に関しては交渉するけど、最終的には遺跡に関する利権を全て譲渡する代わりに情報を買うように話をもっていくわ」
「利益は取れそう?」
「遺跡を見つけた冒険者への情報料とあんた達の報酬くらいしかお金は使ってないからね、損はしないはずよ。金貨3枚くらい利益が出るように交渉してみるつもり」
情報に結構な額を出させるつもりのようだ。
「少しの間はこの街にいるから何かあれば声を掛けて。なんでもではないけど、力にはなるわ」
ギルドを後にして、エアリアさん達と別れた後、みんなが泊まっている宿屋へと行く。
「おかえり。思ったより時間が掛かったね」
まずはヨツバとイロハが泊まっている部屋に行き、ノックするとヨツバが出てきた。
「そうだね。でもおかげで大分レベルが上がって出来ることが増えたよ」
「治癒士として付いて行ったんじゃないの?」
「問題なく倒せそうで、武器の性能を試すのにちょうど良かったから戦わせてもらってきたよ」
「そうなんだ。クオンが出ているうちにこっちも色々とあったんだけど、もう桜井君から聞いてる?」
「何も聞いてないよ」
「桜井君の方の部屋に行った方が話が早いかも知らないけど、平山君を見つけたよ」
またクラスメイトか。
神は何もしてないと言ったのに。
神がどうとか関係なく惹かれあうようになってたりするのだろうか……。
「どうやって見付けたの?」
「平山君は冒険者だったよ。クオンが遺跡に行ってから10日くらいかな、依頼の報告の為にギルドに行った時に見付けたよ」
「それで今はどうしてるの?」
「委員長のメッセージを知らなかったから教えてあるけど、どうするか迷ってるみたいだね。ある程度稼げてはいるみたいだけど、余裕があるわけではないみたいだから、桜井君と相部屋で泊まってるよ。だからそっちの部屋に行けばいると思う」
「なら依頼も一緒に受けてるの?」
「平山君は戦えないわけではないみたいだけど、採取とか街の雑務をメインでやってるんだって。だから別の依頼を受けてるよ」
「そっか。会ってきた方が早そうだし、桜井君の方に行ってくるよ」
平山君って誰だったかな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます