第14話 打ち明ける
僕はご飯を食べている2人のところへ行く。
「話があるんだ。驚くと思うけど聞いてほしい」
僕は話を切り出す
「何かしら?」
「実は僕、異世界に転移出来るようになったんだよ」
僕は両親に打ち明けた
「悠くん、何を言ってるの?」
「クラスの皆が行方不明になったでしょ?」
「悠くんも知ってたのね。でも、だからって悠くんはここにいるじゃない?」
「あの時、僕も異世界に行ってたんだけど、なんでか僕だけこっちの世界に帰ってこれるみたいなんだ」
「悠くん、ゲームのやりすぎじゃない?異世界とかお母さんわからないわ」
やっぱり信じてもらえなかった。
「父さんは信じてくれる?」
「信じてやりたいが、流石に話が突拍子すぎる」
「証拠を見せるよ」
僕は異世界に行って、戻ってくる
「え、今何をしたの?悠くんが消えてたわ」
2人とも動揺している
「今、向こうの世界に行ってたんだよ」
「……ほんとなのか?」
父さんは恐る恐るといった感じで聞く
「本当だよ」
「それで、そんな話をしてどうしたいんだ?向こうで暮らすなんて言わないよな?」
父さんの顔は真剣である。こんな怖い顔を見たのは初めてかもしれない。不登校になり始めた時もこんな顔はしなかった
「向こうで暮らすつもりはないよ。でも向こうにはこれからも行くつもりだよ」
「……向こうの世界はどんなところなんだ?安全なのか?」
「……ゲームみたいな世界だよ。スキルがあって、魔法が使えて、魔物が出てくる世界」
僕は正直に話した。
危険は無いと嘘を吐くことも出来たけど、それはいけないと思った。
「ダメよ。行かせないわ」
母さんはやはり行かせたくないみたいだ。
嬉しくも思うけど、そう言われてやめることは出来ない
「母さんが思っている程危険ではないんだよ。魔物が街の中にいるとかじゃないし、ここでは使えないけど向こうの世界では魔法で魔物と戦うことも出来るんだ」
僕はなんとか許してもらえるように2人に向こうの世界の安全性を説明する。
「……それでも、危険はあるんでしょう?」
「なくはないよ。でも母さんが思ってるほど危険ではないんだよ」
「……こっちに帰って来れるのは悠人だけなのか?」
父さんに聞かれる
「多分、僕だけだと思う。」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
「向こうにいるクラスメイトの1人と合流出来たんだけど、その子は帰れなかったんだよ。」
「そうか、悠人はなんで帰れるんだ?突然帰れなくなることはないのか?」
「僕だけゲームみたいなステータスボードが出るんだ。他の人はレベルとスキルしか出ないんだけど、僕のは筋力とかの数値が見れたりスキルを選んで覚えたり出来るんだ。その中にログアウトって所があってタッチするとこっちに帰って来れるんだ。ステータスボードだけはこっちでも使えて、ログインをすると向こうの世界にいけるんだよ。絶対ではないけど、突然帰れなくなることはないと思う」
「合流したクラスメイトってのは誰だ?」
「立花さんだよ」
「悠人はその子を助けるために行くとは言わないんだな」
父さんには見透かされている気がする
「うん、僕が向こうの世界に行きたいから父さん達を説得しようと思ってる。もちろん、立花さんの手助けは今もしてるし、他のクラスメイトに会って困ってたら助けようと思うよ。でも、行く理由にはしたくないんだ」
「母さん、僕には悠人を止められないよ。行かせたいわけではないけど、反対は出来ないかな。悠人の中で既に答えは出ているようだし、無理に止めてもどうせ隠れて行ってしまうよ。それなら応援してあげてもいい」
父さんは許してはくれた。そう思ったけど、「ただし」と言葉を繋いだ。
「条件が2つある。守れるなら応援しよう。まず1つ目は、必ず無事に帰ってくる事。これは絶対だ。なにを犠牲にしてでも帰って来い。そして2つ目だが立花さんは悠人が日本に帰れることを知っているのかい?」
僕は父さんが言ったことにドキッとした
「……知らないよ」
「しっかりと話をしなさい。そこに後ろめたさがあるなら行くのはやめなさい。悠人は向こうの世界に夢見て行くのだろう?ずっとモヤモヤしたまま過ごすのかい?それで本当にいいのか?」
「……うん、わかったよ」
「母さんもそれでいいだろう?悠人が前に進もうとしているんだ。応援してやろう」
「…………好きにしなさい。ただし少しでも危険と思ったら帰ってくるのよ。それにゲーム感覚で無茶しないこと」
「うん、ありがとう」
翌日、ニーナには席を外してもらい、約束通りヨツバに話をした
「ヨツバに言ってなかったことがあるんだ」
「……なにかしら?」
ヨツバもタダ事ではない事を察してくれたようだ。
「実は僕、元の世界に帰れるんだ」
「え?…………」
僕はヨツバの頭の処理が終わるのを待つ
「どういうこと?」
「そのままだよ。僕はこの世界と元の世界を自由に行き来することが出来るんだ」
「え、いや、ほんとに?」
「本当だよ。野宿しても快適だって言ってたのは日本の自室で寝てたからなんだ……」
「斉藤くんはなんで帰れるの?…………なんで私は帰れないのよ」
立花さんは俯いて泣きそうな声で言った
「……僕とヨツバとではこの世界でのシステムが違うみたいなんだよ。スキルの覚え方とか、使い方とか、パラメータの上げ方とかも」
立花さんが聞きたいのはこういう事ではないのはわかる。でも立花さんが求める答えを僕は持っていない
「…………そうなんだね」
「身勝手かもしれないけど、僕は来週くらいにはこの街を出ようと思ってる。立花さんがどうするかはそれまでに決めておいて。……ここに残って簡単な依頼を受けていれば生活は出来ると思うよ」
僕は俯いたまま黙ってしまったヨツバから離れてニーナの所に行く
「ごめん。理由は話せないけど、ヨツバの事お願い出来ないかな?依頼は僕が1人でやってくるから。お願いします」
僕はニーナにヨツバの事を頼む
「ケンカでもした?」
「ケンカではないけど、そんな感じかな……」
「深くは聞かないけど、ちゃんと仲直りするのよ」
「うん」
僕は2人を置いてウルフを倒しに向かった
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