第22話 鍛冶屋

翌日、冒険者ギルドでヨツバとニーナと合流する。


「おはよう。待ち合わせの時間までもう少しあるから、ギルドの中で待ってようか」


僕達はギルドの中で座ってエアリアさんを待つ


「そういえば、誰が紹介してくれるの?」

ニーナに聞かれる。確かに救護班のリーダーとは言ったけど、エアリアさんとは言ってなかった


「エアリアさんって人だよ」


「え!エアリアさんってあのエアリアさん?」

有名人なのだろうか?

救護班のリーダーなのだから、ランクの高い冒険者だとは思ってたけど……


「有名な人なの?すごい人?」


「アリアドネって女性だけで組まれたパーティのリーダーなんだけど、美人で優しいのにカッコいいところもあって人気なのよ」

冒険者のアイドルみたいなものかな


「そうなんだね。ニーナもエアリアさんのファンってこと?」


「ファンっていうよりも、憧れに近いかも」


「一緒にパーティ組みたいとか?」


「一緒に組めたら嬉しいけど、今は組めたとしても足手まといになるだけだよ」


「そっか」


少ししてエアリアさんがやってきた。

昨日治療した女性も一緒だ。


「お待たせ。そちらの方達が言ってた仲間の人?」


「はい。装備を探しているのはこっちのニーナです」


「ニーナです。エアリアさん、クリスさん、今日はありがとうございます」

治療した女性はクリスというらしい


「ヨツバです」


「エアリアよ。よろしくね」


「クリスです」

クリスさんは手に包帯を巻いたままだ


「怪我はどうですか?」

クリスさんに聞く


「元には戻らないけど、おかげで冒険者を続けることは出来るわ。本当にありがとう」


「そうですか、魔力が回復してるのでもう一度掛けますね。ヒール!」

クリスさんには既にヒールのチート具合は見られているので、気にせずに使っていいだろう。

それに、後々の事を考えると恩を売っておくのもいいと思う


「ありがとう。なんだか痛みが引いたわ」

包帯を巻いてるので、どうなったのかはわからないけど、やはりずっと痛みがあったようだ


リキャストタイムが切れたらもう一度掛けておこう


アリアドネの皆さんは有名人みたいだし、恩を売っておけば田中君が僕の事を言った時に、助けてくれるかもしれない。

他にお願いしたいこともあるし……


「それじゃあ、鍛冶屋に行きましょう」

エアリアさんの案内で鍛冶屋に向かう


鍛冶屋に向かう最中、クリスさんに2回ヒールを掛けた。

魔力量的にこれ以上は無理だけど、大分良くなったと思う。

フラットさんがヒール3回で死ぬ間際から傷跡が残るくらいになった事を考えると、完治しているまである。


しばらく歩き、鍛冶屋に到着した

エアリアさんを先頭に店に入る


「おやっさん、若い子連れてきたよ」

エアリアさんが店主と思われる親父さんに声をかける。

いかにも頑固オヤジって感じだ


「おお、嬢ちゃん久しぶりだな。若い子ってのはそっちのか?」


「ええ、この子よ。こっちの子にクリスがお世話になったからね、良くしてあげて」

エアリアさんがニーナを前に出して、僕を指しながら説明する


「任せとけ。それで何が欲しい?今はなにをつかってる?」


「えっ…、えっと今は短剣です。剣と盾が欲しいです。盾は籠手でも……」


「とりあえずこの剣振ってみろ」

親父さんが剣を持ってくる。

結構短めだ


ニーナは剣を受け取り、片手で振る


「体が振られてるな。剣を使いたいなら盾は諦めた方がいい。それと籠手を盾の代わりとして使うのはやめておけ。いつか腕を落とすぞ」

親父さんは厳しい事を言うけど、真剣に考えてくれているようだ


「そうですか……」

ニーナはショックを受ける


「冒険者としてどこまでやりたい?生活が出来るくらいでいいなら片手剣でもいいが、上を目指すなら剣は両手で握った方がいい。男と女では腕力が違うからな」


「……盾はいりません。両手で使う剣をお願いします」

ニーナは考えた後、決意して両手剣を使う事を選んだ


「いい目だ。次はこの剣だ」

親父さんはニーナの返事を聞いて、違う剣を持ってきた


ニーナは剣を両手で持って振る


「ふむ、次はこれだ」

また違う剣を持ってくる


10本くらい試したところで親父さんが納得したようだ


「このタイプが合ってると思うがどうだ?」

親父さんが決めた剣は刀身が細めの剣だった


「私もその剣が扱いやすかったです」


「元々短剣を使ってたからだろうな。一撃の重さよりも手数を重視した方が合ってるのだろう。これなら片手でも振れるから、色んな戦況にも合わせやすいだろう」


「ありがとうございます。またお金が貯まったら買いに来ます。いくらかかりますか?」


「この剣でいいなら大銀貨3枚だ。だが、自分に合った剣を使った方がいい。合わせて作るなら大銀貨4枚だ」


「わかりました」

ニーナは買わずに帰ろうとする


僕はニーナの装備代を出すつもりだった。

ニーナとは装備が揃うまで一緒に依頼を受ける約束をしたけど、こっちの都合でその前に街を出ることになりそうだ。

せめて約束は守るためにも、装備を揃えたかった。


でもニーナにそのまま言ったところで快く受け取ってはくれないと思う。

どうやって払うか悩む


「嬢ちゃんの恩人なんだろ。金はある時に払ってくれればいい」


「でも何があるかわかりませんし……」

ニーナは遠慮する。それにニーナの言う通り冒険者は危険と隣り合わせだ。いつ仕事ができなくなるかわからない


「その時はアリアドネからもらうからいい。紹介するってことはそういうことだ。そうだろ?」

親父さんがエアリアさんに確認する


「ああ、もちろんだ」


「それに、早く自分に合った武器を使った方がいい。既に短剣のクセが付いてる」


「……わかりました。お願いします」


「おし、合わせて作ればいいな。それまではその剣を貸してやるから使っておけ」

ニーナに合わせて調整した剣を作ってくれるようだ。

それまではさっき振っていた剣を貸してくれるらしい


良い鍛冶屋を紹介してくれて本当にありがたい


「ありがとうございます」


ニーナが剣を頼んだので、僕達は鍛冶屋を後にした

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