第134話 再会

「僕の方はさっき帰ってきて依頼達成したけど、ヨツバと桜井君はどんな感じ?間に合いそう?」

街に戻った日の夜、夕食を食べつつ2人の進捗を聞くことにする。


僕は村までの往復に時間が掛かっただけで、4日で終わった。

試験は依頼を受けた日の翌日からとしてくれたので、後6日ある。


「私は後少しかな。5kg採取しないといけないんだけど、大体3kgは採取してギルドに渡してあるから、後2kgだよ。たまに採取中に魔物に邪魔されるけど、倒せないことはないし、問題ないかな」

ヨツバはやはり問題ないようだ。


サボテンは根っこから採取するように書かれていたので、採取し終わるのに少し時間が掛かる。

その間に魔物が寄ってくる可能性はあるけど、大体はサンドスライムかサンドウルフだろうから、問題ないと思っていた。


倒せない魔物が襲ってきたとしても、採取を諦めて逃げればいいだけだ。


魔物に襲われる危険があるからDランクの依頼というだけで、テトラサボテン自体はそこまで探さなくても自生しているようなので、比較的簡単な依頼だと思う。

街から少し離れないと生えていないのが面倒なだけだ。


「俺はまだ2匹しか倒せてない。5匹倒さないといけないんだが、間に合うかわからない」

やっぱり桜井君は苦戦しているようだ。


桜井君の受けたサンドワーム討伐依頼は常設依頼で、1匹討伐するだけで報酬が出る。

報酬は1匹ごとに出るけど、依頼の達成件数は5匹倒す事に1件としてカウントされる。


「サンドワームが見つからないんだね?」

つまり、ギルドとしては見つけたら倒してと言っているのだ。

探しに行ってきてとは言っていない。


常設依頼だから達成するまでの期限もなく、失敗しても違約金もない。

他の依頼を受けている時に“ついでに”見つけたら倒してという意味だ。


サンドワームが沢山いるなら1匹ごとに報酬は出さないだろう。

ギルドとしてもある程度まとめて報告してくれた方が楽だからだ。


だからスライムは、ゼリーの買取はしてくれても討伐報酬は1匹倒してもくれない。

探せばいるのだから、10匹単位で討伐報酬を出している。


サンドワームがそう出来ない理由は、数が少ない、又は探すのが困難だからだということが予想出来る。


「そうなんだ」


「なんとかなりそうかな?」


「いそうな所を片っ端から探すさ」

うーん、1人でやらないといけないみたいだけど、どこまでなら助言してもいいのだろうか?


