第45話 魔素

翌日もダンジョンの3階層でレベルを上げる。


ヨツバの予想は正しかったようで、ダンジョンの魔物を倒すと、魔素(★)が手に入っていた。

手に入っているのは魔素のみでボアやウルフの素材は手に入っていない。


僕は試しにストレージから出して瓶の蓋を開けてみることにする。

特に何も起きない。


使い方が違うのか、瓶の1本分では足りていないのか……


1本目の中身は既に霧散している可能性があるので、次は2本同時に開けてみる。

何も起きない。


徐々に本数を増やしていき、5本までやったところで諦める。


後、試してみたいのは吸って体内に入れてみることだけど、何が起きるかわからないのでやりたくないな。

もしかしたら魔力が回復したり、魔力量が増したりするかもしれないけど、毒とかあるかもしれない。

気になるのは瘴気だ。前に浄化草を買取に出した時に教えてもらったけど、瘴気が多いところには魔物が溜まりやすいらしい。

魔素=瘴気だとすると、吸い込みすぎると理性を失う可能性がある。


思いついたことで、試せることは試したのでレベル上げに専念することにする。


昨日の反省を生かして早めに切り上げることにする。

それでも外に出たのは夕方だったのでちょうどいいくらいだった。


僕はふとダンジョンの外で魔素を取り出したらどうなるかと思った。

試してみたいけど、流石に村の近くでやるのはマズイと思い村から離れることにした。


気になっただけなので1人でやるつもりだったけど、ヨツバも付いてきた。


「それじゃあ開けるよ」

僕はヨツバに合図してから蓋を開ける。


「え?」

何も起こらないと思っていたけど、スライムが出てきた。

今、どこから出てきた?


スライムは僕を攻撃してくる。

仲間というわけではなさそうだ。

僕はスライムを倒す。

倒したけど、ストレージに魔素は増えていなかった。

無限ループは出来ないってことかな?それともスライムは魔素をドロップしないのか……?

後で1階層にいるスライムを倒してみれば分かるか……。


「もう一回やるから、今度はヨツバが倒して」

ヨツバが倒した場合に死体が残るのか知りたい。


「うん」


僕はもう一度魔素を取り出して蓋を開ける


同じくスライムが出てきた。

2回なので確証はないけど、スライム確定なのかな?


ヨツバがスライムを斬って倒す。

スライムの死体は残らずに消えた。

このスライムはダンジョンのスライムと同じだと思われる。


2本開けたらどうなるのかな?スライムが2体出てくるのか、それとも違う魔物が出てくるのか……?

少し大きいスライムが出てくるとかもあるのかな?


試してみる


スライムが2体出てきた。

瓶の数を3本に増やすとスライムが3体、5本に増やしたらスライムは5体出てきた。

同時に開ける本数は関係なく、瓶1本につきスライムが1体出てくるようだ。


「スライムしか出てこないなら、全然危なくないね。使い道は無さそうだね」

ヨツバがそんな事を言う。


「そうだね。仲間になってくれるわけでもないしね」

僕はそんな風に答えつつも、内心このアイテムのヤバさに気づいていた。

使うつもりはないけど、いつか使うかもしれないのでヨツバには教えないことにする。


「大体わかったから、とりあえず今はこれ以上試すことはないかな。村に戻ろうか」


村に戻りヨツバと別れた後、僕はダンジョンへと向かう。

スライムを倒す為だ。


1階層でスライムを倒したら魔素をドロップした。

スライムが魔素をドロップしないのではなく、魔素(★)から出現したスライムはドロップしないようだ。


どういうことかわからないけど、無限ループしないというだけでどうでもいい。

気になっただけだから。


翌日からも変わらずダンジョンでレベル上げをして、予定よりも時間はかかってしまったが、約2週間掛けて遂にレベルが20まで上がった。


「思ったより時間が掛かっちゃったけど、目標までレベルが上がったよ。付き合ってくれてありがとね」

僕はヨツバにお礼を言う。


「今日は村に泊まるとして、明日街に戻るの?」


「そうだね。でも戻るんじゃなくて次の街に行こうか。何か用事があれば戻ってもいいけど」


「特に用事はないからそれでいいよ。クオンはレベル20に拘ってたじゃない?何かあるの?」


「ゲームだとレベルが20になるとジョブチェンジが出来るんだよ。ずっと無職なんだけど、特定の職でしか獲得できないスキルもあるし、ステータスにも補正が入るはずだから早めにしたかったんだよ」


「それじゃあ、今は他のジョブになってるってこと?」


「なってないよ。ゲームだと教会で神父に話しかけると変更出来るんだけどね。次の街で教会に寄るつもりだけど、神父にジョブチェンジしたいと言うわけにもいかないし、どうしようか迷ってるところ。言ったところで神父からしたら意味不明だろうし……。管理画面から変更出来ないかななんて思ってたけど、当ては外れたよ」


「そうなんだ」


「そういうわけで、ヨツバに付き合ってもらったけどレベルを20まですぐに上げる必要はなかったよ。ごめんね」


「別にいいわよ。それとは関係なくレベルは上げといた方がいいんでしょ?」


「そうだね。やれることが増えるから高いに越したことはないと思うよ。それじゃあ明日出発ってことでよろしくね」


「わかった」

ヨツバは宿に入っていった。


僕はヨツバが宿に入ったのを確認してから、ゲームではレベルが20になると出来るようになるもう1つの事が出来るのか確認することにする。


僕はマップを開いて、この世界に転移した時近くにあった街をタップする。


移動しますか? YES/NO


僕はYESをタップする

目の前の景色が急に変わり、目の前には見覚えのある街があった。


僕がレベルを20まで上げたかった目的は本当はこっちだ。

ファストトラベルが出来るようになった。


これで行ったことのある街や村に一瞬で移動が可能になった。

ヨツバは移動出来ないはずなので普段の移動には使えないけど、やれることの幅が広がった。


僕は元いたダンジョン近くの村にファストトラベルしてから自室へと戻った。

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