38 遂に
2021年元日。気温10度。雲一つない快晴。天も僕たちの戦いを見届けようというのか。
遂にこの日が来た。やっとここまで来た。そんな思いが胸に込み上げる。今夏、五輪で盛り上がった東京新国立競技場。対戦相手さいサファの人気もあるが、同時に全く無名のキュー武というチームがここまで勝ち上がって来た、史上初の快挙をひと目見ようと、超満員の観衆が詰め寄せた。知り合いから「何とかチケットを入手できないか?」と聞かれたが、そんな伝手はない。父の
今日の試合に向けて万全の準備をしてきた。決勝がさいサファに決まってからは特に、りんねと連日毎晩対策会議を行った。さいサファの事なら強みも弱みも全て把握している。多分、僕とりんね以上に詳しい人はいないだろう。さいサファの監督や選手以上に、僕たち2人はさいサファを知り尽くしていると言っても過言ではない。それが結果に繋がるのかどうかは分からない。最善を尽くすだけだ。そんな僕たちが考えに考え抜いて選んだスタメンは以下の通り。フォーメーションは2トップが大きく開いた5-3-2。
玲人 與範
神子
葉鳥 伊良部
凡平 佐藤
蔵島 医師 田所
野心
サブ:FW 古賀 真壁 MF 市原 海老沢 DF 上野 GK 中条
マネージャー:りんね
※野元は累積警告でベンチ外
対するさいサファのスタメンは以下の通り。フォーメーションは3-6-1。可変システムで、試合中に4-3-3または2-3-5 (2バック5トップ)に変わる。
レオ
木真里 キート 木々岐鬼
サブ:FW ニキュパ ィノス MF ヒデ
監督:ミシャイル・ミリヤ (ミシャミシャ)
本気のフルメンバー。ワントップを務めるレオシルドンは身長180センチ。そこまでの高さはないが、ブラジル人らしく巧みな足技が特長で、高いシュート技術に裏付けられた決定力と周りを活かすプレーが持ち味のチーム得点王。
その下に位置する1・5列目の2人は、ともに今シーズン2ケタ得点を達成した危険なシャドーストライカーであり、チャンスメイカーでもある。右に位置する溝呂池は、9年連続2ケタ得点という金字塔を打ち立てた。レオ同様に周りを活かすプレーも上手い。左の武藤
これに加えて、左右のウイングに位置するユース上がりの原田、関野の2人までペナルティエリア内に侵入してくるのだから手に負えない。
これら攻撃陣を操るのがボランチに入る2人、黒木と麻生。黒木は豊富な運動量と、ハードワークが持ち味のチームの司令塔で、高精度な左足のキックを併せ持つ。一方の麻生はスピード、運動量こそないものの、1対1の守備や空中戦に強く、味方の攻撃時には最終ラインに下がってDFの中央を守る。右足のキックは威力も精度も高く、一発でサイドや裏の危険なスペースを突く。特筆すべきはベテランらしい見事なゲームコントロールで、左右をバランスよく使い、決して攻撃を偏らせない。味方なら頼もしいが、対戦する側としては嫌な相手。
守備の3人は全員1対1の強さに定評があるが、特に中央に入るドイツ代表のキート・ブッフォオ―は188センチの長身で鉄壁を誇る。攻撃者の体ごと刈り取る深いタックルは激しいがフェア。制空権も譲らない。
左右のストッパー木真里
そして最後尾に位置する東山。身長183センチ、GKとしては小柄でハイボールにはやや不安があるものの、それを補って余りある抜群の反射神経でゴールを守る。決定的なピンチを何度も救ってきたチームの守護神。この牙城を崩すのは容易ではない。また左足のキック精度は日本中、いや世界を探してもそうそういないレベルで、直接フリーキックを決める事も出来るほどだ。同じ左足のキッカー黒木がいるのでFKを蹴る機会はないが、ロングキック一発でチャンスを生み出す。守備だけではなく攻撃面でも警戒しなければいけない。
以上、僕とりんねの分析結果、その一部である。
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