第8話 side 委員長

気づくと私は知らない土地にいた。


目の前には川が流れている。近くには……誰もいないみたい。

川の向こうには街が見える。

街の近くに転移するって言ってたから、多分あの街のことなんだろう


街まではゆっくり歩いても3時間もかからないかな……

それなら街に入る前に色々と確認した方がいいよね


着ている服は制服だ。

他に持っているのは……ハンカチと携帯、あとは見たことない銀色の硬貨が1枚


携帯は電源が点かず使えない。


見たことのない硬貨はお金をくれるって言ってたからこれのことね。

どのくらいの価値があるのかしら?


スキルもくれるって言ってたわね。

どうやって確認するのかと思っていたら目の前に板が出てきた


レベル1

スキル

[異世界言語][統率]


レベルは1らしい。よくわからないけど強くはないのだろう。


統率っていうのがランダムでくれるって言ってたスキルだよね。

私は[統率]を触ってみる


[統率]

指揮下にいる対象の能力を上昇させる


良いスキルなのか悪いスキルなのかはわからないけど、誰かと一緒にいないと意味がないかもしれない。

試しに使おうとしてみたけど発動しない。

発動しない理由が、使い方が違うのか、それとも対象に自分は含まれていないということなのかわからない。


とりあえずここにいても分かる事は無さそうなので、街を目指して歩く事にする。


街に向かって歩いている最中にプニプニしている生き物を見つけた。

クラスの友達が学校で話していた漫画のことを考えるとスライムというやつだろうか。

ぱっと見た感じかわいいけど、何があるかわからないので無視して進む事にする。


これからどうするか考えながら2時間程歩き、街に着いた


「時計がないから正確にはわからないけど、思ったより早く着いたんじゃないかしら」


私は街の中に入る


考えていた通り宿屋を探す。まずはこの銀色の硬貨で何泊出来るのか調べないといけない。

食べ物の方が大事だから、場合によっては野宿も考えないとダメだ。


私は宿屋を探しながら街の中を歩く。

周りから視線を感じる。理由はすぐにわかった。

制服姿が珍しいのだろう。


ジロジロと見られるのは気になるけど、今はそんな事を気にしている程余裕はない。


私は見つけた宿屋で一泊の料金を聞く


「これで何泊出来ますか?」

この硬貨の価値がわからないので見せて確認する


「素泊まりでいいなら2泊だね。朝か夜1食付けるなら1泊かな」

食事は必要なので1泊しか出来ない。

予算が少なすぎると思う。他のみんなは大丈夫だろうか?


「わかりました。素泊まりだと1泊いくらですか?」


「銅貨5枚だよ。追加で夜なら銅貨1枚、朝なら銭貨5枚貰えれば食事も付けれるから」


「ありがとうございます。また来ます」

私は宿屋を出る。

キリがいいところで考えるなら、銅貨10枚で銀貨1枚だと思う。銭貨はよくわからないけど、同じと考えれば10枚で銅貨1枚かな。


私は次に服屋に入る。

置いてある服の価格を確認する。

古着と思われる、ほつれが見られる服で銭貨3枚だった。

新品と思われる服は安くて銅貨1枚した。


私が服屋に来たのには理由がある。

制服姿が目立つというのもあるけど、お金が思ったよりも少なかったからだ。

このままでは野宿まっしぐらである


私は店主に今来ている制服を買い取ってくれないか持ちかける。

古着も置いてあるので、買取自体はしてくれるだろう


「うーん、生地は良さそうだけど古着だし銅貨3枚なら買い取るよ」

店主は答える。


「わかりました。他の店にも聞いてきます。あとこの服を買います」


私は一度断る。買取額が妥当なのかはわからないけど、銅貨3枚増えてもあまり足しにはならないだろう


私は上下1着分だけ安い服を買って、着替えさせてもらってから店を出る。本当は我慢すべきなのかもしれないけど、古着ではなく新品の服を買った。上下で銅貨2枚である。


私はまた違う服屋を探す。

探す服屋は高級店である。さっきの店に置いてあった服はこの制服に比べて生地がだいぶ良くなかった。

というよりも、周りの人が来ている服を見てもあまりいい生地を使っているようには見えない。


生地の良さを評価してくれる店に持っていけば高く買い取ってくれるかもしれない。


高そうな仕立て屋があったので私は入る


「すみません、この服を買い取ってもらうことは出来ませんか?」


私は店の中にいた男性に確認する


「あー、うちは買取やってないんだよ。受注専門なんだ」

男性は頭をポリポリと掻きながら答える


「そうですか…わかりました」

私は店を出ようとする


「お嬢さん、少し待ってくれ」

店の中にいた別の男性に止められた


「なんでしょうか?」


「うちのせがれがすまなかった。その服を少し見せてくれますか?」

男性は先程の店員の父親のようだ。多分店主だろう。


「でも、買取やってないんですよね?」


「普段はやっていないが、良いものなら別だ。やっぱり…この服はなんの生地かわからないがいい肌触りをしている。買い取らせて欲しい」

店主は制服を触って確認して、買取を希望してきた


「いくらで買い取ってくれますか?」


「そうだな……銀貨3枚でどうだ?」

さっきの店の10倍か……。あの店で売らなかったのは正解だった。でも今は金欠だ。少しでも高く買い取って欲しい


私は首を横に振る


「そうか……銀貨5枚でどうだ?これで無理なら他を当たってくれ」


「それでお願いします」

私は銀貨5枚で制服を売った。高く売れたのかどうかはわからないけど、とりあえず宿10泊分は確保出来た。


私はついでに靴も買い取ってくれないか確認する。

買い取ってくれるなら他の店で安い靴を買って履き替えよう


「この今履いている靴も買い取ってくれませんか?」


「見せてくれ」

店主は靴をみる


「これは革か?なんの革かわからないがえらく軽いな」

多分本革ではなく、合成皮革だと思う。

合成皮革が何かはよく知らない。


「貰い物なので私はよく知りません」


「そうか、銀貨3枚でいいなら買い取ってもいい。良いものだっていうのはわかるんだが、なんの革かわからないと貴族相手には売りにくいからな。これ以上は無理だ」


「わかりました。お願いします。履き替える靴を買ってきますので、少ししたらまた来ます」


私は他の店で安い靴を買って、仕立て屋に戻って銀貨3枚で靴を売った。


だいぶお金が集まった。


後は食事を考えよう。宿で食べるのと、外で食べるのはどっちが安いのか調べたら、同じものを食べるなら宿の方が安そうだ。


私はヤバそうな宿屋を除き、1番安い宿を探して部屋を借りる。5泊以上連泊するならおまけしてくれると言うのでとりあえず5泊借りた。

1泊素泊まりで銅貨4枚だったけど、連泊分のおまけとして夕食が付くことになった。部屋はだいぶ狭いけど野宿よりはマシだし1人部屋だ。ちゃんと鍵も掛けれるので安心できる。


夕食で出されたのはパンとスープだった。

パンは石のように硬かったけど、味のしないお湯のようなスープを無くなるまで吸わせたらなんとか食べれた。


これからこの食事が続くと思うと憂鬱になる。


早くお金を安定して稼がないと……

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