第5話 真実を知る

ギルドの前で待っていると、ニーナがやってきた。


「お待たせ」


「おはよう。いきなりで悪いんだけどニーナにお願いがあるんだ」


「なに?昨日の女の人のこと?」

まあ、そこしかないよね?


「うん。そうなんだけどね。彼女も一緒に依頼受けてもいいかな?報酬は僕の分から彼女に渡すから」


「訳ありなの?」

ニーナは怪訝な顔をする。

厄介ごとには巻き込まれたくないのは当然だろう


「そういうわけじゃないよ。同郷の子なんだけど、困ってるみたいだから、放っておけないだけだよ」


「ならいいよ。それと報酬は3等分でいいよ」


「ありがとう。明日も依頼受けるよね?」


「私はそのつもりだよ」


「それじゃあ、明日から3等分で頼むよ。今日は半分もらって」


「…うん、わかった」


「鐘が鳴る前には来るように言ったから、多分もうすぐくるはずだからお願いね。」


「うん」


少ししてヨツバがやってきた。

顔色が優れないけど、寝不足かな?


「ごめん、お待たせ」


「私も来たばかりなので大丈夫ですよ。はじめまして、ニーナです」


「ヨツバです。はじめましてニーナさん」


「ニーナでいいですよ。遠慮しないで下さいね」


とりあえず、挨拶も終えたのでスライムと薬草を探しに行く


「ヨツバ、これ使って。何も無いよりはマシでしょ?」


僕はヨツバに果物ナイフを渡す。


果物ナイフは武器として認識したら持ち込む事が出来た。


「ありがとう、く、クオン」

早く慣れて欲しいものだ


「どうしてそんなに小慣れてるの?普通、異性の同級生の名前を呼び捨てするなんて緊張したりするものじゃないの?しかもずっと会ってなかったのに」

どうしてだろうか…自分でも不思議だ。

僕は考えた結果、結論を出す。


この世界をゲームみたいに認識しているからだ。

立花さんとしてではなく、ヨツバというネームのプレイヤーとして認識していたのかもしれない。


……そんなこと言ったら気分悪いよなぁ


「……自分でも不思議だけど、そんなこと気にしてる場合じゃないと思ってかな?」

苦しい言い訳をしてみる


「……そうだよね。変なこと言ってごめん。私も早く慣れるようにする」

なんとか誤魔化せたようだ


街の外に出ながら今日の予定をヨツバに説明する


「今日受けている依頼はスライム20匹討伐と薬草20本採取の2つだよ。どっちも探すのが大変だから見つけたらまずは報告ね」


「わかったわ」


「初めは僕とニーナで戦うからどんな感じか見てて。戦えそうなら、その後はヨツバも戦闘に加わろうか」


「ありがとう」


僕達は薬草を探しながらスライムも探す。


ギルドで薬草のサンプルを借りてきているけど、雑草と薬草の区別がつきにくい。


どうしようか悩んでいたけど、良い方法を思いついた。


僕はそれらしき草があったらストレージに入れる


アイテム欄を開く

[薬草]


よし、これは薬草だ。


もう一本ストレージに入れる


[雑草]

違うな。僕は取り出して捨てる


僕は何度か繰り返す

仕組みはわからないけど、薬草と毒草以外はどれも雑草と表示された。

毒草はもしかしたら買い取ってくれるかもしれないので捨てないことにする


「クオンくんは見つけるのがうまいね。私、薬草探すの苦手なんだよね」

ニーナに褒められるが、ズルをしている気がして素直に喜べない。


薬草を探しつつ歩いているとスライムを発見する


「ヨツバはそこで見てて」

僕とニーナでスライムを倒す。戦いを見せる為に僕は木刀だ。


「どう?戦えそう?」


「多分、大丈夫」


「じゃあ、次は任せるよ。危なそうなら助けに入るから安心してね」


「が、がんばる」


相手はスライムだし大丈夫だろう。


少しして2匹目のスライムを発見する


「じゃあ、ここで見てるから頑張って!」


「危なくなったらすぐに助けてね」

ヨツバが不安そうに見てくる


「ちゃんと見てるから頑張って」


ヨツバがスライムに向かっていく


ヨツバはスライムを少し苦戦しながらも倒せた。

問題なさそうだね。次からは3人ががりで戦うわけだし。


「問題なく戦えそうだね」

僕はニーナに言う


「そうですね、心配はいらなそうです」

ニーナも同じ意見のようだ


あれ?スライムが消えないな……


僕はヨツバが倒したスライムがそのまま残っている事を不思議に思う


「ヨツバ、そのスライムだけど何かした?消えずに残ってるんだけど……」


「え?普通は消えるの?初めて倒したからわからないよ」


「……ちょっと、そのスライムに触ってみて。回収するイメージで」


「うん?わかった」

ヨツバはよくわからないままスライムに触る

スライムはプルンっと揺れるだけで何も変化しない


僕は嫌な予感がした。


「ヨツバ、ステータスってわかる?」


「わかるよ。念じたら変な透明な板が目の前に出てきたから。私も漫画でこういうの見たことあるし」

ステータス画面はあるのか…


「ちょっと出してもらっていい?」


「わかった」


「今出てるの?」


「もしかして見えないの?」


「見えないね」


僕もステータスを開く

「僕も開いたけど見えてないの?」


「見えないわ」

ステータス画面は他の人には見えないらしい


「ステータスって何が見える?」


「なんでそんなこと聞くの?レベルとスキルしか見えないよ。今はレベル1でスキルは異世界言語だけ。」


悪い予感は的中したようだ。


「……ログアウトってある?」


「そんなのないわよ。レベルとスキルの詳細がわかるだけだよ」

日本に帰れるのは僕だけのようだ


「…………。昨日と一昨日ってどこで寝たの?」


「…一昨日は宿屋に泊まったわ。昨日は街の外に…路地とかの方がなんだか怖かったし。」


顔色が悪かった理由がわかった。寝れてないのだろう…


「……なんかごめんね」


「斉藤くんが……クオンが悪いわけじゃないよ。」


昨日すぐに気づいていれば野宿させなくてもよかったかもしれない。多少なりとも僕の責任だ


「元気出して…少しだけど報酬もらえるから」


「うん、ありがとう」


「ちなみに宿屋って一泊いくらだった?」


「銅貨5枚……」


「今の手持ちは?」


「銅貨3枚無いくらい」


今日の分はギリギリかな?いや、ご飯とかも食べないといけないし足りないな


「頑張ろうか……」


とりあえず今は、僕のことは秘密にしておこう。

自分だけ日本に帰れるとか流石に言いにくいから……

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