第4話 気まずい再会
「斉藤くん」
「ん?誰?」
僕は声がした方を向く
「斉藤くんだよね?」
そこには、同級生の立花さんがいた。
「クオンくん、知り合い?」
「クオン?斉藤くんだよね?斉藤 悠人くん」
恥ずかしい。なにこれ…
「…………。僕はクオンです。人違いではないですか?」
「クオンくん、すごい汗だよ。大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。れ、列が進んだよ」
僕は立花さんを知らないフリをする。
だってしょうがないじゃん。厨二みたいな名前で冒険者やってるんだよ。恥ずかしいじゃん。
「待ってよ、斉藤くんだよね?なんで知らないフリするの?やっと知り合いを見つけたのに……」
ヤバい、立花さんが泣きそうだ
「ニーナ、悪いけど依頼受けといてもらえないかな?ちょっとこの人と話をしてくるよ」
「う、うん。明日はやめとく?」
ニーナに気を使われる
「大丈夫だよ、任せてごめんね」
「なんか気まずそうだし、依頼受けたら私は帰るね。じゃあ、明日の朝にギルドで待ってるから」
「ありがとう」
僕はニーナに任せて列から離れる
「あ、あの、立花さん。さっきはごめんなさい」
僕はとりあえず謝ることにした
「……。やっぱり斉藤くんだよね?」
「はい」
「なんでさっき無視したの?」
すごい怒ってる。
「いやぁ、なんといいますか……。こっちの世界ではクオンって名乗ってまして…………恥ずかしかったんです、ごめんなさい!」
僕は正直に言う。なんでかって、立花さんが怖いからです
「……いいわ、許してあげる。今はそれどころじゃないし。斉藤くんは冒険者になったの?」
「そうだよ。とりあえずお金を稼ぐなら冒険者かなって思って。魔物倒せば強くなれるしね」
「やっぱり魔物と戦わないといけないのかな?」
「別に倒さないといけないことはないと思うけど、魔物倒してレベル上げないと色々と厳しいんじゃないかな?生産職になるにしても、ある程度のレベルは必要だと思うし」
なんのパラメータを上げるかによる。
生産職になりたいならDEXを上げて器用になる必要があるだろうし、冒険者になるなら、剣士ならSTR、魔法使いならINTを上げるべきだ。色々上げて器用貧乏になっても、生活する分には困らないだろう。
「そうだよね。私はまだレベル1だし。スキルも最初は良いと思ったんだけど、いつの間にか無くなってるし」
スキルが消えるなんてことあるのかな?
「なんてスキル?」
「幸運ってスキル。一度だけ幸運が訪れるんだって。斉藤くんを見つけたら消えてたよ。」
僕を見つけるのに一度しか使えない幸運を使ってしまったのか…。
見つけたのが僕じゃなかったら良かったのかな?
「なんかごめんね」
謝らないといけない気がした
「斉藤くんは悪くないよ。見つけなかったら今も1人なんだし……」
「……立花さんも一緒に冒険者やる?」
ニーナには明日、ちゃんと説明しよう。わかってくれるはずだ。多分……
「私も冒険者になろうと思ってここに来たんだけど、お金が足りなかったの」
「えっと、今いくら持ってるの?」
「銅貨3枚くらい」
「……足りないね」
「うん」
「……貸そうか?あんまり持ってはないけど。」
「いいの?ほんとに?」
「うん、銅貨5枚ね。これで登録できるから」
僕は立花さんに銅貨を5枚渡す。
僕の所持金は16Gになってしまった。
まあ、明日少しは増える予定だからいいか
「一緒に行くから、登録しようか」
僕は立花さんを連れて受付に並ぶ。登録用の受付は依頼の受注、達成報告用と違って空いていた。
「あら、えっと昨日の……そう、クオンさん。今日はどうしたんですか?」
受付の人にギリギリ覚えられていた
「この人の登録をお願いします」
「かしこまりました」
立花さんの登録をする
「立花さん、この世界の人は、名字とかは無いのが普通みたいだから名前だけで登録した方がいいよ」
僕は立花さんに耳打ちする
立花さんは頷いて名前で登録する。
「はい、ヨツバさんですね」
立花もといヨツバさんが冒険者について説明を受けて冒険者になる。
「それじゃあ、明日の朝の鐘がなる前までに冒険者ギルドに集合ね。さっき一緒にいた女の子と依頼を受けるから。女の子はニーナね。僕が一緒に連れて行っていいかお願いするからね」
「うん。ありがとう。斉藤くんはすごいね。急に異世界に来たのにちゃんとお金を稼いでるし、あんなにかわいい彼女をもう作って……」
ヨツバは勘違いしているようだ
「ニーナは彼女じゃないからね。さっき説明聞いたでしょ?GランクはGランクの依頼しか受けられないの。だから協力してランクを上げようとしてるだけだよ」
「ふーん、そうなんだ」
まだ疑っているようだ
「それと、僕も立花さんの事をこれからヨツバって呼ぶから僕のことはクオンって呼んでね。この世界で僕はクオンで通すつもりだから」
「……わかったわ。クオン……ぷふっ」
ひどい、笑われた
「早く慣れてね」
「努力しゅる」
ダメだ、ニヤけてる
「それじゃあ、また明日ね。遅れたら置いていくから」
「斉と…クオンはどこに泊まってるの?やっぱり外?」
「今は外だよ。お金に余裕が出来たら宿にも泊まってみたいけど…」
「そうだよね…。また明日」
なんだか様子がおかしいけど、魔物との戦闘に緊張しているだけかな……
僕はヨツバと別れる
僕はギルドから少し離れた人気のない路地裏に移動してログアウトする。
「あーお腹すいた」
部屋のドアを開けたら、ご飯が置いてあった。
いつも通りだ。
ゲームに夢中で呼んでも部屋から出てこないので、部屋の外にご飯を置いておいてくれる。
僕は部屋に料理を運んで食べる。
「ごちそうさまでした」
僕は台所に食器を持っていく
「悠人、ご飯やっと食べたの?冷めちゃうからゲームも程々にするのよ」
「うん、気をつけるよ」
今はゲームはやってない。異世界に行っている。
でもそんなこと言ったら心配されて、止められるので言わない。
いつかはバレるだろうけど、その時の僕に任せよう
「お風呂に入ったら寝るよ。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
朝早く起きた僕は、異世界に行く為に、武器を持ってログインする。
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