第15話 苦悩する

僕は1人でウルフを倒しにいく


レベルも上がったし多数に囲まれなければ1人でも問題なく倒し切る事は可能だ。

囲まれたとしても、逃げることは出来るので危なくはない。


それにレベルも先日7まで上がって回復魔法も覚えたので、MPを切らさないようにだけ気をつければ攻撃を喰らってしまっても態勢を立て直す事は可能である


そう思っていたけと、僕は今ピンチに陥っている

想定外の事態が発生したわけではない。

ウルフ8体に見つかっただけだ。

普段なら周りに気を配りながら探索をしていたので、先に見つかったとしても攻撃を喰らうまで気づかないなんて事はなかったはずだ。

ただ、考え事をして注意が散漫になっていた為にウルフに囲まれ、さらには攻撃されるまで気づかなかった。


戦闘中はログアウトが出来ないので、地球に逃げる事も出来ない。ゲームではセーブ出来ないだけでいつでもログアウトは出来たのに…

いや、ゲームでもログアウトは出来なかった。やっていたのはVR機を外して電源ボタンで強制的に落としただけだった。

そんなどうでもいい事考えている場合じゃなかった。

今は目の前のウルフに集中しないと……


ゲームだったら8体全て倒そうとするけど、今は逃げる事にする


僕はファイアボールで攻撃する。

3発撃ったけど、当たったのは2発だけだ。でも2体倒した事で包囲に穴が開いた。

僕はそこから逃げる。逃げきれなくても、四方から攻撃される事はなくなるので今の場所から逃げるのは、倒すにしても逃げるにしても間違っていないはずだ。


逃げながら、ファイアボールのリキャストタイムが終わるのを待つ


AGIにあまりステータスを振らなかったことが悔やまれる。僕の逃げ足よりもウルフの方が明らかに早い。


リキャストタイムがやっと終わったので僕はウルフを引きつけてからファイアボールを放つ。

今一度に撃てるのは3発までだけど、数を増やすと命中精度が下がり、さらにMPもその分多く使うので2発だけ放つ。

放つ数を減らして、ウルフを引きつけたことが功をなし2発とも当たった。残りは4体だ。

2発とも当たったのはラッキーだ。正直どちらかは外れると思っていた。


僕は残ったウルフがうろたえているうちにまた逃げる。

倒す事を優先していないので、倒せる確率が上がったとしても生き残る確率が高い方を選ぶ。


ウルフは仲間が半分やられたというのに諦めずに追ってくる。

僕はまたリキャストタイムが終わるまで逃げる。

やっぱり魔法職はソロだと辛いな。

ソロを想定したステ振りもしていなかったし……


リキャストタイムが終わる前にウルフに追い付かれてしまった。リキャストタイムが終わるまではもう少しある。


僕は木刀で応対する。ピンチではあるけどファイアボールが撃てるまで持ち堪えればなんとかなるはずだ。これだけ近ければ3発撃っても当たるだろう。


攻撃を喰らいながらも、リキャストタイムが終わるまで耐え切った。

僕はファイアボールを3発放つ。

木刀が当たるような距離ではさすがに外す事はなく、3体倒す事に成功する


残りは1体だ。相手が1体なら問題ない。

僕はウォーターボールを放つ。ファイアボールと違い、ウルフにそれ程ダメージを与える事は出来ないけど木刀で攻撃するよりは全然いい。


ウルフはウォーターボールをくらい少し吹き飛ぶ。僕はふらつくウルフに木刀を叩きつける。

そしてついにピンチを脱することが出来た。


「ふぅ。なんとかなった」


僕は反省して、一度自室に戻ることにした。

ピンチになる前にも2体倒してたので、倒したウルフは全部で10体になる。

気持ち少ない気がするけど良しとしよう。


ウルフに囲まれた時に考えていたのはヨツバのことだ。

ヨツバは僕の事を知ってどう思ったのだろうか?

これからどうするのだろうか?

そんな事をぐるぐるとずっと考えていた。


今はウルフ討伐に集中するのは無理だとわかった。

なので今日はもう異世界には行かない事にする。


依頼の報告は明日の朝でいいだろう。その時にいつも通りヨツバ達がギルドに来るなら答えを聞こう。


来ないようなら、多分もう少し時間がいるという事だと思う。依頼は受けずに考え事をしていたとしても倒せるスライムレベルの敵だけを倒しながら薬草でも採取しようと思う。


コンコン!

「悠くん、音が聞こえたけどいるの?」

母さんがドアをノックする


戻ってきたら音で気づくって事は、打ち明けなかったとしてもバレるのは時間の問題だったってことだね


「今ちょうど戻ってきた所だよ」

僕はドアを開けて答える


「そう、怪我してない?」


「大丈夫だよ」

危険だったとは言えないな。今はちゃんと反省しているので許して欲しい。


「そう、よかったわ。ご飯はどうする?一緒に食べるならご飯は台所に用意するけど」


「一緒に食べるよ。今日はもう向こうには行かないから、家にいるよ」


「……悠くん大丈夫?」

急に心配された


「急にどうしたの?」


「あんまり元気がないみたいに見えたから。昨日のお父さんとの約束を守ったなら立花さんに話をしたんでしょ?」

顔に出ていたようだ


「うん、朝に話をしたよ。立花さんが困惑してたから僕が言うだけ言って答えは聞いてないけど……」


「そうなのね。こんなこと言うべきではないかも知れないけど、悠くんが後悔しないようにね。気持ちが落ち着くまでは無理しないようにね」


「うん、わかったよ」

気持ちが落ち着く前に依頼を受けて、今日酷い目に遭ったので、これからはちゃんと気をつけようと再度思う。


僕は夕食を食べながら、父さんにもヨツバに話をした事を伝えた。

父さんは黙って話を聞いて、最後に「よく言ったな」と一言だけ言った


翌日の朝ギルドに行く。

ギルドにはニーナはおらず、ヨツバだけがいた。



現ステータス

LV:7

HP:22/22

MP:25/25

STR:4

VIT:5

DEX:11

AGI:5

INT:20


スキル

水魔法[ウォーターボール]

火魔法[ファイアボール]

回復魔法[ヒール]


※HPは1ポイントで2上がります

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