第133話 side ???

異世界に連れてこられた。


神と名乗った少年からスキルをもらったが、俺のスキルは使い物にならなかった。


[弓術]

弓使用時に能力+30%

命中+30%


悪いとは言わない。

弓道部だったし、弓も使い慣れている。

ただし、弓が買えるならだ。


与えられたお金は銀貨1枚。

ボロボロの安い弓なら買うことは出来た。

しかし買えるのは弓だけ。

矢は買えない。


そして、仮に矢も買えたとしてもスライムやウルフを討伐して貰える報酬よりも、消耗する矢の方が高い。


依頼を受けない方がいいくらいだ。


絶望したままなんとか食い扶持を稼いで、ギリギリの生活をしていた時にクラスメイトに出会った。


「高木……」

俺は高木を呼ぶ。


「お前も無事だったか。今はどうやって生活してるんだ?俺は[焔]ってスキルで、戦闘に使えるスキルだったから魔物を倒して生活しているんだけど」

魔物と戦えるスキルか……羨ましいな。


「俺は弓術ってスキルだった。悪くないと思ったけど、矢が高くて依頼を受ければ受けるだけ金が減っていきそうだ。だから雑用みたいな仕事を探して生活してる」


「弓術って、弓装備で10%能力が上がるやつか?」


「いや、30%だな。普通は10%なのか?」


「剣術のスキルを獲得したんだけど、剣装備で+10%だった。今はキツくても、冒険者のランクを上げれば稼げるんじゃないか?俺も金があるわけではないけど、1人より2人の方が受けれる依頼も増えるし、俺もソロに限界を感じていた。一緒にパーティを組まないか?」

高木に誘われて俺は冒険者になった。


高木に手伝ってもらい、Fランクに昇格させた。


高木は2人の方が受けれる依頼が増えるからと誘ってくれたが、やっぱり俺のスキルは使えない。

いや、使えないわけではないが高木のスキルに比べると明らかにハズレだ。


高木の焔というスキルは炎を自由に操るスキルのようで、高木は剣に炎を纏わりつかせて戦っていた。


ウルフの攻撃を剣で受けるだけでウルフは焼かれる。


正直、俺の出番はない。


俺を誘ったのは高木の優しさによるものだと理解した。


足手まといだとわかりはしたが、高木に助けてもらうしかまともな生活を送る方法が無い為、俺も必死に戦ってレベルを上げた。

高木に比べると目劣りする弓術のスキルだけど、この世界の人が持っているスキルで考えるとアタリのようで、冒険者ランクもDまで上がった。


高木におんぶに抱っこじゃなくても生活が問題なく出来るようになり、気が抜けていたのだろう。


魔物と戦っている時に、集中の切れた俺が放った矢が高木の胸を貫通した。


すぐに高木の元に駆け寄ったが、高木は既に虫の息だった。


俺は魔物をすぐに倒して、高木を街の治癒士の所に連れて行こうとしたが、間に合わず高木は死んでしまった。


そして、弓術と焔のスキルを交換するかの選択肢が目の前に現れた。


俺は何が起きたのかわからず、少しの間立ち尽くしていたが、この世界で生きていくためになにをしなければいけないのかを理解した。


俺は弓術のスキルを捨てて焔のスキルを取得する。


冒険者ギルドで事の顛末を説明する。

以前から高木と仲良くやっていたのがよかったようで、特に疑われることはなく、衛兵に捕まることはなかった。


高木がいなくなり1人になってしまったが、スキルが変わったおかげで俺個人としては前よりも格段に強くなった。


弓術のスキルはなくなってしまったが、レベルを上げた所、弓術を獲得した。

今度の弓術は能力+10%と普通だけど……。


矢に焔のスキルで炎を纏わせるだけで、矢に掠っただけで相手は燃える。

こんなにいいスキルを譲ってくれて高木には感謝しかない。


ソロになった事で俺の手元に入ってくる報酬は必然的に増え、十分に資金が貯まったところで別の街に移動することにする。


次の街で偶然クラスメイトの安本さんと遭遇した。


安本さんは食事処で働いていた。

働いているとは知らずに食事をしようと店に入った所、名前を呼ばれて驚いた。


多分安本さんはまだ気付いていないのだろう。


殺るか殺られるかということに。

俺達は殺戮を是とした神のゲームに巻き込まれているのだと。


俺は大事な話があると街の外に呼び出して安本さんを殺した。

レベルも碌に上げていなかったようで、なんの手応えもなく息絶えた。

持っていたスキルは[圧縮]だった。


交換するか迷ったが、焔のままにした。

戦闘スタイル的に焔の方が使い勝手が良さそうだ。


こうやってクラスメイトを殺して、スキルを厳選していき、最後の1人になった時に何かが起きるのだろう。


そうでなければ、殺せばスキルを交換できるなんてことにはしないはずだ。


俺は最後の1人だけが元の世界に帰ることが出来ると踏んでいる。

何か願いを叶えてくれるのかもしれない。


クラスの奴らには悪いが、俺は死にたくないし、元の世界に帰りたい。

多分このことに気付いている奴はまだ少ないだろう。

俺だって偶然高木を殺してしまったから気付いたことだ。


本格的にクラスメイト同士の殺し合いが始まる前に、出来るだけ数を減らして、良いスキルを厳選しないといけない。


クラスメイトを探しながらレベルを上げていた所、新しいスキルを獲得した。


[サーチ]

探し物を見つける

繋がりのあるものに限る


戦闘に役立つスキルじゃないのかと落胆したが、次にどこに行こうかと地図を見た時にサーチのスキルの効果なのか、地図上に青い点が表示された。


行こうか迷っていた街に青い点が2つあるが、今いる街にも1つ青い点がある。


俺はこの街の地図を買い、青い点がある所に向かってみる。


そこには小早川がいた。


「チッ![人形化]か。もっといいスキルを用意しておけよな」

小早川を殺す時にじいさんがこちらを見ていた。

見られたからには殺すしかない。

じいさんを殺してもスキルの交換は出来なかった。

予定にはなかったが、検証が出来て良かったと思うことにしておこう。


俺はこの世界全体の地図を買う。


青い点はクラスメイトの位置だとわかった。

王都に集中しているのは委員長が集めているからだろう。


スカルタにも集まってる。

誰だかわからないが、まだスキルも万全でない時点で多数を相手にするのは分が悪いかもしれない。


魔法都市に2人いるみたいだし、まずはそこに行ってみるか。

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