第13話 考え事

ウルフを狩り続ける事数日、僕は考えていた。


他のクラスメイトはどうしているのだろうか?


胡散臭いあの自称神が言うには皆にはスキルが与えられているらしい。

ヨツバのスキルは幸運だった。

今は無いけど……


僕にはスキルが無かったけど、このゲームみたいなシステムがスキルだとしたら説明はつく。


他の皆のスキルがどの程度のものかによるけど、銀貨1枚で何日生活できるのだろうか?


ヨツバは2日目にして野宿しなければいけなくなっていた。

あの硬いパンと薄いスープでも銭貨5枚する。

野宿して1日1回アレだけを食べ続けたとしても20日で金が尽きる。


無事生きているのだろうか?


今いる街にもクラスメイトがまだいる可能性もある。

ヨツバとはたまたま冒険者ギルドで出会ったけど、あれは運が良かっただけだ。

あのタイミングでギルドに行かなければ会う事は無かった。

それくらいの幸運はスキルを代償にしている。


街の隅々まで探せばもう1人か2人くらいはいるのではないか?


少なくとも、僕とヨツバは生活が出来る基盤は出来た。

地球に帰れる僕は別として、ヨツバはここ数日で少しレベルも上がってウルフとも大分戦えるようになり、簡単な依頼を受け続ければ、少しずつお金を貯めながら生活は出来るだろう。


今、お金を稼げているのは何人いるのだろうか?


他の街も探した方がいいだろうか?


お金の余裕も多少は出来てきたので、買い物をする為に街を歩くことがあるけどクラスメイトは見かけていない。


こんなに大きな街で人探しなんてどうしたら良いのだろうか?


そもそも、この街にいるかわからないなら他の街に行ったほうが良いのではないか?


他の街に………


違う、僕は皆の心配をしてる気になっているだけで他の街に行く理由を探しているだけだ。

心配してないわけではないし、目の前で困ってるなら助けたいとも思う。

これは嘘ではない。でも、この世界を見て回りたいという気持ちの方が強いのだ。


僕は、僕以外の皆が地球に帰れないと知ってからこの世界をゲームのような世界とは見ないようにしていた。

でも、ゲームではないにしてもこんなにワクワクする世界でジッとなんてしていられない。


もっと違う景色を見てみたいし、もっといろんな魔物と戦いたい。レアなアイテムだって探したいし、称号も集めたい。


でも、僕には行けない理由がある。

ヨツバがいるからだ。


僕は酷いことを考えてしまっている。ヨツバのことはニーナに任せて僕は旅をしてしまいたいと。


でも実際のところは、他の街に移動するならヨツバも一緒に行く事になるだろう。もしかしたらニーナもである。なんだかんだで僕は非情になりきれないのだ。

ここで非情になれるなら、元々ギルドで見捨てていた。


問題は、他の街に行く移動中などでは、夜も一緒にいることがあるということだ。

そしたら、僕は地球に帰れなくなる。


それなら、一緒にいる時は帰るのを我慢しようかと考えた。

でも、そしたら家にいる両親に怪しまれるだろう。

いくら、部屋に引きこもってゲームをしているとしても、何日もいなければ気づかれる可能性は高い。


僕は部屋から一歩も出れない引きこもりではないのだ。ゲームのために部屋にいることが多かっただけで、普通に部屋から出るし、用事があれば家からも出る。


ご飯がいつまでも部屋の前に残っていれば部屋を開けるだろう。母さんはゲームに集中している僕に気を使って部屋の前にご飯を置いてくれるのだ。部屋に鍵が掛かっているわけではない。そもそも、鍵が付いていない。


今でも部屋を開けられたら僕はいないのだ。どちらにしても、両親には早く打ち明けないといけない。


打ち明けた場合、僕になんて言うのだろうか?

行くなと言われるのだろうか?それとも説明すれば背中を押してくれるのだろうか?

どちらにしても、この世界に行く事を快く承諾してくれるとは思えない。


それなら、ヨツバに打ち明けるか?

ヨツバに僕は地球に帰れるから、ちょくちょく目の前から居なくなるよと。

それか、スキルで野宿でも快適って言ってあるから地球とは言わなくても他の空間にいる事にするか?


僕だけ地球に帰れると知ったら、ヨツバはどう思うのだろうか……。

ヨツバの家族に生きていると伝えてほしいと言われるかもしれない。

そしたら、世間にもバレるかもしれない。それは困る。


あー、考えがまとまらない。


「さっきから難しい顔してどうしたのよ?考え事?」

ヨツバに聞かれる


「あ、うん。ちょっとね」


「弱い魔物以外もいるかもしれないんだから気をつけてね」

僕達は今、森でウルフを探している。

ヨツバの言う通り、深く考え事をしている場合ではなかった


「ごめん、集中するよ」


僕はそう言いながらも、考え事をしながら日課となりつつあるウルフを探して倒す。


ある程度倒せたところで切り上げて、ギルドで報酬をもらい3人で分ける。


ドロップした肉は僕のアイテムボックスに入っているけど、これは3人の共有物だ。僕はウルフを倒した初日以外は2人とは別に食事をしていた。

肉はその日使う分だけを渡す。


僕はここ最近、ずっとこれからの事を考えていた。


このままではいけないと……そして僕は2人に今まで隠していた事を打ち明けることを決意する

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る