第46話 願い
自室に戻ってきた僕は、いつも通りネットニュースを見る。
特に情報は増えていないだろうと思っていたけど、小さな記事で集団行方不明の中学生が見つかったと書いてあった。
毎日ネットニュースは見ていたけれど、最近はダンジョンに潜っていたこともあり疲れてすぐに寝ていたので気づかなかった。
記事が書かれているのは3日前だ。
記事の内容では5人行方不明者が見つかったと書いてある。
新しく5人がこっちに戻ってきたのかと思ったけど、実際には5人戻ってきているという内容の記事だった。
多分警察が秘匿するのをやめたのだろうと思う。
まあ、いつまでも隠し通せるものでもないし、部屋に閉じ込め続けるわけにもいかなかったのだろう。
秘匿していた事を隠すためか、いつ戻ってきたとかの内容は書かれていなかった。
この5人に捕まっている田中くんも含まれているのかは不明だけど、含まれているとしたら、僕の知らないのは2人だけだ。
少ないなというのが、率直な感想だ。
多分もらったお金はみんな銀貨1枚だと思うので、すぐに詰みそうだと思うけど、ほとんどの人は生きているようだ。
普通に生きているのか、ギリギリで生きているのかは知らないけど、死んではいないということだ。
警察が秘匿するのをやめたくらいしか情報はないのでパソコンを見るのをやめる。
夕食を食べながら、両親に明日から次の街に行くので少しの間また帰れなくなると伝えておく。
神と再会してから、両親にも向こうの世界の事を話せなくなってはいるけど、新しい情報でなければ話せるようにしてくれていたのは助かる。
次の街がどんなところかは話せないけど、移動することは話すことが出来るので心配させなくて済む。
翌日、予定通り次の街へと向かう。
ちょうど乗り合い馬車が少し待つだけでこの村に来る予定だったので、今回は馬車に乗って向かう。
「今回は馬車なんだね?」
ヨツバに聞かれる。
前の時はヨツバを途中で殺すつもりだったから、適当に理由をつけて歩いていくことにしただけだ。
「使いはしちゃったけど、お金はまだあるからね。それにレベルも上がったし歩いていくメリットはあまりないかな」
なのであの時、先にヨツバに話を聞いていれば僕は馬車で移動していた。
ヨツバにはそんなこと言えないので、前の設定を守ることにする。
馬車に揺られること3日、次の街に到着した。
乗り合い馬車だから仕方ないけど、いろんな村を回りながら進むので思ったより時間が掛かった。
歩くよりは確実に楽ではあるけど、時間的には歩くのとあまり変わらなかったのでは?と思ってしまう。
「とりあえず、ヨツバの宿を探そうか」
僕達は宿屋を探す
「ここの宿屋で金額聞いてくる」
ヨツバは安そうな宿屋に入ろうとする。
ヤバそうではない。安そうだ。
「もう少し良い所に泊まってもいいんじゃない?レベルも上がったし、1日で稼げる金額も増えると思うよ」
僕は思った事を言う
「何があるか分からないから贅沢は出来ないよ。それに宿を良くするよりも食べるものを豪華にしたい」
「そっか」
ヨツバのお金なので、ヨツバがいいなら僕の言うことは特にない。
安い宿でなくて、ヤバい宿なら口出しするかもしれないけど。
「この街にはどのくらい滞在する予定なの?」
ヨツバに聞かれる
「決めてないよ。居られなくなる理由とかない限りは、少なくても1週間くらいはいると思うけど……」
「わかった。それじゃあ安くしてもらえるなら7日くらい借りてくる」
ヨツバはそう言って部屋を借りに行った。
少ししてヨツバが不機嫌そうに戻ってきた。
「どうしたの?」
「部屋を貸してもらえなかった」
「え、なんで?空いてなかった?」
値引きしてもらえなかったとかなら分かるけど、貸してもらえなかったのは予想外だ。
「部屋は空いてたんだよ。それで連泊するから少し安くしてくれると助かるんだけどって言ったら、俺の店が満室にならないとでも言いたいのかって言われて追い出されたよ。別にそういうつもりで言ったんじゃないんだけど……」
実際のやりとりを聞いていないのでなんとも言えないけど、ヨツバの言う通りだとしたらここの店はヤバいな。
ヨツバがそう思っていたとしても、客にそれを言う時点でヤバい。
本当に毎日満室になるのであれば、連泊するからと値引きするメリットは店側にはない。
でも、それならそう説明して値引きを断れば良いだけだ。追い出す必要はない。
「泊まる前で良かったと思うしかないよ。機嫌を直して他の宿を探そう」
「……うん」
僕に対して怒ってるわけではないので、隠そうとしてはいるけど、機嫌は悪いままだ。
少し探すと違う宿が見つかった。
高くは無さそうだ。
「ここはどうかな?」
「うん、聞いてくる」
ヨツバは宿の中に入っていく。
僕はどうか上手いこと借りれますように……と願う。
ヨツバが戻ってくる。機嫌は変わってない。
ということは……
「問題なく借りられたよ」
悪くはなかったようだ。機嫌が戻ってないことを考えると良くはなかったか、根に持っているかのどちらかだ。
「そっか。とりあえずご飯でも食べにいこうか。今日は僕もこっちで食べるよ」
ご飯を食べさせて機嫌を直してもらおう
どこの店が美味しいかなんて知らないので、流行ってそうな店に適当に入る。
「村で結構お金使っちゃったでしょ?僕は村でほとんど使ってないから今日は奢るよ。そんなに高い店じゃなかったし気にせず食べて」
「いいの?ありがとう」
メニューを見ても相変わらずどんな料理か分からない。
文字は読めるけど、料理名を知らないので困る。
肉料理なのか、魚料理なのかくらいはわかるようになってきたけど、前に肉と思って注文したらパスタみたいなものが出てきた時もあった。
なので、店員さんにおすすめを聞き、それが美味しそうだったのでそれを注文した。
パンとスープと魚のフライが出てきた。
「うーん。美味しい」
ヨツバはご満悦のようだ。機嫌も直っているようでよかった。
僕も食べる。何の魚かは分からないけど、美味しい。
この店は当たりだ。価格も高くはないし、今度ストレージに入れて持ち歩く用に色々と注文しよう。
お腹も膨れた所で、ひさしぶりに自室へと帰ることにする。
ずっと帰ってなかったので、戻ってきたことを母さんに伝えたら、2日前に鈴原さんが僕を訪ねてきたと言われた。
冴木さんから話を聞いた後ならいいなと僕は切に願う
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