第23話 頼み事
鍛冶屋を出た後、僕達は解散する。
解散後、僕はニーナ達とも別れてエアリアさんを追いかける
「エアリアさん、ちょっと待って下さい」
「あら、何かしら?」
「エアリアさんに頼みたい事が出来まして、少し時間をもらえませんか?」
「もちろんよ。それに私も聞きたいことがあったからちょうどいいわ」
エアリアさんも僕に用があるらしい
「聞きたいことですか?」
「ええ、聞かない方がいいかなって思ったんだけど、やっぱり聞いておいた方がいいと思うから……。答えたくなければそれでも構わないわ」
「答えられることなら、答えますよ」
内容次第だ
「……クリス、包帯をまた外してくれないか?」
エアリアさんはクリスさんに包帯を外すように言う。
“また”と言っていたので、一度外して巻き直したのだろう。
なんとなくエアリアさんの言いたいことがわかった
クリスさんは包帯を外す
「さすがにこれは異常としか言えないのだが、君は本当に冒険者か?教皇と言われても納得せざるを得ないんだが……」
そこにはキレイな手があった。斬られた形跡も残っていない
「少し特殊なスキルが使えるだけで、まだ新人の冒険者ですよ。キレイに治って良かったです。昨日も言いましたが、極力秘密にしてください」
「ああ、そう思って包帯は巻かせている。見た目は怪我が治ってないように見えるからな。ただいつかはバレるからな」
「それは仕方ないです。極力秘密にしてくれればそれで大丈夫です」
「そうか、出来るだけ騒ぎにはならないようにする。恩人に迷惑は掛けたくないからな。ありがとう」
「いえいえ、それで聞きたい事はそれだけですか?」
「いや、本題はここからだ。さっきのは改めてお礼をしたかっただけだ。後日にギルドからも聞かれると思うが、サイトウユウタという人物に心当たりはないか?」
思ったより早かったな。そしてやっぱり田中くんは僕を売ったようだ。しかも名前を間違っている。
僕はユウタではなく、ユウトだ。
「その人がどうしたんですか?」
「聞いた話なんだが、捕まえた盗賊の1人がおかしなことを言っていては。自分は異世界から来たとかなんとかな。それで討伐隊の中に一緒に呼ばれた異世界人がいたと言うから、参考人として話を聞きたいらしい」
「それで討伐隊に参加している人に話を聞いているわけですね」
僕は迷う。エアリアさんは良い人だと思うので相談するのもありかもしれない。
とりあえず街を出て、偽名で冒険者の登録をやり直すつもりだったけど……
そもそも今のクオンだって偽名だし
「いや、話を聞くのは多分君だけだ」
「え…、なんで僕だけなんですか?」
なぜかバレているらしい
「賊の話を信じるならば、この世界に来てからまだそんなに経っていないそうだ。討伐隊に参加した者はベテラン冒険者ばかりだからな。君以外は昔からギルドに登録しているから、当てはまるのは君だけなんだ」
ここまでバレているなら、逃げるのは良くないかもしれない。
「そうですか…。僕のことですね。参考人としてって言いましたけど、正直どうなりますか?」
「そうか、やっぱり君だったか。クオンというのは偽名なのか?」
「偽名というか、ニックネームみたいなものです。騙すつもりはありません。本名は斉藤悠人です。……ユウタではありません」
「それでこれからどうなるかだったな。多分ギルマスに話を聞かれることになると思うが、その後どうなるかはわからないな。君が悪い事をしていなければ捕まる事はないと思うが……」
面倒事にはなるかもしれないってことだね
「思ったより早くて驚いていますが、予想はしていたので街からはもうすぐ出るつもりでした。マズいですかね?」
「なんとも言えないな。助言をするならば、逃げるなら今日のうちに街から出た方がいい。ギルドから話を聞かれた時に、知らないと嘘を吐くと後々バレた時に面倒な事になる。逃げるならその前にした方がいい。それなら後で話を聞かれた時に、違う理由で街を出たことにすればまだマシだ。だが、この街のギルマスは話のわかる人だから話はしても良いと思う。問題はこの話がどこまでいっているかだな。領主の耳にまで入っているなら面倒事は避けられないかもな」
「難しいですね……」
「さっきの2人はこの事を知っているのか?」
「知ってます」
「君がよければギルマスとの話には私も立ち合おうか?自分で言うことではないが、そこそこ顔が利くからな」
「お願いしてもいいですか?」
後々の事を考えると、話をしておいた方がリスクは少なそうだし、ここはエアリアさんに甘えるとしよう
「わかった。明日もギルドで待ち合わせてからギルマスに話をしよう。先に話をされると面倒だからギルドの外で待っててくれ」
「わかりました。お願いします」
「任せてくれ。それで頼み事があるんだよね?」
「はい。少し話が被りますけど、さっきの件がなくても僕とヨツバはこの街を出るつもりだったんです。それでニーナを残して出ることになってしまうので、アリアドネの方達が良ければニーナの事を頼みたかったんです。パーティに入れてくれとは言いませんので、困っていたら手を貸してあげて欲しいです」
「もちろんよ。他のメンバーが良ければ、パーティに入れてもいいわ。もちろんニーナちゃんにも確認してだけどね」
「本当ですか!?ありがとうございます。ニーナは足手まといになるって言ってたけど、エアリアさんに憧れてるって言ってました。きっと嬉しいはずです」
「そう言ってもらえると私も嬉しいわ。さっき剣を振ってるところを見たけど、足手まといにはならないと思うわよ。もちろん依頼にもよるけど、筋は良さそうだからレベルさえ上がれば何も問題なくなると思うわ」
ニーナが褒められて、なんだか自分のことのように嬉しく思う
「よろしくお願いします」
「任せといて。他に頼み事はない?」
「大丈夫です。それじゃあ、また明日お願いします」
僕はエアリアさん達と別れて鍛冶屋に戻った
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