第9話 side 桜井 春人
自称神に異世界に飛ばされた俺は人気の無い街道にいた。
あの神から話を聞いている時に最悪の事態も考えていたので、人気の無い街道に転移させられたことに少し安堵する。
街道の先には街が見えるのでとりあえず向かいながら今の状況を考える
アニメや漫画でよく異世界モノを見ていた俺は、異世界に行くと聞いてショックも受けはしたけど、同時に少しワクワクした。
しかし、賭けによって地球の神に売られたと聞いて最悪の事態を懸念した。
それはこちらの世界で奴隷のような扱いを受ける事だ。
転移先で変な集団に囲まれていて、隷属の首輪なんかをはめられるみたいなことになっていなくて良かった。
ポケットに見たことのない硬貨が入っていた。銀貨だ。
定番だとこの上に金貨があると思う。価値はわからないけど、そんなに多くはなさそうだ。
後はランダムでくれるって言ってたスキルを知りたいな。
そう思ったら目の前に板が出てきた。
レベル1
スキル
「異世界言語][マルチスペル]
魔法系と思われるスキルがあるのを見てテンションが上がる。
しかもマルチと付いているってことはいろんな魔法が使えるのだろう。
俺は詳細を見ようとマルチスペルをタップしてみる。すると詳細が表示された
[マルチスペル]
複数の魔法を同時に発動する
「…………。」
俺は困惑する。
魔法はスキル関係なしに使えるのだろうか?
そうでないと、今現在このスキルは意味をなさない。レベルが上がれば魔法を覚えるのか?それとも何か特殊な訓練が必要なのだろうか?
イメージで魔法を使おうとしてみるけど、何も起こらなかった。街に行ったら誰か親切そうな人に聞いてみよう
魔法を使おうと試しながら歩いていると街に着いた。
異世界って言ったら冒険者だよな。レベルもあるみたいだし、金を貯めつつ魔物を倒してレベルを上げないとな。
俺は歩いている人に場所を聞いて冒険者ギルドに向かう
冒険者ギルドに入り、受付に並んで登録をする。
銅貨5枚と言われて銀貨を渡したら銅貨5枚が返ってきた。
銅貨10枚で銀貨1枚のようだ。
必要事項を書いていく
スキルの欄にはマルチスペルだけ書いておいた。
流石に異世界言語はマズイだろう
俺は受付の男性に魔法について聞く事にする。
「お尋ねしたいんですが、魔法ってどうやったら使えるんですか?辺境の村から出てきたのでわからないことが多くて……」
何が常識なのかがわからないので、村から出てきた世間知らずを騙ることにする。
「おかしな格好していると思ったが、村出身か。魔法はスキルを覚えていれば念じるだけで使えるな。実力によって出来る事は限られてくるがな」
俺の格好はおかしいらしい。後で目立たない服を買う必要があるな。
魔法はやっぱりスキルを覚えていないとダメなのか……
「魔法のスキルはどうやったら獲得出来ますか?」
「色々だな。レベルが上がった時に獲得する時もあれば、魔法について学ぶ事で習得することも出来る。読むだけでスキルを覚える事が出来るスキル書なんて物もあるが、希少すぎて手に入らないだろう」
とりあえずまずはレベルを上げるしかなさそうだ。
「ありがとうございます。自分でも達成出来そうな依頼はありますか?」
「そうだな……珍しいスキルを持ってるようだが、魔法は使えないのか?」
「使えません」
「それはもったいないな。装備は?」
「持ってません」
正直に答えるしかない
「金はあるか?」
「残り銅貨5枚だけです」
「泊まるところはあるのか?」
「まだ探してません」
「銅貨5枚だと宿屋に泊まれても1泊だ。今日野宿する覚悟があるなら、安い剣か槍を買ってスライム討伐だな。宿屋に泊まるなら薬草採取くらいしか無理だ。素手ではスライムも倒すのは厳しいだろう。まあ、薬草採取しても報酬は少ないからどっちみち明日には野宿になるだろうがな。そういう事で俺のオススメはスライム討伐だ」
この男性の言う通りだ。別で金を稼がなければどちらにせよ野宿は確定している。
それならば手持ちで武器を買った方が未来がある
「スライム討伐でお願いします。武器はどこで買えばいいですか?」
「スライム討伐だな。10匹倒したら銅貨1枚報酬でもらえるから頑張れよ。武器屋はギルドを出て右に10分くらい歩いた所にあるぞ。そこなら中古の武器も扱っているから銅貨5枚でも買えるだろう」
「わかりました。ありがとうございます」
「おう。それと野宿するならこのギルドの裏の路地を使え。あんたみたいなのが何人かいるから他の所で寝るよりは安全だ」
金欠冒険者の溜まり場になっているようだ。
外ではあるけれど、寝る場所が決まって安心する
俺は教えてもらった武器屋に入る
「すみません、冒険者ギルドで安い武器も扱っているって教えてもらってきたんですが…」
「新人かい?安い装備ならそこの樽に入ってるやつだね」
店員の男性に教えてもらう
「はい、さっき登録しました。見させてもらいます」
俺は樽の中の武器を見る
服と食事も買うことを考えると銅貨4枚以下で買いたいので、安い武器の中でも古い剣を探す。見つけた剣の値札を見ると銅貨3枚だった。
「これをください」
俺は古い剣を買う事にする
「毎度あり。随分と古い剣を選んだけど、何の依頼を受けるんだい?」
男性に聞かれる
「スライムです」
「それなら大丈夫だね。この剣は長くは保たないと思うから、早めに買い替えてね」
ダメになる前になんとか魔法を覚えたいな
「わかりました。ありがとうございます」
その後、銅貨2枚で上下1枚ずつ服を買って着替える。
着ていた制服は買い取ってもらえた。最初銅貨5枚と言われたけど、交渉した結果銅貨5枚は変わらないけどさっき買った服を無料にしてもらいさらに上下1着ずつ着替えを付けてもらった。全部買ったと思えば銅貨9枚するのでまあいい所だと思う。
俺はスライムを倒しに街の外に行く。
討伐の報酬も大事だけど、レベルを上げて早く魔法を覚えたい。さすがにあのスキルを与えといて、魔法は覚えないなんて事はないと信じたい。
やってみてわかったが、スライムは倒すことよりも見つける方が大変だった。
さっき安い食事を見たけど銭貨2枚と書いてあった。
多分銭貨10枚で銅貨1枚だろう。
スライムを10体倒せば銅貨1枚だから、1日1食なら5日は生活が出来る。食事以外にお金を使わない場合に限るけど……
買った剣ではスライムを斬るというよりも、叩きつけるって感じしか出来なかった。
でも倒す事は出来たので良しとしよう
今日は4体倒したけど、レベルは上がらなかった。
安い食事は美味しくは無かったけど今は我慢の時だ。
明日は今日よりも時間があるので残りの6体は倒せるだろう。
俺は新人と思われる冒険者に混じって路地で寝ることにした
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