今までも足で稼いで探していたはずだ。

その結果が4日で2匹。

ギリギリ間に合うペースだけど、ダメかもしれない。


本当なら、サンドワームが住処としているだろう場所を調べて、目星をつけてから探しに行くべきだ。

それか、サンドワームの好物を調べて誘き寄せるか。


「それだと間に合うかわからないよね?僕ならこうするって案はあるけど、どこまで教えていいのかわからないから明日の朝に一緒にギルドに行こうか」


「……ああ、悪いな。助かる」


翌日、桜井君とギルドに行くと、懐かしい人達と再会した。

なんでここにいるのかわからないけど、とりあえず桜井君をサンドワーム探しに行かせないといけないので、「また後で」と言って先に受付へと向かう。


助言の内容を桜井君には聞こえないように、受付で言ってもいいか確認したら、もっと濁せば許してもらえることになった。


「足で探す前にやることがあると思うよ」


僕はこれなら言ってもいいと言われ、桜井君に伝える。

桜井君に意味が伝われば、問題なく達成出来るだろう。


僕は桜井君を見送ってから、待たせてしまっていた人達の所に行く。


「お待たせしました。久しぶりですね」


「久しぶり。こんな所で会うなんて奇遇ね」


「そうですね。エアリアさん達はどうしてこんな砂漠の街にいるんですか?僕はいろんな街を周っていた途中です」

何故かアリアドネの人達がギルドにいた。

エアリアさんとクリスさんとニーナ以外に2人いる。

多分僕が会っていないアリアドネの人だと思う。


「王都に用事があってね。どうせなら知り合いの顔を見ようと遠回りしながら帰ってるのよ」

王都に行く為に拠点を離れていたようだ。


「ヨツバちゃんは?さっきの人と今はパーティを組んでるの?」

ニーナに聞かれる。


「今Dランクの昇格試験中で、ヨツバは1人で依頼を受けてるよ。さっきのハルト君と3人でパーティを組んでるんだ。もう1人同行者がいて今は4人で行動してるよ」


「まだEランクだったのか?」

エアリアさんに聞かれる。


「ずっと冒険者活動をしていなかったので……。あ、僕は昨日Dランクになりましたよ」


「それでどうやって食いつないでいたんだ?クリスの借りは返しきれてなんていない。足りなければ遠慮なく言ってくれて構わないからね」


「ありがとうございます。でも大丈夫です。他でたまたまお金を得ることがあって、今はお金に困ってません。別件でもお金を得たので、魔法学院に行ったり、温泉地に行ったりしていて依頼を全然受けていなかっただけです」


「それならいいが遠慮はするなよ」


「遠慮はしてないので大丈夫です」

今は自分でもびっくりするくらいの金持ちだ。


「ここで会ったのも何かの縁だ。酒に付き合ってくれないか。急ぎの用があるならしかたないけど」


「……僕は空いてますけど、エアリアさん達はいいんですか?依頼を受ける為にギルドに来たんじゃないんですか?」


「違うわよ。明後日依頼を受けることになってるからその確認に来ただけよ。すぐに話は終わると思うから少しだけ待っててね」


「わかりました」


僕は椅子に座ってエアリアさん達が戻ってくるのを待つ。


「待たせちゃってごめんね」


「何か問題ですか?」

すぐにと言っていたけど、しばらく待っていた気がする。


「ちょっとね。まあ、気にせず飲みましょう」


「どこに行きますか?ヨツバが依頼から戻ってきたら合流出来るようにギルドに伝言だけ頼んできます」


僕はエアリアさんから酒場の名前を聞き、伝言を頼んでからギルドを出る。

前みたいに捕まるかもしれないけど、この後は特に何も予定はないからいいか。


捕まるの覚悟で付いて行ったけど、久々に会ったということもあり、話も盛り上がり、以前と違って苦痛ではなかった。


一つわかった。

エアリアさんはクリスさん達が一緒にいると飲み過ぎない。

いや、飲ませてもらえない。

これも苦痛に感じない大きな要因だろう。

あの時は同じ話をループして聞かされていたから辛かっただけだ。

エアリアさんと一緒にいるのが苦痛だったわけではない。


途中でヨツバも合流してさらに盛り上がる。


「あ、こっちです」

エアリアさんが入り口に向かって手を振る。

誰かと合流する予定だったようだ。


「お前達知り合いだったのか」


「エアリアさんの知り合いってサラボナさんだったんですか?」


「姉さんは私達の元リーダーよ」

エアリアさんが言う。


「そうだったんですか?」


「そうよ。元々アリアドネは姉さんのパーティだったのに、冒険者を辞めてギルド職員になっちゃったのよ。その後を私が継いだの」


「なんで冒険者を辞めちゃったんですか?」

変なことを聞いた気はしないのに、空気が変わった気がする。

もしかして、踏み込んではいけないただならない事情があったのかな。


「この街に好きな人が出来たのよ。結婚する為に引退したの」

サラボナさんが恥ずかしそうに言った。

なんだ惚気話か。


「もー、なんで私にはいい男が現れないのよ。おかしいわ。姉さんと私で何が違うのよ。私の方が若いのに!」

エアリアさんが憤慨する。


「なんですって……」

サラボナさんがエアリアさんを鋭い目で見る。

あー怖い、怖い。僕は関わらないように気をつけよう。


「いえ、なんでもありません。それよりも依頼の方は見つかりそうなの?」

エアリアさんが無理矢理話を変える。


「難しいな。1人可能性のある人物を見つけたと受付の職員から聞いていたが、勧誘に失敗したそうだ。気が変わったら当日に来て欲しいと伝えてあるようだけど期待薄だな」

なんだかどこかで聞いたような話だ。


「そうですか。姉さんの頼みなら聞いてあげたいけど、仲間を危険に晒すわけにはいけないから許して。いつまでもここに滞在するわけにもいかないからね」


「最悪は王都から冒険者を借りるか、領主に頼んで騎士を派遣してもらうかするしかないね。でも、それをするとせっかく冒険者が見つけた遺跡の所有権を失う可能性がある。遺跡内にあるお宝に関してもエアリア達なら揉めなくて良かったんだけどね。でも、このままだと魔物が溢れた時の責任を取らされるから、決断しないといけないわね」

遺跡って言ってたし、やっぱり僕が断った依頼かな……

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